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第26話 ソウルブレイカー
しおりを挟む佐座目達目の前、部屋の奥で鎮座していたその兵器は立ち上がる。
巨大な機械だ。
人型を保っているものの、関節は太く全体的にずんぐりとした体形。
分厚い鋼鉄製の材質でできていて、場違いなその姿に、ロボットものの世界にでも飛び込んできたのかと思った。
両肩には、無数の穴に筒のようなものがいくつも収納されており、右手には棘のついた巨大な鉄球が鎖に重そうにつながれてて床にころがしてあった。モーニングスターだ。
何てそんなことを考えていると、横に立つ美玲と理沙が声をあげた。
「開発者は男だと資料にあったが、私には分かりかねる感性だな」
「ほんと男って、こういうの好きよね」
生憎僕にもよく分かりません。
「気を付けろよ、鉄球はただ見かけ通りだが、肩にある筒状の物体は独自に飛行して全方位から我々を攻撃してくるぞ」
ソウルブレイカーは駆動音を立てながら、まずモーニーングスターを振るおうとする。
「来るぞ! 散開!」
相手を取り囲むように仲間たちが散らばっていき、一号棟九層の戦いの幕は開いた。
モーニングスターを避けながら、佐座目はミスティックセブンとカトレアファイブの銃弾を敵へと叩き込む。
だが見かけ通り頑丈のようであまり聞いてはいない様だった。
そうしている間に肩から無数の筒が射出される。
「……っ」
唯一足元を除いた、全方位からの攻撃にてこずらされる、だが。
「うん? それだけかい?機械ごときにいい気になられては困るね」
アルシェが、異能を使って、空中に動く筒に干渉する。
彼の力は一度にいくつもの空間を操るものだ。
あまり質量の大きいものの含まれる空間は対象にはできないが。
以前の彼の力は、遠く離れた場所と空間をつなぐゲートという力だったが、今は変異してこの力になっている。
能力はいつまでも絶対に同じ効果を保てるものではない。
それは佐座目の世界でも、把握されていた事だ。
異能変異は非常に稀で、めったに起きない現象なのだが、この世界では多くの者の身に起きている事だ。
浮遊していた筒達がアルシェの能力……空間干渉《ワープムーブ》によって、離れた所に移動、エージェント達を狙って放たれた光線がずれて発射される。
美玲や理沙が、その恩恵に声を上げる。
「助かった、その調子で頼む」
「あんなにたくさん。相変わらず器用ね」
アルシェの異能には範囲があって、それは移動させられるのがざっと一メートル以内、という事だった。
建物の外に追い出すには、どうしてもしばらくの時間がかかってしまう。
その間もできる限り、佐座目は二丁の銃で筒のレンズを破壊し無力化していく。
そして、うるさい蠅(というにはいささか凶悪過ぎるし、大きすぎるが)だけに、注意を払っているわけにもいかない。
近づいてきたソウルブレイカーがモーニングスターを振るう。
「……っと」
轟、と頭の横を遂げ突きの鉄球が通り過ぎていく。
直撃したら間違いなく死ねる威力だろう。
だが、その攻撃はそれほど厄介ではない。
日ごろナイトメアに手こずらされているエージェント達に、とって純粋なただの力の脅威ほど相手しやすいものはないのだ。
フロアに来てから二分が経った。
淡々と攻撃を捌いていって、残り時間が14分になった頃、全ての筒が屋外へと追い出された。
それを判断したのか分からないがソウルブレイカーはこれまでの行動パターンを変化させ、モーニングスターを振るう予備動作に入り腕にスパークを発生させ始めた。それは佐座目達にとっては、作戦の根本を揺るがすほどの脅威だった。
あれはただの電撃ではない。
エージェントの力を封じるスキルキャンセラー、異能封印、なのだ。
そこで美玲が叫び声をあげ、前に出た。
「援護しろ!」
「はい!」
佐座目はありったけの銃弾を撃ち込み、装甲にようやくわずかな切れ目を生じさせる。
これでは足りない。
そこに別のエージェントがナイフを飛ばして、差し込んだ。
あれは、支部の建物の前で話をした男性だ。
美玲がこれまで温存してきた異能を行使する。
「雷の扱いなら私の方が上だっ。天地雷撃!」
文字通り、激しいスパークを起こしながら雷撃がそうるブレイカーの破損部分、避雷針となったナイフに直撃した。
流れ込んだ雷撃によってソウルブレイカーは動きを止める。
「何とか、奥の手を切らせずに済んだか……」
この時点で残り時間は約十三分。
まだ余裕がある、はずだった。
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