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孤独な王子
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広大な大陸に、一つの緑豊かな国がある。豊富な資源で繁栄していたその国は、近隣諸国から地上の楽園と呼ばれるほど恵まれ、栄華を極めつつあった。
国の中心に建てられた宮殿は、この世の贅を集め尽くしたのではないかと思うほど煌びやかだ。選び抜かれた大理石で作られた柱や床は、眩いばかりの宮殿を鏡のように映している。窓にかけられた深紅のカーテンはビロードで出来ており、それらには金糸で見事な刺繍が施されていた。
宮殿よりも遥かに規模の広い庭園は、豊かな自然がもたらす色とりどりの花々で多い尽くされている。四季によって顔を変える庭園には、他国からの来訪者も感嘆の息を漏らすしかなかった。
そんな庭園の端に、ほとんど人が寄り付かない離宮がある。寄り付かないというよりは、その存在を知る人間が少ないというのが、正しい表現だろう。
宮殿に比べ、規模は遥かに小さかった。こぢんまりと建てられた離宮には、目が眩しくなるような装飾類は一切ない。目を凝らせば様々な場所に施された彫刻類に気がつくだろうが、華やかな宮殿を目にした後では、それがどんなに上品なものであったとしても、印象には残り辛かった。
離宮の主はアダマスという名の青年だ。アダマスは十八年前にこの国の第三王子として生を享け、それ以来この離宮で育ってきた。
本来であれば王の子として二人の兄と同じように宮殿で育ったはずだが、アダマスが宮殿内に足を踏み入れたことはほとんどない。
アダマスの二人の兄は、高貴な血を引く王妃の子であったが、アダマスは王妃の子ではなかった。アダマスの母は諸国を渡り歩く旅の踊り子であり、その美しさを王が見初め、半ば無理やり側室にしたのだ。アダマスを身ごもると第二王妃へ身分を上げたのだが、血を尊ぶこの国では元踊り子という事実が受け入れられず、離宮での暮らしを余儀なくされるしかなかった。
国の中心に建てられた宮殿は、この世の贅を集め尽くしたのではないかと思うほど煌びやかだ。選び抜かれた大理石で作られた柱や床は、眩いばかりの宮殿を鏡のように映している。窓にかけられた深紅のカーテンはビロードで出来ており、それらには金糸で見事な刺繍が施されていた。
宮殿よりも遥かに規模の広い庭園は、豊かな自然がもたらす色とりどりの花々で多い尽くされている。四季によって顔を変える庭園には、他国からの来訪者も感嘆の息を漏らすしかなかった。
そんな庭園の端に、ほとんど人が寄り付かない離宮がある。寄り付かないというよりは、その存在を知る人間が少ないというのが、正しい表現だろう。
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