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タマ
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「なんか、わりと痛いんですよ。あと、邪魔なんですよ、それ」
ティアは、傷薬とかを準備したいが、なんせ、ドラゴンがやたらと噛んでくる、どうしたもんか、面倒でもあった。
ドラゴンとは言え、まだ野良ネコほどか、そんなサイズ感なのだ。
「もう、ハラが減ったな、なんかくれ」
そのドラゴン、タマなんだが、治癒も早いようで、わりと厄介なのだ。
どの生徒だったか、この魔法学校の近くらしいが、登校の途中、街なかで怪我をしてたので、保護をしたんだとか。
たまに出没をするが、小型の魔獣なんかでは、世間も慣れたもので別に対応もしなかった。
そんなのと闘うが、やられてしまう。
結局、安全だと思ったのか、どうも、定住なのであった。
一応、この国だと、神の使いとされ、祀られてもいた。
実際、見かける者だって、ゼロに近いものがあった。それ程、希少種なのだ。ドラゴンと言うのは。
それを知ってか、やたら、甘えてもくる。
ハラが減ったとか。
一番、あげてしまったのが、講師でもある、ティアなのだ。その為、世話役となった。
俺にも、なにか魔法を教えてくれ、そんなことを言うので、初歩の魔法ならと、教えてしまう。
案外、センスがあったのか、若干、被害も出したので、その件は中止となった。
この魔法学校は、一応、設立されたのが、最近なために設備なんかも最新ではある。かと言って、学術上の資料管理なども、講師達が担ってもいるため、やたらと古い魔装具とかもあった。
ある日、学校宛の資料群を運ぶとき、前の学校時代からあった、年代物のブレスレットなんだが、それも、研究対象となったので、一緒にと頼まれた。
むき出しなのもあって、ティアが身につけての、運搬をしたのだが。
「封印らしいね、その腕輪、ちょっと、聞いてね」
運搬先では、荷物に囲まれながらも、同僚が作業中なのだ。
「何をなんですか、封印って、魔獣とか?」
ティアは、そんなこと言いながらも、ブレスレットを外す。
「魔力だよ。着けたらね」
え、絶句のティアなんだが、
「着けてもね、強く願わないと、それ、発動条件らしいよ」
ティアは、小さく炎を灯すが、一応、空間で浮かんだ。
「なんか、大丈夫かも」
さすがに研究室にまで、運び込まれるとも思わなかった。ちょっと、様子が変なんですよね。そんなぐらいの調子だった。
魔法学校とは言っても、設備なんかは揃ってもいる。
妙な装置。おそらくは、何かを転送させる為のもので、それが、普通じゃないのは、すぐに分かった。
なにより、学校なんてもので、対応してよいのか。そんな疑問も浮かんでしまった。
この感じ、たとえ魔法学校の者じゃなくても、分かるとは思えた。上位の冒険者や、勇者だとかなら。
こいつ、魔界の物だな。
装置だって、こっちの系統なんかとは、基本、違うのだ。
「あの、これって、どこの?」
研究員は、これの配達員を探すが、受け取りサインもなしで、消えてしまってた。
すぐに、研究室を出ると、そこの警備員を捕まえて、今、出てった配達員がいたよな。となぜか、確認とかをするのだ。
「いや、ずっと、中じゃないんですか?」
マジか。研究室に戻るんだが、あの装置は、すでに、暴発中であった。
あっちのエネルギーとか、近くで見るなんてのは、貴重なんだけどよ。
ま、そんな余裕など、ありもしないが。
独特な印でもあった。あれが、魔法陣だよな。
いっそ、破壊するか。
どうやってよ、あんな状態なんだぞ。まず、近づけんのか。
魔法?俺のでかよ。
一瞬、爆発音もあるのだが、すごい発光であった。
吹き飛びながらも、研究員の研修の時なんだが、まず、防御魔法とかを覚えた。
あ、これか。
やっと、気づいた。
叩きつけられると、さすがに、意識がなくなった。
その後、防御魔法も消えた。
あれは、もうご馳走なんじゃないのか、タマも満足でしかないらしい。
とっくに傷も回復をした。魔法学校を根城と決めたようで、なかでも、調理室などは、誰かいると出てもこない。
神殿の方では、噂とかも聞いたらしく、ウチでお世話をさせてくれないかと、そんな申し出があった。
タマにすれば、どうでも良かったのか、当初、あんまり乗り気でもなかったが、食事面だとかの話になると、結局、しっかりと交渉をしてた。
それが、このご馳走なのである。
ティアは、タマを送ってもくるが、あんなでは、つらい別れなど心配もないだろう。
ある意味で、よかった。とは思った。
もう、何も告げす、帰ってしまうかと思ってたが、
「また、来いよ」
タマは気づいたのか、声をかけてくれた。
ティアは、だいぶ、嬉しかった。
お昼も近いので、途中、サンドイッチなんかを買って、魔法学校まで戻ってもくるが、その前から、異変もあった。
まさか、校舎が半壊してるとは、思ってもなかった。
私の全力、どれくらいなのか。
ティアは、そんなことを考えてしまう。
この段階になって、そんなのは、確かめようもないが、最重要でもあった。
総魔力量、足りるかな。
講師としては、まだ若いのだ。おそらく、普通の新任なんかよりも、二年ほどか。
家系もあった。両親ともに、魔力は多いのだが、子供ながら、そんなとこを気にもしない。
他と比べたら、若干、という程度なんで。そんなものだ。
いわゆる、体質か。
結局、自己判断である。
生徒として、旧校舎なのだが、この魔法学校に通っていた。もう、何年も前になるのか。
要は、そんなに魔力量があるのなら、いっぱい、魔法も使えるよね。
なんて話なのだ。
魔法の研究なんだが、現物を見ないと、研究も何もなかった。とは言え、研究者なんかは、なぜか、魔法を使うのは、苦手という者が多いらしい。
体力ばか。みたいで、なんか嫌だった。
結局、学費免除。それが決め手。
はれて、講師となった。
メインは、研究なのだが。
職業病でもあった。同じ魔法を使うにしても、もっと効率的に発動できないか。
それは、そんな需要があるわけで、あくまでも、魔法自体が対象なのだ。
何か、装置なんだろうが、こいつを抑え込むにも、心配と言えば、自分の限界が、どこなのだろうか?
そこが、気になる。
案外、余裕もあるが、数時間なんて、まず持たないのだ。
装置の放出が、一定なのも、なんか怖かった。
どうにか、あの魔法陣を破壊したかった。一部に亀裂も入ったが、それのみで、なんの変化もなかった。
未解決の要素が、なんか多いな。
破裂音があって、ティアは身構えるが、なんの痛みもなかった。今のは、なんだ。
装置の放出、ティアの抑圧、その両方は、やっとで、魔法陣を追い詰めた。
砕け散った、破片が舞うのだが、安堵したのか、すぐに脱力もあった。
あ、違うわ。
根元を失った、その反動なのか、ティアの抑圧がなくなった、それなのか。
問題なのは、もう力なんて、戻せなかった。
解いたのは、私なんですけど。
だからって、安堵した、その直後になんか、暴発しないでよ。
もっと、時間があったら。ま、無理かな。
爆発を、眺めてしまった。
あ、きれいね。とかじゃ、ないから。
魔法効率なのだが、まず最初に覚えもする、そんな初歩のヤツがあった。魔力の変換などが比較的にシンプルなんで、わりと誰でも撃てた。てことは、複雑な魔法なんかよりも、若干でも、早く撃てるはず。
必殺、初歩のヤツ。あと、全開も。
相殺したのかは、とにかく爆発音に、薄れてしまう意識など。どうなったかの、確認なんて不可能となる。
どっちだろ、私、生きてるかな。
上手いこと、意識も飛んだ。
ティアは、窓の外、ずっと小さいのは、あれって海鳥なのかな。よく、分かんないな。
でも、風が吹くと、気持ちがよかった。
この病室、海も見えるんだ。そんなことを思ったのは、退院も決まってはいたが、さすがに、万全でもなくって、それ以上に、あの後、どうなったのか。そんな話もあって、よけい、考え込んでしまった。
まさか、現実逃避でも、あったのか。
おもに、治癒魔法が専門なんで、医師でもあった、同僚のアレルだが、あの後、この病院で治療に当たっている。
まだ、ティアの意識がない時なんて、何度も様子を見に来たらしく、やっと、目が覚めたと言うのに、早速、そのことを散々言われてしまう。素敵な彼ねとか。
私、病み上がりなんですよね、加減してくれませんか?とは、思った。
ティアは、体力が戻ってもくると、下の売店までとか、お出かけをした。
最初のうちは、気づきもしない。それでも、何度か出歩くと、分かってしまった。
あの時のために、怪我を負って、治療している人達が、多かったと。
聞いてた話とも、重なってしまった。
ティア自身も、相殺の反動を受けていた。
だから、この入院なわけで。だと、あの相殺では、他にもいたのか。
同義的ではなく、事実の話になる。相殺の片方は、それって、私じゃないか。
「今、急いでんだわ、後で、連絡するよ」
アレルは、そんなことを言って、ティアのお弁当を抱えながらも、病院の廊下を駆けて行くのだが、お弁当は、邪魔にならないのか。
「まったく、どうすんのよ、私が、困るわよ」
ティアは、呆れもするが、なんにしても、安心ではあった。
あの当時、魔法学校のどこだか、アレルもいたそうで、言うほどの被害などは、なかったらしいが、あのぶんなら、平気なのだろう。
ティアは、まだ通院とかも、必要なんだが、検査でも異常はなく、驚かれてしまう。
丈夫なんて、嬉しいのか、恥ずかしいのか。
まだ、小さい子供が、壁にもたれてた。奥の診察室では、たぶん、父親が受診中らしかった。学校の出入り業者だと思う。見かけもしてた。
父親は、骨折なのか、腕を吊っているが、診察室から出てもくると、その子は、すぐに笑顔になった。
声をかけるとか、そんな勇気はなかった。
離れたとこで、あの状況を見てた人の話だと、小説でもあるまいし、かと言って、この距離でも危ないかもな、そんな発光?であったらしくて、それを女の子が対応してるとか、当時は、考えもしなかった。
退院の後、驚かれたもんだ。
どこまでなのか、私がやったのは。最後の暴発など、どこで線を引くのか。
ま、誰が責めんのよ、そんな気もする。
責める?
いや、誰がなんだか。
きっと、この先、ついてまわるのだ。
ま、サンドイッチでいっか。
ティアは、少し考えると、トマトなんかを準備して、パン、どこだっけ。
通院の時にだけ、お弁当を作ってあげるのも、なんだか、面倒に思ってるみたいで、そうじゃなくても、作ってあげるかな。
あの件もあって、魔法学校の方は、休校となってしまった。なおのこと、暇なのに来ないんだな、そんなことを思われたら、カチンと来るのだ。
どこか早足になってた。
急いでたはずが、なんでか、やっと病院に着いた、そんな気がしてる。
病院からは、わりと離れてる、あれは喫茶店なんだが、時間もあったので、ゆっくりと紅茶とか飲んでた。
そのお客さんは、病院の後で寄ったらしく、薬が変わったら、値段まで高くなってた。なんて話してる。待ち合わせてたのか、遅れて来た友達なんかも、さすがに、効いてくれないとね。とか、笑ってた。
ちょっと、声のトーンを下げるが、最後のとこだけ、なんでか、聞こえてしまった。
「亡くなったのよ、なんだっけ、魔法学校のよ」
えっと、病院って、どっちなんだっけ?
喫茶店を出るが、やっと、気づく。
私、動揺してたんだと。
何人かの看護師さんを、どうにか、捕まえようともしたんだが、丁度、忙しい時間帯だったのか、今、ちょっと、手が空いてないのよ、ごめんね。みたいな、そんな感じで逃げられてしまった。
この辺なら、アレルも出てくるのかな。きっと、そのうち。
何か、聞けるかな、とか思ったのだ。
あてもなく、来たのもあって、なんか持て余すのだが、入院当時、仲良くもなった、同世代のリコちゃんの部屋にでも、お見舞いに行ってみるかな。
病院の売店では、スナックやら、ジュースやらを選ぶと、そんなのを差し入れとした。
別の病室なのだが、何か、患者さんどうしで集まると、たぶん、噂話とかをしてるが、あんなのも懐かしいものだ。
「え、先生?」
とか、聞こえたが。
ティアは、そこで、立ち止まってしまう。
断片でもあった、
「うそ、アレル先生、いつなのよ」
耳にしたのが、そんな会話で。
看護師さんは、医療器具とかをもって、階段わきの病室を出てくるが、あの人なら、検査なんかで会話もあった。
「あの、すいません」
ティアは、まだ、そんな言葉しか、かけてもないが。
わりと、目も合ったのに。
「ごめんなさい、今、急いでるのよ」
なんか、準備してた、そんな言葉で返すのだ。
もっと前からだ。
避けられてた。
べつに、意味などないが、お見舞いなんてしてる場合でも、ないとは思う。
結局、戻ってしまう。最初の場所だ。
聞いたことのある、そんな声だから、すぐに分かった。
たしか、私よりも、ふたつ下かな。
アレルの紹介なんだし、その時に、お昼も食べたっけ。あれは、妹のユミリアちゃん。
もう、無表情なのが、分かってた。
なんで、そんな顔をするの?
どれだけ、経つのか。結局、やっとなんだが、
「兄が、亡くなりました」
ユミリアは、ずっと、無表情だった。
確かに、上の階は、もう半壊してたのを、ティアも見ていた。
それは、最初の暴発の時、一部が吹き飛んだらしく、その時には、階段も崩れていたが、まず、下があんな状況なので、救助にも行けない。
そもそも、上の階に誰かいるのかも、謎であった。
あの上の階には、アレルと他の職員達がいたらしい。
暴発を抑えもしたが、ティアは意識を失う。
アレルは、あんまり話もしなかったので、つい、鵜呑みにもしてたのだ。そんなに被害もなかったよ。
そんなセリフをだ。そっか、大丈夫なんだと。
アレルの治療も担当した、その先生は、ティアが昏睡してる間のことを、当時の話を教えてくれた。
完治までは、多少、先かもな。だが、回復はしてたんだと。
変な話とは、まあ、思うのかも知れない。
抑制ライン。治癒魔法のではあるが、そんなものがあった。
術師の生命を脅かすと、その判断がなされた場合は、治療行為を通常医療のみに限ること。なお、いかなる場合でも、これを適応する。
要は、法で守らなきゃ、需要の方がありすぎんのだ。
「もっとな、回復してんだと、思ってたよ。失格だな、医者なんて」
結局、そのラインが、どこにあんのだ。そんなものは、個体差があるわ。あげく自己申告なのだから、うまく、やってる奴がいるわけだ。
まず、自己回復だと、そんな方針だった。
最初の暴発、その真上だと、被害もあった。
さすがに、大丈夫だろうと、思ったらしい。
「あんた、この件、気にしてんのか?そう言ってたな、あいつ。ま、俺が治すんだけどね、なんて言ってた」
まったく、何してんだよ。
チーズ味ばっかり、どうすんのか。さっきのスナックなんだが、ずいぶんと買ったわ。その量だって、一人分ならば、なんか多いな。
だめ、あんまり笑うと、なんかよけい。
ティアは、長椅子の端っこ、誰もいないのに、そんなとこに座ってた。
お弁当、あんなに作ったのに、残ったじゃないの。もう前か、忙しかったみたいで、まったく食べなかったのを、そんなに大変なの?とか、笑ってた。でも、じつは、激ギレ、してたのよ。
ほんと、ごめんね。
その辺には、患者さんとか普通にいるの。
もう、一人になんないと、まずいわ。
まさか、気づかなかった。
見られてたのか、ユミリアだった。
やっと、口を開くのだ。
「もう、無理しないでよ、とか言ってもね、なんか、聞かなかったわ。あんなで済んだのも、あなたのお蔭なんだし、感謝だってしてるの」
ユミリアが無理をしてると、よく分かった。
だって、そう。実の兄妹なんだ。
けっこうな、間があった。
「どうも」
途切れた。言葉が出ない。
「ありがとう」
それは、言葉にならない。
あえて、言おうとした。なのに、それが。
まさか、完全に取り壊すなんて、生徒どころか、先生の方も驚くのだ。
あの校舎は、すっかりと無くなって、単に、更地となった。被害にも合わなかった、他の校舎と、プレハブの仮校舎とで、意外にも再スタート。
ティアは、授業とか、研究などの、魔法を使うものは止められたが、病院の方で、日常生活なんかは大丈夫だと、太鼓判をもらった。
授業で使う資料なんかは、研究室の近くの倉庫にあったので、消失したのがあった。
また、最初から作るので、ティアも手伝った。
以前のように、ティアは、生徒なんかとも、普通にやってはいた。
いつもなら、外で買ったりするが、お昼になっても、ティアは、出かけもしなかった。
搬入の都合もあって、研究対象とかの魔装具だとかは、裏門側の校舎、そっちの倉庫にあった。
あの研究室とは、反対なので、運もよかった。
この時間なら、誰もいなかった。
ティアは、そんな倉庫内を見てまわる。
やっと、止まった。
この魔法学校で、昔からあった。あの年代物のブレスレットが、宝石箱の中、他の魔装具なんかと、しまってあった。
あ、意外にも、分かるもんで。
これには、発動条件があった。
えっと、本人の意思か。
何が、発動したのか。
涙が落ちて、消えたのが、分かった。
安堵なのか、それとも。
ティアは、 ずっと泣いてた。
ひとつ、浮かんだ。あ、クビかも。
やっぱりか、そんな言葉も出たのだが、小型の魔獣出現やら、魔法学校の件など、何かの関連性のようなものを、疑いたくもなる事件があったせいで、それの出現場所というのが、神殿だと判明もすると、自然、そんな言葉が出た。
ルカ神殿は、現在、あのタマが暮らしてる、自宅でもあったが、それは、タマ側の認識でしかなくって、神殿としては、きちんと祀ってるらしかった。
タマには、その自覚がなかった。
問題なのは、出現したのが、どうも、打止めっぽいな、これで、という点か。
わりと、ボス感?もあった。
助かったのは、ボス感があり過ぎたのか、なんとかして欲しいとか、そんな空気さえなかった。
もちろん、医者から止められてるのは、学校側だって、診断書付きで知っている。
それでも、ティアは、来てしまった。
まだ続くのか、そんな気にもなった。
ルカ神殿は、午前中だと、開運の御祈祷なんかが受けられるので、往来も多かった。
もし、何かあれば、あの時など、比ではないのかも知れない。
なのに、何も出来ない。
まさか、あれを倒せるとも、思ってないが。
「うるさいっのお、おう、ティア、元気か?」
タマは、欠伸なんかしてる。騒ぎなど、平気なのか。
「タマ、大丈夫?」
「もうな、首だよ」
タマは、笑ってもいた。
「ちょっと、大丈夫なの、どこよ?」
「なんか、寝違えたわ」
タマは、どうも、辛いのか、わりと擦ってた。
「ねえ、まだ、寝てたわけ?」
ティアは、こんな騒ぎのなか、拍子抜けなのだ。
「まあな、さすがに、起きたわ。なあ、次の奴、教えてくれって。前の奴は、練習したかんな。見とけよ」
タマは、言いながらも、ちらっと見て、術を放ってたが、あんな大魔法など、いつ教えたか。
ラスボス?は、あっさりと、倒れもするが、もう逆に悲鳴とかも上がってた。
「筋力なんか、今は、こんなもんだけどよ。見つけたわ、魔力だよ。だって、俺、ドラゴンだもんな。最大量なんて、もうヤバいんだぞ、ま、次は、加減しとくか」
めずらしく、タマは、空気をよめた。
「やばい、こっち、怪我人いるぞ」
「おい、誰が、やったんだ?」
「えっと、それなんですけど、あの、」
魔法学校。なんか、戻るかな。
ティアは、傷薬とかを準備したいが、なんせ、ドラゴンがやたらと噛んでくる、どうしたもんか、面倒でもあった。
ドラゴンとは言え、まだ野良ネコほどか、そんなサイズ感なのだ。
「もう、ハラが減ったな、なんかくれ」
そのドラゴン、タマなんだが、治癒も早いようで、わりと厄介なのだ。
どの生徒だったか、この魔法学校の近くらしいが、登校の途中、街なかで怪我をしてたので、保護をしたんだとか。
たまに出没をするが、小型の魔獣なんかでは、世間も慣れたもので別に対応もしなかった。
そんなのと闘うが、やられてしまう。
結局、安全だと思ったのか、どうも、定住なのであった。
一応、この国だと、神の使いとされ、祀られてもいた。
実際、見かける者だって、ゼロに近いものがあった。それ程、希少種なのだ。ドラゴンと言うのは。
それを知ってか、やたら、甘えてもくる。
ハラが減ったとか。
一番、あげてしまったのが、講師でもある、ティアなのだ。その為、世話役となった。
俺にも、なにか魔法を教えてくれ、そんなことを言うので、初歩の魔法ならと、教えてしまう。
案外、センスがあったのか、若干、被害も出したので、その件は中止となった。
この魔法学校は、一応、設立されたのが、最近なために設備なんかも最新ではある。かと言って、学術上の資料管理なども、講師達が担ってもいるため、やたらと古い魔装具とかもあった。
ある日、学校宛の資料群を運ぶとき、前の学校時代からあった、年代物のブレスレットなんだが、それも、研究対象となったので、一緒にと頼まれた。
むき出しなのもあって、ティアが身につけての、運搬をしたのだが。
「封印らしいね、その腕輪、ちょっと、聞いてね」
運搬先では、荷物に囲まれながらも、同僚が作業中なのだ。
「何をなんですか、封印って、魔獣とか?」
ティアは、そんなこと言いながらも、ブレスレットを外す。
「魔力だよ。着けたらね」
え、絶句のティアなんだが、
「着けてもね、強く願わないと、それ、発動条件らしいよ」
ティアは、小さく炎を灯すが、一応、空間で浮かんだ。
「なんか、大丈夫かも」
さすがに研究室にまで、運び込まれるとも思わなかった。ちょっと、様子が変なんですよね。そんなぐらいの調子だった。
魔法学校とは言っても、設備なんかは揃ってもいる。
妙な装置。おそらくは、何かを転送させる為のもので、それが、普通じゃないのは、すぐに分かった。
なにより、学校なんてもので、対応してよいのか。そんな疑問も浮かんでしまった。
この感じ、たとえ魔法学校の者じゃなくても、分かるとは思えた。上位の冒険者や、勇者だとかなら。
こいつ、魔界の物だな。
装置だって、こっちの系統なんかとは、基本、違うのだ。
「あの、これって、どこの?」
研究員は、これの配達員を探すが、受け取りサインもなしで、消えてしまってた。
すぐに、研究室を出ると、そこの警備員を捕まえて、今、出てった配達員がいたよな。となぜか、確認とかをするのだ。
「いや、ずっと、中じゃないんですか?」
マジか。研究室に戻るんだが、あの装置は、すでに、暴発中であった。
あっちのエネルギーとか、近くで見るなんてのは、貴重なんだけどよ。
ま、そんな余裕など、ありもしないが。
独特な印でもあった。あれが、魔法陣だよな。
いっそ、破壊するか。
どうやってよ、あんな状態なんだぞ。まず、近づけんのか。
魔法?俺のでかよ。
一瞬、爆発音もあるのだが、すごい発光であった。
吹き飛びながらも、研究員の研修の時なんだが、まず、防御魔法とかを覚えた。
あ、これか。
やっと、気づいた。
叩きつけられると、さすがに、意識がなくなった。
その後、防御魔法も消えた。
あれは、もうご馳走なんじゃないのか、タマも満足でしかないらしい。
とっくに傷も回復をした。魔法学校を根城と決めたようで、なかでも、調理室などは、誰かいると出てもこない。
神殿の方では、噂とかも聞いたらしく、ウチでお世話をさせてくれないかと、そんな申し出があった。
タマにすれば、どうでも良かったのか、当初、あんまり乗り気でもなかったが、食事面だとかの話になると、結局、しっかりと交渉をしてた。
それが、このご馳走なのである。
ティアは、タマを送ってもくるが、あんなでは、つらい別れなど心配もないだろう。
ある意味で、よかった。とは思った。
もう、何も告げす、帰ってしまうかと思ってたが、
「また、来いよ」
タマは気づいたのか、声をかけてくれた。
ティアは、だいぶ、嬉しかった。
お昼も近いので、途中、サンドイッチなんかを買って、魔法学校まで戻ってもくるが、その前から、異変もあった。
まさか、校舎が半壊してるとは、思ってもなかった。
私の全力、どれくらいなのか。
ティアは、そんなことを考えてしまう。
この段階になって、そんなのは、確かめようもないが、最重要でもあった。
総魔力量、足りるかな。
講師としては、まだ若いのだ。おそらく、普通の新任なんかよりも、二年ほどか。
家系もあった。両親ともに、魔力は多いのだが、子供ながら、そんなとこを気にもしない。
他と比べたら、若干、という程度なんで。そんなものだ。
いわゆる、体質か。
結局、自己判断である。
生徒として、旧校舎なのだが、この魔法学校に通っていた。もう、何年も前になるのか。
要は、そんなに魔力量があるのなら、いっぱい、魔法も使えるよね。
なんて話なのだ。
魔法の研究なんだが、現物を見ないと、研究も何もなかった。とは言え、研究者なんかは、なぜか、魔法を使うのは、苦手という者が多いらしい。
体力ばか。みたいで、なんか嫌だった。
結局、学費免除。それが決め手。
はれて、講師となった。
メインは、研究なのだが。
職業病でもあった。同じ魔法を使うにしても、もっと効率的に発動できないか。
それは、そんな需要があるわけで、あくまでも、魔法自体が対象なのだ。
何か、装置なんだろうが、こいつを抑え込むにも、心配と言えば、自分の限界が、どこなのだろうか?
そこが、気になる。
案外、余裕もあるが、数時間なんて、まず持たないのだ。
装置の放出が、一定なのも、なんか怖かった。
どうにか、あの魔法陣を破壊したかった。一部に亀裂も入ったが、それのみで、なんの変化もなかった。
未解決の要素が、なんか多いな。
破裂音があって、ティアは身構えるが、なんの痛みもなかった。今のは、なんだ。
装置の放出、ティアの抑圧、その両方は、やっとで、魔法陣を追い詰めた。
砕け散った、破片が舞うのだが、安堵したのか、すぐに脱力もあった。
あ、違うわ。
根元を失った、その反動なのか、ティアの抑圧がなくなった、それなのか。
問題なのは、もう力なんて、戻せなかった。
解いたのは、私なんですけど。
だからって、安堵した、その直後になんか、暴発しないでよ。
もっと、時間があったら。ま、無理かな。
爆発を、眺めてしまった。
あ、きれいね。とかじゃ、ないから。
魔法効率なのだが、まず最初に覚えもする、そんな初歩のヤツがあった。魔力の変換などが比較的にシンプルなんで、わりと誰でも撃てた。てことは、複雑な魔法なんかよりも、若干でも、早く撃てるはず。
必殺、初歩のヤツ。あと、全開も。
相殺したのかは、とにかく爆発音に、薄れてしまう意識など。どうなったかの、確認なんて不可能となる。
どっちだろ、私、生きてるかな。
上手いこと、意識も飛んだ。
ティアは、窓の外、ずっと小さいのは、あれって海鳥なのかな。よく、分かんないな。
でも、風が吹くと、気持ちがよかった。
この病室、海も見えるんだ。そんなことを思ったのは、退院も決まってはいたが、さすがに、万全でもなくって、それ以上に、あの後、どうなったのか。そんな話もあって、よけい、考え込んでしまった。
まさか、現実逃避でも、あったのか。
おもに、治癒魔法が専門なんで、医師でもあった、同僚のアレルだが、あの後、この病院で治療に当たっている。
まだ、ティアの意識がない時なんて、何度も様子を見に来たらしく、やっと、目が覚めたと言うのに、早速、そのことを散々言われてしまう。素敵な彼ねとか。
私、病み上がりなんですよね、加減してくれませんか?とは、思った。
ティアは、体力が戻ってもくると、下の売店までとか、お出かけをした。
最初のうちは、気づきもしない。それでも、何度か出歩くと、分かってしまった。
あの時のために、怪我を負って、治療している人達が、多かったと。
聞いてた話とも、重なってしまった。
ティア自身も、相殺の反動を受けていた。
だから、この入院なわけで。だと、あの相殺では、他にもいたのか。
同義的ではなく、事実の話になる。相殺の片方は、それって、私じゃないか。
「今、急いでんだわ、後で、連絡するよ」
アレルは、そんなことを言って、ティアのお弁当を抱えながらも、病院の廊下を駆けて行くのだが、お弁当は、邪魔にならないのか。
「まったく、どうすんのよ、私が、困るわよ」
ティアは、呆れもするが、なんにしても、安心ではあった。
あの当時、魔法学校のどこだか、アレルもいたそうで、言うほどの被害などは、なかったらしいが、あのぶんなら、平気なのだろう。
ティアは、まだ通院とかも、必要なんだが、検査でも異常はなく、驚かれてしまう。
丈夫なんて、嬉しいのか、恥ずかしいのか。
まだ、小さい子供が、壁にもたれてた。奥の診察室では、たぶん、父親が受診中らしかった。学校の出入り業者だと思う。見かけもしてた。
父親は、骨折なのか、腕を吊っているが、診察室から出てもくると、その子は、すぐに笑顔になった。
声をかけるとか、そんな勇気はなかった。
離れたとこで、あの状況を見てた人の話だと、小説でもあるまいし、かと言って、この距離でも危ないかもな、そんな発光?であったらしくて、それを女の子が対応してるとか、当時は、考えもしなかった。
退院の後、驚かれたもんだ。
どこまでなのか、私がやったのは。最後の暴発など、どこで線を引くのか。
ま、誰が責めんのよ、そんな気もする。
責める?
いや、誰がなんだか。
きっと、この先、ついてまわるのだ。
ま、サンドイッチでいっか。
ティアは、少し考えると、トマトなんかを準備して、パン、どこだっけ。
通院の時にだけ、お弁当を作ってあげるのも、なんだか、面倒に思ってるみたいで、そうじゃなくても、作ってあげるかな。
あの件もあって、魔法学校の方は、休校となってしまった。なおのこと、暇なのに来ないんだな、そんなことを思われたら、カチンと来るのだ。
どこか早足になってた。
急いでたはずが、なんでか、やっと病院に着いた、そんな気がしてる。
病院からは、わりと離れてる、あれは喫茶店なんだが、時間もあったので、ゆっくりと紅茶とか飲んでた。
そのお客さんは、病院の後で寄ったらしく、薬が変わったら、値段まで高くなってた。なんて話してる。待ち合わせてたのか、遅れて来た友達なんかも、さすがに、効いてくれないとね。とか、笑ってた。
ちょっと、声のトーンを下げるが、最後のとこだけ、なんでか、聞こえてしまった。
「亡くなったのよ、なんだっけ、魔法学校のよ」
えっと、病院って、どっちなんだっけ?
喫茶店を出るが、やっと、気づく。
私、動揺してたんだと。
何人かの看護師さんを、どうにか、捕まえようともしたんだが、丁度、忙しい時間帯だったのか、今、ちょっと、手が空いてないのよ、ごめんね。みたいな、そんな感じで逃げられてしまった。
この辺なら、アレルも出てくるのかな。きっと、そのうち。
何か、聞けるかな、とか思ったのだ。
あてもなく、来たのもあって、なんか持て余すのだが、入院当時、仲良くもなった、同世代のリコちゃんの部屋にでも、お見舞いに行ってみるかな。
病院の売店では、スナックやら、ジュースやらを選ぶと、そんなのを差し入れとした。
別の病室なのだが、何か、患者さんどうしで集まると、たぶん、噂話とかをしてるが、あんなのも懐かしいものだ。
「え、先生?」
とか、聞こえたが。
ティアは、そこで、立ち止まってしまう。
断片でもあった、
「うそ、アレル先生、いつなのよ」
耳にしたのが、そんな会話で。
看護師さんは、医療器具とかをもって、階段わきの病室を出てくるが、あの人なら、検査なんかで会話もあった。
「あの、すいません」
ティアは、まだ、そんな言葉しか、かけてもないが。
わりと、目も合ったのに。
「ごめんなさい、今、急いでるのよ」
なんか、準備してた、そんな言葉で返すのだ。
もっと前からだ。
避けられてた。
べつに、意味などないが、お見舞いなんてしてる場合でも、ないとは思う。
結局、戻ってしまう。最初の場所だ。
聞いたことのある、そんな声だから、すぐに分かった。
たしか、私よりも、ふたつ下かな。
アレルの紹介なんだし、その時に、お昼も食べたっけ。あれは、妹のユミリアちゃん。
もう、無表情なのが、分かってた。
なんで、そんな顔をするの?
どれだけ、経つのか。結局、やっとなんだが、
「兄が、亡くなりました」
ユミリアは、ずっと、無表情だった。
確かに、上の階は、もう半壊してたのを、ティアも見ていた。
それは、最初の暴発の時、一部が吹き飛んだらしく、その時には、階段も崩れていたが、まず、下があんな状況なので、救助にも行けない。
そもそも、上の階に誰かいるのかも、謎であった。
あの上の階には、アレルと他の職員達がいたらしい。
暴発を抑えもしたが、ティアは意識を失う。
アレルは、あんまり話もしなかったので、つい、鵜呑みにもしてたのだ。そんなに被害もなかったよ。
そんなセリフをだ。そっか、大丈夫なんだと。
アレルの治療も担当した、その先生は、ティアが昏睡してる間のことを、当時の話を教えてくれた。
完治までは、多少、先かもな。だが、回復はしてたんだと。
変な話とは、まあ、思うのかも知れない。
抑制ライン。治癒魔法のではあるが、そんなものがあった。
術師の生命を脅かすと、その判断がなされた場合は、治療行為を通常医療のみに限ること。なお、いかなる場合でも、これを適応する。
要は、法で守らなきゃ、需要の方がありすぎんのだ。
「もっとな、回復してんだと、思ってたよ。失格だな、医者なんて」
結局、そのラインが、どこにあんのだ。そんなものは、個体差があるわ。あげく自己申告なのだから、うまく、やってる奴がいるわけだ。
まず、自己回復だと、そんな方針だった。
最初の暴発、その真上だと、被害もあった。
さすがに、大丈夫だろうと、思ったらしい。
「あんた、この件、気にしてんのか?そう言ってたな、あいつ。ま、俺が治すんだけどね、なんて言ってた」
まったく、何してんだよ。
チーズ味ばっかり、どうすんのか。さっきのスナックなんだが、ずいぶんと買ったわ。その量だって、一人分ならば、なんか多いな。
だめ、あんまり笑うと、なんかよけい。
ティアは、長椅子の端っこ、誰もいないのに、そんなとこに座ってた。
お弁当、あんなに作ったのに、残ったじゃないの。もう前か、忙しかったみたいで、まったく食べなかったのを、そんなに大変なの?とか、笑ってた。でも、じつは、激ギレ、してたのよ。
ほんと、ごめんね。
その辺には、患者さんとか普通にいるの。
もう、一人になんないと、まずいわ。
まさか、気づかなかった。
見られてたのか、ユミリアだった。
やっと、口を開くのだ。
「もう、無理しないでよ、とか言ってもね、なんか、聞かなかったわ。あんなで済んだのも、あなたのお蔭なんだし、感謝だってしてるの」
ユミリアが無理をしてると、よく分かった。
だって、そう。実の兄妹なんだ。
けっこうな、間があった。
「どうも」
途切れた。言葉が出ない。
「ありがとう」
それは、言葉にならない。
あえて、言おうとした。なのに、それが。
まさか、完全に取り壊すなんて、生徒どころか、先生の方も驚くのだ。
あの校舎は、すっかりと無くなって、単に、更地となった。被害にも合わなかった、他の校舎と、プレハブの仮校舎とで、意外にも再スタート。
ティアは、授業とか、研究などの、魔法を使うものは止められたが、病院の方で、日常生活なんかは大丈夫だと、太鼓判をもらった。
授業で使う資料なんかは、研究室の近くの倉庫にあったので、消失したのがあった。
また、最初から作るので、ティアも手伝った。
以前のように、ティアは、生徒なんかとも、普通にやってはいた。
いつもなら、外で買ったりするが、お昼になっても、ティアは、出かけもしなかった。
搬入の都合もあって、研究対象とかの魔装具だとかは、裏門側の校舎、そっちの倉庫にあった。
あの研究室とは、反対なので、運もよかった。
この時間なら、誰もいなかった。
ティアは、そんな倉庫内を見てまわる。
やっと、止まった。
この魔法学校で、昔からあった。あの年代物のブレスレットが、宝石箱の中、他の魔装具なんかと、しまってあった。
あ、意外にも、分かるもんで。
これには、発動条件があった。
えっと、本人の意思か。
何が、発動したのか。
涙が落ちて、消えたのが、分かった。
安堵なのか、それとも。
ティアは、 ずっと泣いてた。
ひとつ、浮かんだ。あ、クビかも。
やっぱりか、そんな言葉も出たのだが、小型の魔獣出現やら、魔法学校の件など、何かの関連性のようなものを、疑いたくもなる事件があったせいで、それの出現場所というのが、神殿だと判明もすると、自然、そんな言葉が出た。
ルカ神殿は、現在、あのタマが暮らしてる、自宅でもあったが、それは、タマ側の認識でしかなくって、神殿としては、きちんと祀ってるらしかった。
タマには、その自覚がなかった。
問題なのは、出現したのが、どうも、打止めっぽいな、これで、という点か。
わりと、ボス感?もあった。
助かったのは、ボス感があり過ぎたのか、なんとかして欲しいとか、そんな空気さえなかった。
もちろん、医者から止められてるのは、学校側だって、診断書付きで知っている。
それでも、ティアは、来てしまった。
まだ続くのか、そんな気にもなった。
ルカ神殿は、午前中だと、開運の御祈祷なんかが受けられるので、往来も多かった。
もし、何かあれば、あの時など、比ではないのかも知れない。
なのに、何も出来ない。
まさか、あれを倒せるとも、思ってないが。
「うるさいっのお、おう、ティア、元気か?」
タマは、欠伸なんかしてる。騒ぎなど、平気なのか。
「タマ、大丈夫?」
「もうな、首だよ」
タマは、笑ってもいた。
「ちょっと、大丈夫なの、どこよ?」
「なんか、寝違えたわ」
タマは、どうも、辛いのか、わりと擦ってた。
「ねえ、まだ、寝てたわけ?」
ティアは、こんな騒ぎのなか、拍子抜けなのだ。
「まあな、さすがに、起きたわ。なあ、次の奴、教えてくれって。前の奴は、練習したかんな。見とけよ」
タマは、言いながらも、ちらっと見て、術を放ってたが、あんな大魔法など、いつ教えたか。
ラスボス?は、あっさりと、倒れもするが、もう逆に悲鳴とかも上がってた。
「筋力なんか、今は、こんなもんだけどよ。見つけたわ、魔力だよ。だって、俺、ドラゴンだもんな。最大量なんて、もうヤバいんだぞ、ま、次は、加減しとくか」
めずらしく、タマは、空気をよめた。
「やばい、こっち、怪我人いるぞ」
「おい、誰が、やったんだ?」
「えっと、それなんですけど、あの、」
魔法学校。なんか、戻るかな。
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