ホットココア・ラブ

御手洗

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12月23日(土)〈葵〉

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昨日は悶々と色々なことを考えてしまったせいで中々寝付けず、ピンポーンというなんとも気の抜けるインターホンの音によって目が覚めた時には既に昼の3時を過ぎていた。

なんか宅配でも頼んだっけ、と思いながら扉を開けると、そこには見慣れない私服姿の鬼嶋が立っていた。ウチの学校は私服もオーケーだが、鬼嶋は毎日制服を着て来ているので私服姿はなんだか新鮮だ。

「よっ。」

「…どしたの?」

平日の放課後にはよく鬼嶋はうちに遊びに来るが、休日にこうして約束もなしに来るのは初めてのことだったので、思わず尋ねずにはいられなかった。

「まあとりあえず中入れろや。つーかお前寝癖やばい」

「今起きたばっかだから」

中に鬼嶋を入れると、勝手知ったるとでもいったようにキッチンへとズカズカと入っていき律儀にも俺の分までお茶を注いで俺の部屋まで誘導した。

ていうかここ俺の家なんだけど。

なんて突っ込むのもなんだか面倒くさくて大人しく着いていった。

「で、本当に何しに来たの」

部屋に着いて俺も鬼嶋も床に座って落ち着いたところで尋ねる。

「んーまあ昨日からお前の様子おかしかったからなんかあったのかと思って。」

気づいていたのか。やっぱり鬼嶋は鋭いというか何だかんだ優しい奴だよな、とこういう時に思う。

「言いたくねーんならいいんだけど、ゲームでもするし。」

「いや…その…昨日例の店員さんにラインのID教えてもらったっていうか…」

「マジ?だーから脈あるっつったろ。」

「うん…。」

ならなんでそんな浮かない顔してんだよとでも言いたげな視線を感じ、鬼嶋に言ってしまおうか、と考える。

自分でも完全には受け入れられていないことが分かってしまった今、彼に告げるのが本当に良いことなのか悩む。と同時に、彼なら自分ですらよく分かっていない俺のことを絶対に理解してくれるだろうという思いが心の奥底にあるのも事実だ。


悩んだ末、後者の自分の直感を信じることに決め、口を開く。

「その…例の店員さんっていうのが実は…男の人で…」

言った、ついに言ってしまった。
思わず鬼嶋の方をちらりと確認すると、特に驚いた様子も無くて拍子抜けしてしまった。

案の定、へーといいながらポテチをボリボリと食う始末だ。

「へーって、それだけ?」

「まあ流石に人外の動物が好きとか言われたら驚くけど。別に普通なんじゃねーの、そんなん。」

「でも…やっぱり家族とか友達のこととか考えたりするとさ…」

「…俺だったら自分の欲しいものは周りの事なんか気にしねーで掴みに行くけどな。」

でも、と更に言い訳したくなるのを抑える。本当は俺だってそうするべきだということは分かってる。何せ2ヶ月も片思いしていた相手が同じ気持ちでいてくれているのだから。
ただ、元々あまり行動的でない性格も災いしてその大きな一歩が踏み出せずにいるのだ。

「…まあ結局はお前の決めることだから強制はしねーけど。周りの事気になるっつーんなら少なくとも俺はお前の味方だから」

彼の少しぶっきらぼうだけれど素直で優しい言葉は、胸にすとんと落ち、俺の気持ちを軽くさせた。
鬼嶋はいつも俺が一番言って欲しい言葉を無意識のうちに言ってくれる。

まだ全ての問題が解決した訳ではない。それでも、鬼嶋は味方でいてくれるという絶対的な安心感には背中を押された。


こんな友達を持っている俺は幸せ者なんだろうな。

改めて鬼嶋の存在に感謝しつつ、ついに勇気を出した俺は鬼嶋が帰ってからしばらく経った深夜の12時を過ぎた頃に彼にメッセージを送った。
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