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16 テレサの本領発揮!
◇◇◇
ローレンス領に帰ってきてから、テレサはずっと気になっていた。
(むむむむ、お野菜もお肉も、薬草も足りません!)
カール率いる王国騎士団第二部隊の活躍により、連日魔獣討伐は大成功!お腹を空かせた隊員の皆さんに、たっぷりと美味しいお料理を振る舞いたい。
それに、身体の弱っているお母さまに、胃に優しい食事を作りたい。
レオンだってまだまだ成長期。しっかりとたんぱく質を取らなければ!と思うのだが、現状ローレンス家の家計は火の車だった。
(う~ん、困ったわ。私が持ってるのは金貨三枚だけだし。なるべく栄養のあるお野菜の種と、果物のなる木の苗を買って、薬草は山に行って株ごと採ってくればいいかしら……)
テレサがガラガラの食糧庫の前で頭を悩ませていると、
「お嬢様。門の前に領民の皆さんが来てるんですが、レオン様は今外出されていて。どうしましょう……」
おどおどと、メイドのアンが話しかけてくる。彼女は数少ないローレンス家の使用人の一人で、この春孤児を出たばかり。
本来なら彼女のような平民の孤児が、例えメイドであったとしても、貴族のお屋敷で働くなんてありえないのだが、レオンは生き場のないアンを雇って仕事を与えてくれた恩人であり、アンはローレンス家に仕えることを誇りに思っていた。
ただ、突然現れたテレサに対して、どう接していいか分からず、おどおどした態度を取ってしまうアン。けれども、テレサはそんなことはお構いなしに、屈託の無い明るい笑顔を見せる。
「まぁ、領民の皆さんが?何のご用かしら?」
「あ、あの、魔獣を討伐してくれた騎士の皆様に、野菜やお肉を差し上げたいと差し入れに……」
「まぁぁぁぁ!!!食料を!?助かるわぁ」
それを聞いたテレサはパタパタと門に向かって走り出した。
ぽかんとテレサを見送るアン。
(……あれ?貴族のお嬢様って走っていいのかな……はっ!いけない!追いかけなきゃっ!)
「お、お嬢様~!お待ちください!走ると危ないですよ~」
一拍置いて、慌ててテレサの後を追いかけるアン。
◇◇◇
「まぁ、これ、全部いただいてもいいのですか?」
目の前に積まれた食料の前で、テレサは思わず目を輝かせた。小麦に芋、根菜に葉野菜に魚など。それは、収穫量の落ちた領地で、少ない食料の中から領民たち一人一人が持ち寄ってきた、精一杯の感謝の気持ちだった。
「はい。あのう、こんなもんしか無くて申し訳ないけんど」
「精一杯の感謝の気持ちですだ」
「とんでもないですわ!ちょうど今日の昼食のメニューに悩んでいたところなんです。皆様のお心遣いに感謝いたします」
テレサは食料を前に思わず祈った。
「女神様。領民の皆様のお陰で、今日の糧を得ることができました。大地の恵みを感謝致します……」キラキラと振り注ぐ聖力。領民たちは突然祈り出したテレサをぼうっと見つめる。
「あ、ごめんなさい。神殿暮らしが長かったから、嬉しいことがあるとつい、祈っちゃうんです」
えへへっと微笑むテレサを見て、領民たちも自然と笑顔になる。
「あ、そうだ!せっかく皆さんが持ってきてくださった食料ですもの。一緒に召し上がりませんか?私、張り切ってお料理しちゃいます!」
テレサの突然の提案に困惑する領民たち。
「そんな、ご迷惑じゃ……」
けれども、一緒にいた子どもたちがわぁーっと目を輝かせる。
「いいの?」
「何作るの?」
子どもたちに囲まれるテレサ。
「もちろんよ!たくさん作るから、一杯食べてね!」
子どもたちに囲まれて、にこにこと微笑むテレサ。その足元で、声の届く距離で、ふわりと草が芽吹き、花が開く。
先ほどの祈りの言葉が、静かに大地に息づいたのを、誰も気が付かなかった。
ローレンス領に帰ってきてから、テレサはずっと気になっていた。
(むむむむ、お野菜もお肉も、薬草も足りません!)
カール率いる王国騎士団第二部隊の活躍により、連日魔獣討伐は大成功!お腹を空かせた隊員の皆さんに、たっぷりと美味しいお料理を振る舞いたい。
それに、身体の弱っているお母さまに、胃に優しい食事を作りたい。
レオンだってまだまだ成長期。しっかりとたんぱく質を取らなければ!と思うのだが、現状ローレンス家の家計は火の車だった。
(う~ん、困ったわ。私が持ってるのは金貨三枚だけだし。なるべく栄養のあるお野菜の種と、果物のなる木の苗を買って、薬草は山に行って株ごと採ってくればいいかしら……)
テレサがガラガラの食糧庫の前で頭を悩ませていると、
「お嬢様。門の前に領民の皆さんが来てるんですが、レオン様は今外出されていて。どうしましょう……」
おどおどと、メイドのアンが話しかけてくる。彼女は数少ないローレンス家の使用人の一人で、この春孤児を出たばかり。
本来なら彼女のような平民の孤児が、例えメイドであったとしても、貴族のお屋敷で働くなんてありえないのだが、レオンは生き場のないアンを雇って仕事を与えてくれた恩人であり、アンはローレンス家に仕えることを誇りに思っていた。
ただ、突然現れたテレサに対して、どう接していいか分からず、おどおどした態度を取ってしまうアン。けれども、テレサはそんなことはお構いなしに、屈託の無い明るい笑顔を見せる。
「まぁ、領民の皆さんが?何のご用かしら?」
「あ、あの、魔獣を討伐してくれた騎士の皆様に、野菜やお肉を差し上げたいと差し入れに……」
「まぁぁぁぁ!!!食料を!?助かるわぁ」
それを聞いたテレサはパタパタと門に向かって走り出した。
ぽかんとテレサを見送るアン。
(……あれ?貴族のお嬢様って走っていいのかな……はっ!いけない!追いかけなきゃっ!)
「お、お嬢様~!お待ちください!走ると危ないですよ~」
一拍置いて、慌ててテレサの後を追いかけるアン。
◇◇◇
「まぁ、これ、全部いただいてもいいのですか?」
目の前に積まれた食料の前で、テレサは思わず目を輝かせた。小麦に芋、根菜に葉野菜に魚など。それは、収穫量の落ちた領地で、少ない食料の中から領民たち一人一人が持ち寄ってきた、精一杯の感謝の気持ちだった。
「はい。あのう、こんなもんしか無くて申し訳ないけんど」
「精一杯の感謝の気持ちですだ」
「とんでもないですわ!ちょうど今日の昼食のメニューに悩んでいたところなんです。皆様のお心遣いに感謝いたします」
テレサは食料を前に思わず祈った。
「女神様。領民の皆様のお陰で、今日の糧を得ることができました。大地の恵みを感謝致します……」キラキラと振り注ぐ聖力。領民たちは突然祈り出したテレサをぼうっと見つめる。
「あ、ごめんなさい。神殿暮らしが長かったから、嬉しいことがあるとつい、祈っちゃうんです」
えへへっと微笑むテレサを見て、領民たちも自然と笑顔になる。
「あ、そうだ!せっかく皆さんが持ってきてくださった食料ですもの。一緒に召し上がりませんか?私、張り切ってお料理しちゃいます!」
テレサの突然の提案に困惑する領民たち。
「そんな、ご迷惑じゃ……」
けれども、一緒にいた子どもたちがわぁーっと目を輝かせる。
「いいの?」
「何作るの?」
子どもたちに囲まれるテレサ。
「もちろんよ!たくさん作るから、一杯食べてね!」
子どもたちに囲まれて、にこにこと微笑むテレサ。その足元で、声の届く距離で、ふわりと草が芽吹き、花が開く。
先ほどの祈りの言葉が、静かに大地に息づいたのを、誰も気が付かなかった。
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