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19 ジークがヤンデレすぎる件

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 ◇◇◇

「ああ、ソフィアに逢いたいな……」

 王宮の一室でなぜかのろけ話を聞かされている俺。
 先ほどの質問に、

「天使、天使とは一体誰の……」

 ことでしょう、と言いかけて危うく殺されかけた。マジだった。
 いきなり剣を突きつけられたときは終わったと思った。

「きゃ、キャロル!?いや、アリス?リンゼにミラにライラにジョージー……すみませんっ!わかりません!でも未婚のレディーには誓って手を出してません!」

「それだけ多くのレディの名前が出てきて私の可愛いソフィアが出てこないのはなぜかな?」

 カチャリという無機質な音とともに首筋にひんやりとした剣の冷たさを感じて思わずごくりと唾をのむ。

「そ、ソフィア……というとアルサイダー男爵家のソフィアですか?確かに私の婚約者ではありますが……もしかして、ジークって……」

 恐る恐る尋ねる俺ににっこり微笑むジークハルト殿下。

「初めまして。ソフィア様の専属執事を務めさせていただいています。ジークです」

(やっぱりか~~~~~~!!!ってことはあのバカ、ジークハルト殿下に女装させてたのかっ!いや、確かにこれは似合うけど……似合うけどもっ!!!)

 内心くずおれそうになるものの、相変わらず剣を突きつけられたままなのでひきつった笑いを浮かべるしかなかった。

 ◇◇◇

 そして冒頭ののろけに戻る。

「こんなに長い間逢えないなんて初めてだ。私がいなくて寂しがっていないだろうか……」

(デジャヴ!)

「はぁ、そうですね。学園でも大層寂しがっておりました」

 つい気のない返事をしてしまう。ばかばかしい。なんで2人揃って俺にのろけてんだよ。そんなに逢いてーならさっさと逢いにいけばいい話だ。

「へぇ……学園で……そんなプライベートな話までしてるんだ。ずいぶん仲がいいみたいだね」

 またカチャリと腰の剣に手をかける殿下に真っ青になって慌てて否定する。

「滅相もございません」

(顔がこええよっ!)

 なまじ美形なだけに凄んだときの顔が怖い。一刻も早くここから抜け出したい。

「殿下、そのくらいで勘弁してやってください。彼を婚約者に選んだことは謝りますから」

 そう言って苦笑いしてるのは、何を隠そうアルサイダー男爵ガイルその人だ。何がどうなってるのかさっぱり分からねえ。

「旦那様……ガイル殿は悪くありません。叔父上の言葉を真に受けた父上のしたことですから」

「まぁ、いずれこうなることは分かってましたからね。ただあなた様の出方を伺いたかったのも正直な気持ちではあります」

「結局私がはっきりしなかったせいか……」

 何やら深刻な話をしているようだが関係ないのでぼんやりと壁を見つめる。まぁ、よくわからねーが取りあえずソフィアの言ってたジークが王太子で、やばい奴だということは分かった。正直関わりたくねぇ。

「それでロイスにお願いがあるんだけど」

 突然話を振られてビクッとする。

「はい。何でしょう」

「君、私の手駒になってくれない?」

「はっ……はぁ?」

 思わず間抜けな声が出る。

「本来なら一族郎党皆殺しにしたいところなんだけど……君には利用価値があるようだからね」

 やばいやつに目を付けられてしまった。それだけは理解できた。

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