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3 ベッドの上の攻防戦!?

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 ◇◇◇

 ―――それから30分後、私はジークとベッドの上で激しい攻防戦を繰り広げていた。

「協力してくれるって言ったのは誰だったかな~?」

 にっこりと微笑みながら私が顔を近付けると、

「それとこれとは話が違いますっ!」

 と真っ赤になって必死の抵抗を見せるジーク。普通逆じゃない?まぁ、そんなところも可愛いけど。

「わかった。じゃあひとまずキスは諦めましょう。キスがだめなら首筋に痕なんてどう?」

 ジークの隙を突いてベッドに押し倒したまでは良かったが、あえなく抵抗されてキスのひとつも出来やしない。それって成人男子としてどうよ?しょうがないので偽装工作で手を打つことにする。

「く、く、首筋ってどこでそんなことをっ!!!」

「あらやだ。貴族以上に平民は進んでるのよ。以前通ってた学校では経験済みの子たちの武勇伝なんて聞き飽きるくらい聞いてるわ」

「ま、まさかソフィア様……」

「安心して!私にはジークだけよ。ジーク以外には手だって握らせたことないわ」

「そ、そうですか……」

 ほっとしたように呟くジークにニヤニヤが止まらない。これはっ!?いけるんじゃないかしら?

「ねーえ、我慢しなくていいのよ?ジークさえ良ければ私の何もかもを捧げたって構わないのよ?」

 そっと胸元を押さえてチラリと見つめると、ジークはますます赤くなる。あらやだ、面白い。新しい趣味に目覚めそう。

「……あなたって人はっ!」

 口元を押さえてがばりと起き上がったジークに次の瞬間押し倒される。あれ、いつの間にか形勢逆転……

「男を甘くみてると痛い目に合いますよ……」

 ジークの目は確かに怒りを含んでいたのだけど。その底に隠しきれない独占欲がチラホラと顔をのぞかせる。何百回と言い続けてきた愛の言葉は無駄ではなかったらしい。

「もう一回聞くね?私が他の男に嫁いで、ジークは本当に平気なの?私のこと、なんとも思ってない?誤魔化さずに教えてよ」

「私はっ……」

「ねえジーク、何がだめなの?私が駄目な理由を教えてよ」

「ソフィア様に悪いところなどございません……悪いのは全て私です。私は、ソフィア様と結婚なんてできないのです……」

「どうして?」

「それは……」

 何かに耐えるように唇を噛み締めるジークはひどく苦しそうで。好きな人にそんな顔をさせたいわけじゃないので今日は許してあげることにした。

「ジークの意気地なし。そこは普通、『サー!イエッサー!』一択でしょっ!」

 プンッと横を向くとジークは困ったように頭を撫でてきた。まるっきりの子ども扱いに嫌な顔をする私をみて思わず吹き出す様子もちょっと可愛い。

「ソフィア様のことは、大切に思っていますよ。私なりにね……」

 ◇◇◇

「穏便に婚約破棄を申し出るためには、暗に私に深い仲の男性がいることを匂わせたらいいんじゃないかと思うのよ」

 あらためて婚約回避の方法について語り合う私達。

「そんなことをなさったらソフィア様の評判が地に落ちてしまいますよ!」

 私の言葉を真っ青になって否定するジーク。まぁ、確かに貴族令嬢としての評判は地に落ちるだろうが、そもそも貴族に嫁ぐ気などないので個人的には全く気にしない。むしろ二度とこんな話がこないように、ここぞとばかりにアピールしたいぐらいだ。

「あくまでもさりげなーくするのよ。こう、滲み出る大人の階段登っちゃってます感はなかなか隠せるもんじゃないでしょ?仮にも高位貴族が、成り上がりの身持ちの悪い女に興味を持つかしら?」

「それはっ……そうかもしれませんが……」

「恋愛は自由でいいと思うし、心の底から想い合ってるなら愛し合うのは素敵だわ。でも、そうしたことを気にする方も多いでしょう?」

 この国では未だに女性の処女性を神聖視する習慣がある。そしてそれは王族や高位貴族ほど厳しく求められるものだとか。だとすれば『身持ちの悪い身分の低い女』など、嫁にする気はしないだろう。

「とにかく!私は反対ですっ!どうせなら旦那様に働きかける方が確実です!」

 ジークの言葉に小さく頷く。

「そもそもなんでお父様がこんな話を持ってきたのか謎なのよねぇ?」

「旦那様であれば伯爵家の内情をご存知のはず。何か余程の事情があるのでは……」

「うーん、お父様に確認を取る前に動き出すのは賢明とは言えない……かな?」

「そうですよ。まずは旦那様にお話を聞くのが先決です。そもそもお手紙にはなんと書かれていたのですか?」

「んー、今度の休みの日に見合いをするから帰ってこいって」

「今度の休みと言うと……」

「そう。明日。だから今すぐ抱いてって言ったじゃない。情事の痕跡を残しておけば手っ取り早く断れるでしょ?」

「!!!!!!!!!」

 声にならない叫びを上げるジークもちょっと面白いなと思う私だった。
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