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第3章 おてんば姫の冒険録
27 最後に笑う者
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♢♢♢
「ティアラ、アデルさんと連絡取れた?」
ティアラがジャイルと共に顔を見せると、セバスと一緒に食事の支度をしていたミハエルが振り返って声をかける。
「うん!なんとアデイラお姉ちゃんと一緒にいたよ」
「アデイラさんと?あの人本当に神出鬼没だよね」
アデイラはいつもどこかを飛び回っており、ひとつの場所で大人しくしていることがない。まさに、神出鬼没の存在だった。
「アデイラお姉ちゃん、ほんっと格好いいよね!憧れちゃう」
うっとりと頬を染めるティアラに呆れた視線を送るメンバーたち。
「カミールは毎回心配して倒れそうになってるけどな」
ジャイルの言葉にエリックも苦笑いを漏らす。
「確かに。産後半年も待たずに冒険者に復帰したときはさすがの私も驚きました」
「あれはカミールお兄様が悪いのよ。アデイラお姉ちゃんを閉じ込めようとするんだもん」
産後ずっと城にいて欲しいと願うカミールのために半年ほど大人しくしていたアデイラだったが、ある日忽然と城から姿を消し大騒ぎになった。
アデイラ曰く、
「体が鈍ったから修行してきた」
らしい。復帰後すぐに上級者向けダンジョンの単独踏破をやってのけたのだ。
オイオイ泣きながら妻の無事を喜ぶカミールの姿に、男たちは皆同情を隠さなかった。なまじ実力があるだけに怖いもの知らずなところが、ティアラを彷彿とさせたからだ。
「自分の知らねぇところで惚れた女が危険な目にあってると思うと気が気じゃねえんだよ」
「アデイラお姉ちゃんぐらい強くても?」
「ああ。お前がどんなに強くても、俺たちが心配なようにな。だからお前も一人でなんでもやろうとするな。俺たちを頼れ。いいな」
「うん。ありがと」
いつになく素直なティアラの言葉に、セバスが眉を上げる。
(おやおや。姫様も、少しは男心が解るようにおなりかな)
「さあさあ、できましたぞ。熱いうちに召し上がってくだされ。遅くなるようでしたらアデル様とアデイラ様の分は残しておきましょうな」
「あ、うん。朝には一緒に戻ってくるって言ってたよ」
「そうですか。では先にいただきましょう。子どもたちもさっきからお腹を空かせていますからね」
「はーい、じゃあ、皆並んで~!」
ミハエルが熱々のシチューを次々に器に注いでいく。いつのまにか復活した大人たちも混じり、皆で舌鼓を打つ。
獣人の皆と一緒に、わいわいと囲む食卓はとても楽しかった。
「こういうのっていいね」
「ああ。いいな」
「皆、いつかはそれぞれの場所に帰るって解ってるけど。こうやって、ずっと皆と一緒にいられたらいいのにね……」
「ああ。そうだな……ずっと、お前のそばにいる」
「ジャイル?」
「お前が望んでくれるなら。俺はずっとそばにいるよ」
「も、もうっ!ジャイルはノイエ国王になるんでしょ!いつまでも冒険者でいられるわけないじゃない」
「お前が王妃になれば問題ないだろ?」
思わずジャイルをまじまじと見つめるティアラ。
「お前、俺たちがなんでこの国に残ったか忘れてない?お前に求婚するためだぞ?」
「そ、それはそうだけど……でもそんなの、子どものころの話だし」
「ずっと現在進行形の話だよ。ばーか」
「ま、また馬鹿って言った!」
「ま、いいけどな。取り敢えず今は世界の危機とやらを解決しに行こうぜ」
「う、うん」
なんだかジャイルの顔が見られなくなってしまう。
「僕だってそばにいるよ」
「きゃっ」
後ろからギュッと抱き締められてびっくりして振り向くと、ミハエルが頬を膨らませていた。
「たくっ!油断も隙もないなっ!いい、ティアラ。ジャイルはムッツリだから簡単に二人になっちゃ駄目だからね」
「おいこら、お前こそ離せ。勝手に抱き付いてるんじゃねえぞ?」
ジャイルの言葉をまるっきり無視するミハエル。
「ティアラ、僕一杯働いて疲れちゃった。あっちで回復魔法かけて?」
甘えた顔でお願いされると弱い。
「あ、うん、いいよ。ミハエル、お疲れ様」
「疲れてんならポーション飲めよっ!ポーション!一杯あるだろ!」
ポーションを投げて寄越すジャイルにそのまま投げ返すミハエル。
「絶対に嫌だっ!ティアラのかけてくれる回復魔法じゃないとぼくのこの疲れは癒せないっ!」
ギャーギャー言い合いを始めた二人をオロオロと見守るティアラ。
すると今度は、肩にそっと上着を掛けられる。
「ティアラ、そろそろ冷えてきたので火のそばにいらっしゃい。一緒にお茶を飲みませんか?」
「あ、エリック!どうしよう二人が……」
「ふふ。ただの兄弟喧嘩ですよ。仲の良い証拠です」
「そ、そうかな」
「たまには二人にして上げましょう」
「う、うん」
ティアラがエリックと去っていった後も、
「うわぁぁぁ!お前のせいでエリックに持っていかれただろう!何してるんだ!」
「うるさいよ!ジャイルだって容赦しないからね!」
相変わらず仲の良い双子なのだった。
「ティアラ、アデルさんと連絡取れた?」
ティアラがジャイルと共に顔を見せると、セバスと一緒に食事の支度をしていたミハエルが振り返って声をかける。
「うん!なんとアデイラお姉ちゃんと一緒にいたよ」
「アデイラさんと?あの人本当に神出鬼没だよね」
アデイラはいつもどこかを飛び回っており、ひとつの場所で大人しくしていることがない。まさに、神出鬼没の存在だった。
「アデイラお姉ちゃん、ほんっと格好いいよね!憧れちゃう」
うっとりと頬を染めるティアラに呆れた視線を送るメンバーたち。
「カミールは毎回心配して倒れそうになってるけどな」
ジャイルの言葉にエリックも苦笑いを漏らす。
「確かに。産後半年も待たずに冒険者に復帰したときはさすがの私も驚きました」
「あれはカミールお兄様が悪いのよ。アデイラお姉ちゃんを閉じ込めようとするんだもん」
産後ずっと城にいて欲しいと願うカミールのために半年ほど大人しくしていたアデイラだったが、ある日忽然と城から姿を消し大騒ぎになった。
アデイラ曰く、
「体が鈍ったから修行してきた」
らしい。復帰後すぐに上級者向けダンジョンの単独踏破をやってのけたのだ。
オイオイ泣きながら妻の無事を喜ぶカミールの姿に、男たちは皆同情を隠さなかった。なまじ実力があるだけに怖いもの知らずなところが、ティアラを彷彿とさせたからだ。
「自分の知らねぇところで惚れた女が危険な目にあってると思うと気が気じゃねえんだよ」
「アデイラお姉ちゃんぐらい強くても?」
「ああ。お前がどんなに強くても、俺たちが心配なようにな。だからお前も一人でなんでもやろうとするな。俺たちを頼れ。いいな」
「うん。ありがと」
いつになく素直なティアラの言葉に、セバスが眉を上げる。
(おやおや。姫様も、少しは男心が解るようにおなりかな)
「さあさあ、できましたぞ。熱いうちに召し上がってくだされ。遅くなるようでしたらアデル様とアデイラ様の分は残しておきましょうな」
「あ、うん。朝には一緒に戻ってくるって言ってたよ」
「そうですか。では先にいただきましょう。子どもたちもさっきからお腹を空かせていますからね」
「はーい、じゃあ、皆並んで~!」
ミハエルが熱々のシチューを次々に器に注いでいく。いつのまにか復活した大人たちも混じり、皆で舌鼓を打つ。
獣人の皆と一緒に、わいわいと囲む食卓はとても楽しかった。
「こういうのっていいね」
「ああ。いいな」
「皆、いつかはそれぞれの場所に帰るって解ってるけど。こうやって、ずっと皆と一緒にいられたらいいのにね……」
「ああ。そうだな……ずっと、お前のそばにいる」
「ジャイル?」
「お前が望んでくれるなら。俺はずっとそばにいるよ」
「も、もうっ!ジャイルはノイエ国王になるんでしょ!いつまでも冒険者でいられるわけないじゃない」
「お前が王妃になれば問題ないだろ?」
思わずジャイルをまじまじと見つめるティアラ。
「お前、俺たちがなんでこの国に残ったか忘れてない?お前に求婚するためだぞ?」
「そ、それはそうだけど……でもそんなの、子どものころの話だし」
「ずっと現在進行形の話だよ。ばーか」
「ま、また馬鹿って言った!」
「ま、いいけどな。取り敢えず今は世界の危機とやらを解決しに行こうぜ」
「う、うん」
なんだかジャイルの顔が見られなくなってしまう。
「僕だってそばにいるよ」
「きゃっ」
後ろからギュッと抱き締められてびっくりして振り向くと、ミハエルが頬を膨らませていた。
「たくっ!油断も隙もないなっ!いい、ティアラ。ジャイルはムッツリだから簡単に二人になっちゃ駄目だからね」
「おいこら、お前こそ離せ。勝手に抱き付いてるんじゃねえぞ?」
ジャイルの言葉をまるっきり無視するミハエル。
「ティアラ、僕一杯働いて疲れちゃった。あっちで回復魔法かけて?」
甘えた顔でお願いされると弱い。
「あ、うん、いいよ。ミハエル、お疲れ様」
「疲れてんならポーション飲めよっ!ポーション!一杯あるだろ!」
ポーションを投げて寄越すジャイルにそのまま投げ返すミハエル。
「絶対に嫌だっ!ティアラのかけてくれる回復魔法じゃないとぼくのこの疲れは癒せないっ!」
ギャーギャー言い合いを始めた二人をオロオロと見守るティアラ。
すると今度は、肩にそっと上着を掛けられる。
「ティアラ、そろそろ冷えてきたので火のそばにいらっしゃい。一緒にお茶を飲みませんか?」
「あ、エリック!どうしよう二人が……」
「ふふ。ただの兄弟喧嘩ですよ。仲の良い証拠です」
「そ、そうかな」
「たまには二人にして上げましょう」
「う、うん」
ティアラがエリックと去っていった後も、
「うわぁぁぁ!お前のせいでエリックに持っていかれただろう!何してるんだ!」
「うるさいよ!ジャイルだって容赦しないからね!」
相変わらず仲の良い双子なのだった。
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