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第1話 断罪の前に
しおりを挟む私は、悪役だ。
物語の中で、忌み嫌われる存在。
主人公達の足をひっぱり、嫌がらせをしたあげく、むごたらしい罰を受けて退場する。
そんな悪役だ。
悪役である私は、断罪シーンの直前に、前世の記憶を思い出した。
私の魂は、どうやら科学文明が発達した世界から、そこから少し文明の歩みが遅い世界へと、転生したらしい。
乙女ゲームの世界へ。
そこは、主人公の恋が実る世界だった。
そんな世界に転生した私は、二つの人生の記憶が混ざり合った事で、自分の今の人生を客観的にみられるようになった。
私は悪役。
とてもひどい人間だった。
そんなひどい私はもうじき断罪される。
けれど、誰だって唐突に悪になったわけではない。
(世の中もしかしたら、探せばそんな人間がいるかもしれないが)
少なくとも理由なく悪になった人間は、この私はまだ見た事が無い。
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