1 / 1
ライク
しおりを挟む「特殊回復だと。そんな術を利用するとは、どんな毒を喰らったんだか。あいつ、不死身なんだよな。ドラゴンなんだし、俺よか、何倍もよ」
ライクは、文句なども言うが、一応、特別料金だって支払う。
あとは、一週間ぐらい、安静なんだとか。
その魔術にしても、使用魔力量だって、異常なのだ。普通なら、複数人の魔力伝達が必要らしかった。
それを、ライクひとりで、足りてしまうと、あんた大丈夫なのか?かえって心配された。
まあ、とくに平気であった。
とは言え、三、四日ぐらいか。ゼロではあった。
完全回復なんか、もっと先なのだ。
魔力を吸収する手順とかも、なんとなく見てる。たぶん、あれと同系統かな。
せめて、そんなぐらい。
まさか、王宮が直轄管理をして、外部漏洩から守ってる術なのに、どうやんの?
やっぱ、そんな空気はなかった。
ここしか、扱う病院がないらしく、来た甲斐だってあった。
ハンター業なんて、暫くは、バカンスだな。
予算は、一切ないが。
若干、時間をもどす。
王宮の直営とは言え、旧魔術協会を流用したんで、まあ、古びた王立病院なのだ。新設の入院病棟だけが、違和感のある新品となった。
荷台をつけて、馬車がやって来る。
その荷物は、ライクとドラゴンであった。
看護師も数人で、やっとの足取りなんだが、そんな憔悴ドラゴンを、どうにか診察室へと、支えながらも案内してた。
メイン通りを挟んでは、老舗のカフェがあって、斜めまえの、王立病院も見渡せた。
ダークは、ケーキ、当店の自慢です。なんて文字を見たのか、あんなサイズ、食えんのかね。どうも不審がった。
ブラックは、紅茶を飲みきってしまうと、追加を頼んでは、メイン通りを観察しだす。
「大丈夫だわ。ちゃんと、あの病院ですよ」
反対側、ライク達が見えた。ドラゴンは、看護師に支えてもらう。
そんな様子だ。
「ドラゴン、殺してないだろうな」
ダークは、一口飲むが、味もせず。
「もちろん、加減なら、しっかりとね。だって、殺しちまうと、ライクの奴に狙われちまうよ」
ブラックは、とくに冗談でもなかった。
ライクの魔力、削んのが、目的なんだから。
まだ、医療解毒がない、珍しい植物であった。あとは、魔力回復となるが、瀕死の場合、特殊回復一択となった。
一応は、別の案もあったが、ライクに、毒なんか盛っても、あの魔力で耐えかねん。
あいつ、すぐ暴発すんだ。そっちが、怖いよ。
この案は、却下とした。
「でも、あいつ、自分の魔力なんて、使うんですかね」
ブラックは、特殊回復になったら、必要魔力をどこで調達すんのか、そんな場合、ライクがどう思ってるのか。そこが、未知数なんで、不安でもあった。
「最悪、あのドラゴンはいねぇんだ。もし、余力があってもよ。だから、こいつを用意した」
ダークは、骨董品なのだが魔石だけは高質そうな、怪しげな長刀を触りだして、もっと不気味にしてる。
ドラゴンの退院までは、この街に滞在なんだが、いつ頃、どんな体調かも分からないので、どうにか安宿を見つけて、ある程度は、余力も欲しかった。資金面でのだ。
ちょっと、路地を入ってみるか。あの辺、道具屋とか店舗だろう、数軒あった。
「まあ、聞いてみっか、安宿限定なんだけど」
「みんな、逃げちまったよ」
ダークは、そんな周囲を気にも止めず。
路地の奥、ライクを足止めしたのが、ダーク達であった。
相棒を襲うと、回復させる。特殊回復を扱えるのが、王宮管轄のあの病院だけなので、そこを狙った。
殺してしまうと、意味はない。逆にライクにやられてしまう。
だから、こんな方法をとった。
それだって、ライクは、相棒を想っているのか。そんな弱点もあった。
「どうよ、相棒はよくなったか?」
ライクは、やっと、察しがつくのだ。
どこで入手したんだか、魔石で威力を上げるが、通常流通禁止ともなった、初期の魔剣である。
ダーク達は、そんな歴史資料クラスを雑に構えると、ライクを睨んでた。
現在の製造では、魔石等級が抑えてあった。見れば分かるほど、低級なのだから、以外と使用者もなかった。
ライクにとって、こんな状況は嬉しくもない。
こっちは、魔力がありません、なんてもんじゃないぞ。事情はどうあれ、こんな一気に失うのは、そうないんだぜ。ま、初めてか。
案外、困ったわ。
確か、あれって、こんなだっけ?
つい先程だ。魔力を奪われる側が、今度は、反対にまわるのだ。
こんな、もんかな。えっと、相手の魔力を感知すんだろ、でもって、あれ?なんか出来ないぞ。
「あ、まてよ。元々で、魔力ないのか」
ライクは、やっと理解するが、だから、どうすんだ。
ダークは、なぜか、笑いだし。
あいつ。魔力、ないぜ。
なんて悟った。そう、こっちの魔力を奪う気なのが、ダークには分かった。
自分は、魔力において、ゼロ体質なんだから。
ライクは、魔力のある者を探すが、と言うか、もう誰もいなかった。
路地の向こう側なんだが、地元の通報らしく、女警官がやってくる。
ライクが、そんなのを見ては、不思議な顔をする。でも、女警官はお構いなしだ。
「あれ、なんでよ」
ライクは、驚くが声をかける。
「今、こっちなの。まったく、何してんだか」
女警官は、今にも逮捕しかねない。
「あのさ、あっちなんだよ」
ライクは、そんなのを言いかける。でも、なんか思い付いた。
「まあ、久しぶりなんだぜ、怪我でもしたら、なんか誘いにくいんだよ。な、分かんだろ」
肩に触るんだが。これ、逮捕だね、なんて言われた。
だが、女警官から、魔力確保だ。
女警官は、何かを察したらしく、不満なのか、ひと睨みで。
マジか。
ライクは、とにかく驚いたのは、その魔力量だった。
ダークの方は、こいつは、もう魔力がないんだと思ってる。
魔石と言うのは、万能でもなかった。どんな高濃度の魔石でさえ、上限の負荷に対しては、破壊されてしまった。
ダーク達が構えた、その魔剣は、希少等級の魔石装備なのに、両石が瞬間で散った。
ダーク達と、ライクも驚く。
でも、その対応が早かった。ダーク達は、もう骨董品となった、その元魔剣を投げつけて。
人工魔石、転送系統、等級はミシック。
それは、外風に出せば、もう発動してた。
特有の発動音なのは、広範囲転送を可能とした、その高出力の為だ。
飛び去るとか、そんな話でもなく、消滅とでも言うのか。
意訳になるが、結果としては、誰もいなかった。
「まったく、なんだかね」
ブラックの声か、そんなのが残った。
「ま、いっか。あれ、捜索範囲が広いんだよ。なんにしても、体調回復だな」
ライクは、安堵もするが心配もあった。
「分かってる、あれ、窃盗だわ」
女警官は、さすがに言いたくて、やけに詰よった。
「もう、ないのよ。あれ。使ったのかな、よく覚えてないわ。ねえ、ユノア」
「魔力窃盗よ、まあ、逮捕だわ」
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
聖女じゃない私の奇跡
あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。
だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。
「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる