AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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血と涙の男

厄介な同期

優心は大学に進学した。
俺は自衛隊へ。

道は、完全に分かれた。

優心の周りには、頭が良くて、将来有望な男たちがいるはずだ。

何も持っていない俺は、死に物狂いで訓練に食らいついた。

元々、運動神経と腕っぷしには自信があった。

射撃訓練と体力訓練では、同期の中でトップの成績を叩き出した。

だが、対人格闘訓練だけは二番止まりだった。

同期の谷風という男。
熊みたいにでかい大男だ。

こいつにだけは勝てる気がしなかった。

谷風は、正義感の塊みたいな男だった。
その性格から、自然と周囲の信頼を集めていった。

だが相変わらず、俺は人付き合いが苦手。

そんな俺に、周りの人間は距離を取っていた。

だが、谷風は違った。

「おい、小野川!また射撃訓練トップだって?すげぇな!!」

何かと距離を詰めてくる。

正直、面倒だった。


ある日、

「女の子に連絡か! 何? 彼女か??」

背後から、ぬっと顔が近づく。

スマホの画面に、でかい影が映る。

「お前! 殺すぞ?!」

反射的に振り向き、声を荒げる。

谷風が、俺の後ろから覗き見していた。

「お! やってみろ!」

ニヤニヤしながら手招きしてくる。

その顔が腹立たしい。

俺はイライラしながらも無視し、スマホに視線を戻す。

優心からのメッセージ。
大学の講義とかサークルでの出来事の話。

他愛も無いやり取りが、俺にとっては大切な時間だった。

「ふむふむ、、、優心ちゃん?は大学生かー」

また覗き見してくる。

「お前!!!」

立ち上がり、谷風に殴りかかる。
だが体をひねられ、拳は空を切る。

「おっと」

余裕の笑み。

「でも心配だなー」

わざとらしく顎を擦りながら言う。

「何がだ?!」

「だって優心ちゃんは大学生だろう??」

「周りには猿みたいな男ばっかりだぞ」


「……」

谷風が目を細める。

「え?まさか付き合ってもないのか?!」

「そろそろ黙らないと、撃ち殺すぞ」

「悪い悪い!」

谷風は降参したように、両手を上に上げる。

「早く伝えたほうがいいぞ!」

そう言い残して、谷風は自分の部屋に戻っていった。

余計なお世話だ。

俺は無言でスマホを見つめていた。

だが俺は内心、かなり不安だった。



「なにあの人ー!顔こわ~」

大学の校門の前。
ざわつく女子大生たちの声。

俺は、ただ一点を見つめていた。

手には、花束。

優心が大学三年生になった頃、俺はやっと決心した。


通り過ぎる学生たちが、ちらちらとこちらを見る。

ヒソヒソ声。

「ちっ……。人が多いな」

小さく舌打ちをすると、さわに周囲がざわつく。

最悪だ、、、、。


「お待たせーー!!」

視線を上げると、優心が小走りで駆けてくる。

なぜだ?緊張してきた。

「あれ?なんでお花?」

久々に会う優心。
時間が止まった気がした。

髪は肩まで伸び、柔らかく揺れている。

服装も大人びていた。

本当に、綺麗だった。

顔が熱くなる。
手の力が抜けた。

ボトッ。

花束が地面に落ちた。

「ん?どうした?」

優心が首を傾げる。

その声で我に返る。

顔が一気に赤くなった。


「え?告白じゃない??」

周りの視線が、こちらに集まる。

「あれ? なんか皆に見られてる」

優心も周りの視線に気づき、顔を赤くした。


この空気、、、、耐えられない、、、。

俺は花束を拾い、

「行くぞ」

優心の体を、ひょいと抱え上げる。

「え??」

驚く声。

そこからはあまり覚えていない。

「ちょ、ちょっと!何?!」

ただ全速力で走った。
風が顔に当たる。

今日の世界は、なんか良い匂いがした。
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