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9 聖女失格
◇◇◇
「聖女失格、ですか」
あれから十年の月日が流れ、テレサは十七歳になっていた。相変わらず、ありとあらゆる雑用をこなしながら、聖女候補として奉仕活動に勤しむ日々。そろそろ聖女試験があるなぁと思っていた矢先、バルタザールに呼び出され、こう告げられたのだ。
「ああ。上の意向で、お前は聖女試験を受ける資格がないと判断された。この私が自ら、長年お前の教育係として尽くしてきたのに、本当に情けない」
バルタザールはこれ見よがしにため息をついてみせる。
十八歳を迎えた聖女候補は、大神殿で王族や神官達の居並ぶ中、これまでの活動内容や実力を評価され、その功績が認められれば、聖女に認定されることになる。
ただ、聖力を持つこと自体、非常に稀な存在であり、試験はあくまでも形式的なものだ。今まで聖女候補が聖女に認定されなかったケースはほとんど無いと聞いている。そのため、テレサも聖女になることを疑ったことは無かったのだが。
「私の力が及ばず、申し訳ございません」
テレサは素直に頭を下げつつ、しょんぼりとうなだれた。聖女候補の奉仕活動は聖女教育の一環として全て無償奉仕だが、聖女になれば国から莫大な褒賞や支援金などが支払われ、退職した暁には退職金まで貰えると聞いていた。
そのお金を持って、ローレンス領に帰り、家族みんなで幸せに暮らすことを夢見ていたのだが。まさか、試験すら受けさせて貰えないとは、思わなかった。
(一番長く神殿にいたんだけどなぁ……)
誰よりも働いてきた自負はあったけれど、誰からも認められていなかったと言うことなのだろう。
「聖女に選ばれなかった以上、神殿に置いておくことは出来ない。早急に荷物をまとめたら出ていってもらおう。ほら、これは退職金代わりだ」
そう言ってバルタザールが投げてよこしたのは、たった三枚の金貨だった。
◇◇◇
「良かったんですか?」
テレサが部屋を出た後、バルタザール付きの神官がバルタザールの手元をチラリと覗き込む。バルタザールの手には、およそ神官には似つかわしくない、ダイヤの指輪や金の腕輪がギラギラと輝いていた。恐らく一番小さい石のついた指輪一つでも、金貨数千枚はする代物だろう。
テレサが神殿に入ってからと言うもの、神殿には聖女の奇跡の力を求めて、莫大な寄付金や薬代が入るようになった。聖女の薬草園を復活させた立役者として、バルタザールも次期大神官候補として名を挙げている。今では多くの聖女候補たちから、教育係に指名されるようになったぐらいだ。
「ふんっ。聖女に任命されれば今度は私たちがあいつに仕える立場になるんだぞ?今まで散々利用させて貰ったんだ。ここらで追い出しておかないと後が面倒だろう」
「そうですねぇ」
適当な相槌を打つ神官を下がらせ、バルタザールは先ほど公爵家から届いた包を開ける。
中には、眩いばかりの金貨がぎっしりと詰まっていた。
(くくく、ツイてるぞ。まさかアルヴェーン家の令嬢の教育係に指名されるとはな……)
バルタザールの担当している聖女候補は、聖女として非常に優秀らしい。そうした噂を聞きつけ、「優秀な聖女候補」として、聖女になりたい令嬢は後を絶たない。
例え実力が伴っていなくとも。それが何だというのか。どうせ聖女になってしまえば、聖力を使う機会など滅多にないのだ。なんから、最初から聖力がなくても、バレやしないのだ。
(とんだお荷物を押し付けられたと思ったが、本当にいい拾い物をしたものだ)
高笑いをするバルタザール。テレサのお陰で、地位も、名誉も、金も、全てを手に入れた彼だったが、テレサに感謝するという気持ちだけは、微塵も持たないのだった。
「聖女失格、ですか」
あれから十年の月日が流れ、テレサは十七歳になっていた。相変わらず、ありとあらゆる雑用をこなしながら、聖女候補として奉仕活動に勤しむ日々。そろそろ聖女試験があるなぁと思っていた矢先、バルタザールに呼び出され、こう告げられたのだ。
「ああ。上の意向で、お前は聖女試験を受ける資格がないと判断された。この私が自ら、長年お前の教育係として尽くしてきたのに、本当に情けない」
バルタザールはこれ見よがしにため息をついてみせる。
十八歳を迎えた聖女候補は、大神殿で王族や神官達の居並ぶ中、これまでの活動内容や実力を評価され、その功績が認められれば、聖女に認定されることになる。
ただ、聖力を持つこと自体、非常に稀な存在であり、試験はあくまでも形式的なものだ。今まで聖女候補が聖女に認定されなかったケースはほとんど無いと聞いている。そのため、テレサも聖女になることを疑ったことは無かったのだが。
「私の力が及ばず、申し訳ございません」
テレサは素直に頭を下げつつ、しょんぼりとうなだれた。聖女候補の奉仕活動は聖女教育の一環として全て無償奉仕だが、聖女になれば国から莫大な褒賞や支援金などが支払われ、退職した暁には退職金まで貰えると聞いていた。
そのお金を持って、ローレンス領に帰り、家族みんなで幸せに暮らすことを夢見ていたのだが。まさか、試験すら受けさせて貰えないとは、思わなかった。
(一番長く神殿にいたんだけどなぁ……)
誰よりも働いてきた自負はあったけれど、誰からも認められていなかったと言うことなのだろう。
「聖女に選ばれなかった以上、神殿に置いておくことは出来ない。早急に荷物をまとめたら出ていってもらおう。ほら、これは退職金代わりだ」
そう言ってバルタザールが投げてよこしたのは、たった三枚の金貨だった。
◇◇◇
「良かったんですか?」
テレサが部屋を出た後、バルタザール付きの神官がバルタザールの手元をチラリと覗き込む。バルタザールの手には、およそ神官には似つかわしくない、ダイヤの指輪や金の腕輪がギラギラと輝いていた。恐らく一番小さい石のついた指輪一つでも、金貨数千枚はする代物だろう。
テレサが神殿に入ってからと言うもの、神殿には聖女の奇跡の力を求めて、莫大な寄付金や薬代が入るようになった。聖女の薬草園を復活させた立役者として、バルタザールも次期大神官候補として名を挙げている。今では多くの聖女候補たちから、教育係に指名されるようになったぐらいだ。
「ふんっ。聖女に任命されれば今度は私たちがあいつに仕える立場になるんだぞ?今まで散々利用させて貰ったんだ。ここらで追い出しておかないと後が面倒だろう」
「そうですねぇ」
適当な相槌を打つ神官を下がらせ、バルタザールは先ほど公爵家から届いた包を開ける。
中には、眩いばかりの金貨がぎっしりと詰まっていた。
(くくく、ツイてるぞ。まさかアルヴェーン家の令嬢の教育係に指名されるとはな……)
バルタザールの担当している聖女候補は、聖女として非常に優秀らしい。そうした噂を聞きつけ、「優秀な聖女候補」として、聖女になりたい令嬢は後を絶たない。
例え実力が伴っていなくとも。それが何だというのか。どうせ聖女になってしまえば、聖力を使う機会など滅多にないのだ。なんから、最初から聖力がなくても、バレやしないのだ。
(とんだお荷物を押し付けられたと思ったが、本当にいい拾い物をしたものだ)
高笑いをするバルタザール。テレサのお陰で、地位も、名誉も、金も、全てを手に入れた彼だったが、テレサに感謝するという気持ちだけは、微塵も持たないのだった。
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