追放ですか?別に構いませんけど。

しましまにゃんこ

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11 聖剣の勇者

 ◇◇◇

「みなさ~ん、ご飯ができましたよ~」
「お~美味そう!」
「腹減った~」
 テレサの声に、野営の準備をしていた隊員たちが、ぞろぞろと集まってくる。

 騎士団の旅は基本野営だ。馬を疲れさせないために、荷物は最低限しか持たない。食材も現地で調達するため、食事と言えば干し肉を戻したスープだの、野草を煮詰めたスープなど、決して美味しいとは言えない代物ばかりだった。

 しかしテレサは、少し森の中に入っただけで、美味しく食べられる野草やキノコ、果物などを見つけ出し、あっという間に美味しく調理してしまうため、すっかり食事係として隊員たちの胃袋をガッツリ掴んでいた。

「遠征帰りなのに、なんかいつもより体調がいいんだよなぁ」
「俺も俺も。力が漲ってくる感じするよな。今ならワイバーン位一人で狩れそうだぜっ!」
「テレサちゃんの飯のお陰かな。隊長の飯は食えたもんじゃ無いからなぁ」
「うるさい。文句があるなら自分で作れ」
「やめてくださいよ、隊長!マークの飯なんか食った日にゃ、この隊全滅しますよ?」
「違いない!」
 明るい笑いに包まれる一行。食事の時間は和やかに進んでいく。

「それよりも、隊長は結婚しないんですか?もう35歳でしょう?実家がうるさくないですか?」
「女は苦手だ」
「隊長はパーティーとか苦手だからなぁ」
「うちの親も死ぬほど見合い話持って来るんですけど、正直俺も男同士のほうが気楽ですね!」
 騎士団に入るのは貴族の二男や三男が多く、カール自身も、侯爵家の二男だ。実家はすでに長男が継いでいるため、今は気楽な独り身を満喫していた。

「あ、だったら、テレサちゃんなんかどうです?隊長、テレサちゃんにはめちゃくちゃ優しいですよね」
「ばっ!──ぐっ、ゲホッ」
 マークの言葉に、カールは思いっきりむせた。
「ふざけるな!こいつは七歳の頃から知ってるんだぞ!娘みたいなもんだ!」
「な~んだ、俺、てっきり隊長はロリコンだから結婚できないのかと思ってました~」
「──よし、今から稽古をつけてやる」
「冗談!冗談ですって!勘弁してくださいよ~!」
 逃げるマークを皆が笑って見ていたそのとき、

「ヒヒーーーーーーーン!!!」
 夜の闇を切り裂くように、突然鋭い馬のいななきが聞こえた。
「どうした!?」
 慌てて馬を繋いである少し離れた水場に向かう。
 そこには、真っ赤な目をギラギラさせ、よだれを垂らしているサーベルウルフの姿があった。
「サーベルウルフだ……」
「なんで、こんなところに……」
 言葉を失う隊員たち。


(くそっ!まさかサーベルウルフが現れるとはっ!)
 サーベルウルフは、山に住む魔物のなかでも比較的高位の魔物であり、厄介なことに群れで現れることが多い。カールの部隊はマークをはじめ、二十代から三十代の若手騎士が多く、普段はもっと低ランクの魔物を討伐している。サーベルウルフは、この隊にとって、明らかに格上の相手だった。
(こいつだけなら俺だけでいけるが、他に仲間がいたら厄介だぞ……)

 カールはサーベルウルフから慎重に距離を取る。唸り声をあげ、一足飛びでカールに襲いかかるサーベルウルフ。
「こいっ!!!」 
 剣を構えるカール!そして、一閃!
「カールさんっ!!!」
 テレサは思わず指を組み、本気で祈った。
(女神様!!!お願いします!カールさんを助けて!!!)
 途端にカッ!!!っと辺り一面眩い光に包まれる。
「うわっ!眩しい!!!」
「なんだこの光は!!!」
 あまりの眩しさに誰も目を開けていられない。
(クソっ!なんだこの光は!サーベルウルフは……はっ?)

「た、隊長?……」
「サーベルウルフは……」
 ようやく光が収まったあと、恐る恐る目を開く隊員達。するとそこには、真っ二つになったサーベルウルフの姿が。

「うおおおおおおおお!!!」
「隊長マジかっけぇぇぇぇ!!!」
 盛大に盛り上がる隊員たち。
「あ、ああ。みんな無事で良かった……」

 だが、一人カールだけは、腑に落ちない顔をしたままだった。
(まるで切った感じがしなかったんだが……)
 剣を鞘にしまおうとして、ふと違和感に気づく。
 カールが使っているのは、騎士団から支給された、ごくごく一般的な剣。のはずなのだが、磨いたわけでもないのに、かつてなく光り輝いており、その姿は、まるで、王家の宝として飾られている聖剣のような……

「ハハッ……まさかな……」
 カールは首を振って剣を鞘に収めた。
「カールさん……良かった……あ、でも、ねむい……」
「おっと」
 カールは力尽きて眠るテレサを、慣れた手つきでそっと受け止める。
「お休み、テレサ」

 ◇◇◇

「しかし、さっきの光、なんだったんっすかね」
「さぁ?」
 テレサをテントに寝かせたあと、倒したサーベルウルフを手際よく解体しつつ、未だ興奮冷めやらぬ様子の隊員たち。
 実はカールの剣が、国宝以上の聖力を帯びたとんでもない聖剣になっているとは、誰も知る由もなかった。
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