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〇04 光を運ぶ少女

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 私は、自分の手に持っている火を見つめた。

 火は確かに燃えている。

 煌々と輝き、温もりをはらみながら、燃え続けている。

 私は故郷の為に、この火をまもらなければならない。

 この光の国やら暗闇の国まで。

 風が吹いた。

 私は火が消えないように、手が焼ける事もかまわず包み込んだ。

 雨が降った。

 私は、自分の体が焼ける事もいとわずに、火を抱えてこんだ。

 でも、いつまでこんな事を続ければいいのだろう。




 川を渡る時は水にぬれないように手を高くして。

 山を登る時は、片手で落とさないように火を掴みながら。

 そうして、ずっと歩き続けてきた。
 だから。
 もう疲れてしまった。

 いい加減諦めて、休んでしまいたい。
 でも、きっとそれはできない。

 ここで立ち止まってしまったら。
 絶体に後で、後悔してしまうんだろうから。

 この世界にやってきた意味がない。

 託された願いがある。
 受け継いだ想いを、次へつなげなければならない。

 私は歩き続けた。




 故郷は深い闇に閉ざされている。

 ずっと昔に暗黒神の怒りに触れてしまったから、その怒りが解けるまで、光のない世界でいなければならなかった。

 他の神々は我関せず。

 一番強い暗黒真に逆らう事はできないから、私達を助けてくれない。

 最初はそれでも私達は何とか生きていた。

 けれど、人は闇の中でずっとは生きられない。

 人々は次第に心を病んでいった。

 だから私は、光を灯したいと思い、光の国を目指して故郷を出たのだ。

 きっと暗闇の世界は、今も光を待ち望んでいる。

 私は火を掲げて、歩き続けた。

 この手にしている日は、光の国に灯る太陽の火を分けてもらったもの。

 強くて長持ちするけれど、無限に続くものではない。

 早く暗闇の空へ解放してやらなければ、消えてしまうだろう。

 私は急いで歩き続けた。




 気が遠くなるくらい歩き続けた私は、ようやく故郷へたどり着いた。

 焼けてボロボロになった手のひらから火を解放する。

 すると、天高くに昇ったその光が、ぱっと輝いて暗闇の世界を照らす。

 それは、新たな太陽になった。

 私はその最後を見届けて倒れた。

 風雨や険しい旅路で、何度も火を守ってきた私の体は限界だった。

 だから、命が尽きてしまったのだろう。

 私はそこで、朽ち、大地の一部となった。

 けれど、そんな私を哀れに思った神々達が、私の命を蘇らせた。

 暗闇の神に逆らい、人々に手を差し伸べてくれたのだ。

 神達は、光を得た世界が良く見えるようにと、私を空の神に任命したのだった。

 それからの私はずっと、空の神として長い間、光の下で生きる人々達を見守り続けていた。


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