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御手洗

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第1話

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浅倉優太あさくらゆうた 17歳。
たまたま2丁目のゲイバーに入っていく所を誰かに見られたらしく、ゲイだということが全校にバレてから1ヶ月。

っていうかそれ見つけた奴もゲイなんじゃね?なんて突っ込みはさておき、その時は俺の人生、少なくとも残りの高校生活は終わったななんて思っていたが、今地獄のような毎日を送っているかと聞かれると答えはノーだ。一部の所謂人気者と呼ばれるような奴等のくだらない揶揄いを除いては特にいじめなどもされていないし、周りの友達も変わらずに接してくれている。
…一人を除いては。よりにもよって一番理解を示して欲しかった幼馴染が所謂人気者の奴等の一部となってしまっている事は、地獄レベルには値しないが正直言って辛いのは事実だ。
確かに、高校に入ってからはあいつもとい瀬戸昭せとあきらはバスケ部の人気者、俺は廃部危機寸前のしがない写真部でまあ言ってしまえば学校内でのポジションというものが全く違うため、クラスは同じであれあいつと俺の中には学校内では話すことはしないという暗黙の了解があった。それでも家が隣同士なこともあって放課後には中学の頃までみたいにお互いの家に行き来したりすることもあっただけに、昭の反応にはショックと怒りでいっぱいだった。
今では放課後には一言も話さない状態で、学校ではホモだのキモいだなんだと揶揄される始末だ。まあ此方としても理解を示してくれないならそれまでであり、まだ怒りが収まらない俺も昭と話す気は一切なかった。

***

朝、いつも通り教室に入り最初の授業の教科書などを出していると、いつもとは違う騒ぎ声が周りの女子達から聞こえてきた。

「今日転校生来るらしいよ、しかも男子!」

「マジ!?イケメンだったらやばいんだけど」

そんなのは漫画の世界の中だけの話っしょなんて思いながら聞いていると、ホームルームが始まる時間になっても隣の席が埋まってない事に気付いた。いつも隣にいる黒川はどこにいるのだと辺りを見回すと、自分の斜め後ろに彼女の姿が見え、転校生が俺の新しい隣の席になるのだろうという事が分かった。少しの期待と大いなる不安で入り混じった気持ちのせいか、鼓動が早くなるのを感じた。

もし転校生がすっげーホモ嫌いなやつだったりしたらどうなんの?

そんな奴と残りの1ヶ月、次の席替えまで毎日隣の席になるという可能性を考えるだけでも胃がキリキリ痛むのを感じた。

悶々と考えていた思考は教室の扉がガラッと開く音に遮られ、前を向くと担任と男子生徒が一人入って来るのが見えた。

ってマジでイケメンじゃんか。

周りの女子達も同じことをヒソヒソと囁きあっているのが聞こえた。

「皆もう気づいてると思うが、今日からウチのクラスに新しい仲間が加わる事になった。じゃあ、自己紹介よろしく。」

二階堂司にかいどうつかさです。最近までずっとアメリカに居たんすけどこっちには親の仕事の都合で来ました。まあ、今日からよろしくお願いします。」

ツーブロックの黒髪にハーフと思われる端正な顔立ち、高い身長に服の上からでもわかるがっしりとした肩は正直タイプど真ん中だ。
ハーフで帰国子女な上に名前までなんか格好いいとか反則じゃね?

「二階堂の席はそこの空いてるところな。分からない事とかあったら隣の浅倉にでも聞いてくれ。」

いやいや、いくらタイプとは言えそんなクラス中の女子が羨む様な任務を勝手に押し付けられても…。

「浅倉の隣とか二階堂やばくね?狙われちゃうんじゃねーの?」

「二階堂気をつけろよー。あんま近くにいるとコイツのホモ移っちゃうかもよ。」

それにこういう事言ってくる奴等もいるわけで。もう1ヶ月も経つのに相変わらず懲りない奴等だな、と思ったのと同時に、二階堂もこいつ等と同じだったらどうしようと先程恐れていた不安がまた蘇った。けれど、俺のその不安は二階堂の衝撃的な一言によってあっという間に消え去った。

「俺そういうの気にしないっていうか俺もバイだし?なんなら狙われるの大歓迎かもな」

担任を含めた教室内の全員が驚きで固まっている中、特にそんな教室の様子を気にする素振りも見せず、俺の隣の空いてる席へと二階堂はやってきた。

「よろしく。」

「よ、よろしく。」

差し出された手を取り、近くで改めて顔を見ると目の色素が少し薄い事に気付き、その綺麗な色に吸い込まれそうになった。

「まだ教科書とか届いてないから見して貰っていい?」

これはこれから1ヶ月胃じゃなくて心臓がもたなそうだな、なんて思いながら二階堂と机をくっつけて教科書を真ん中に差し出した。
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