令和・退魔侍録~失業一歩手前になった俺の前に天使の生まれ変わりの女の子が現れて、その子の侍になりました~

陰猫(改)

文字の大きさ
5 / 7
幕間【それぞれの日々】

幕間『炒飯の極意』

しおりを挟む
 翌日、光癒と沙織里が学校へと出掛けている間、風馬は中華の満腹亭の台所へと立たされていた。

「光癒の侍って事は俺の侍みたいなモンだろ?──てか、光癒が卒業するまでは俺が主君代理になるんだ。ここでの仕事も覚えて貰うぜ」
「・・・いや、俺は自炊とか出来なくて」
「なんでぇ。頼りねえな・・・よっしゃあ!
 俺が風馬の兄ちゃんがひとりでも食って行けるように鍛えてやる!」

 そう言って天月三平に料理を教わりながら風馬は1日を過ごす。

「おわっと!?」
「火にビビるな!中華は火と共にあるんだ!」
「・・・うっす」
「気のねえ返事すんじゃねえ!腹から声出せ!侍が怪異と戦うのと同じで厨房は戦場なんだ!」
「うっす!」

 気合いを入れ直された風馬は手始めに三平から炒飯の作り方を教わる事になる。

「まずは基本的中の基本である玉子と米を使った炒飯だ。まず、卵を割って、しっかりとかき混ぜろ!」
「うっす!」
「溶いたら中華鍋に投入して予め用意した白米を投入して水気を飛ばしながら中華鍋をコントロールしろ!
 中華鍋は侍で言う刀だ!己の目を養い、見極めろ!」
「うっす!解りました!」

 風馬は初めての中華鍋と火加減のコントロールにやや苦戦するも持ち前の技量ですぐに慣れて行く。

「初めてにしては飲み込みが早いな!
 だが、まだまだ爪が甘い!
 次は調味料だ!持っている玉杓子でテンポ良く入れろ!
 調味料の量は舌と経験で覚えろ!」
「うっす!」

 中華鍋の下から吹き上がる火で汗を垂らしながら風馬は勘と舌を頼りに調味料を加え、更に炒めつつ、かき混ぜる。
 そして、頃合いを見計らって出来上がった炒飯を皿に移し、しげしげと眺める。

「どうですか、大将?」
「うん。まあ、見極めは良い。はじめてにしては筋も悪くねえ」

 そう言うと三平は蓮華で炒飯を口へと運ぶ。
 そして、ため息を一つ吐く。

「兄ちゃんも食ってみな?」

 そう言われて風馬も炒飯を食べてみる。
 思っていたよりも卵が固い。米はもう少し水気を飛ばして炒めても良いなと思う。
 何よりも一番の印象は味付けである。
 はじめての事で調味料の量が解らなかったのもあり、味付けが自分で思っていたよりも濃い。もう少し薄味にした方が素材の味を活かせていたろう。

「顔を見りゃあ解る。自分でも納得してないんだろ?」

 三平はそう言うと後ろに手を当てながら語る。

「料理の道ってのは侍の剣の道と同じよ。日々の研鑽があって初めて完成する。
 ただ、違うところは目に見えるし、舌で覚えられるって事だ。
 日々、研鑽して舌を極め、極限を追究する。精進しなよ、風馬の兄ちゃん」
「うっす!ありがとうございます!」
「まだ客には提供出来ないが、いつか、お前さんにも厨房に立って貰うぞ」
「うっす!」
「まずは接客からだ!俺に続け!──いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ!」
「もっと腹から声出せ!もう一回!」
「いらっしゃいませえ!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございましたあ!」

 ──こうして、風馬は侍兼料理人見習いとして中華の満腹亭で仕事をする事となるのであった。
 後々、顔写真と共に風馬の事は伍光地区のSNSで取り上げられ、料理人として副業をする侍と呼ばれる事で再び話題になるのだが、それはまた別のお話である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった

竹桜
ファンタジー
 1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。  何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。  2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。  ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。     1周目と2週目で生きていた世界で。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...