追放ですか?別に構いませんけど。

しましまにゃんこ

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17 栄養満点!聖女飯


 ◇◇◇

 その日、レオンは金策に走り回っていた。食糧難に悩む領民のために、他領から食糧を輸入するための資金を何とかして工面しようと思うのだが、担保にできるものもなく、銀行からはけんもほろろに追い返された。まだ若く、爵位を継いでないことも、侮られる原因なのだろう。己の無力さが情けなかった。

 疲れ果て、馬車の窓から見るともなく外の景色を眺めるレオン。そのとき、思わず目を疑う光景が飛び込んできた。
「!!!馬車を止めてくれ!」
 道端に馬車を停め、飛び降りるレオン。
「……嘘だろう……」
 そこにあったのは、黄金色に色付いた見渡す限りの小麦畑だった。

 ◇◇◇

「ハイどうぞ~。まだまだおかわりありますよ~」
 その頃テレサはせっせとスープを配っていた。領民たちの持ってきた食材で、具材たっぷりのスープと香ばしく焼けたパンを作り、後はそれぞれが肉や魚を焼いていくスタイルだ。討伐を終えた腹ペコの騎士団員たちも加わって、神殿の炊き出しのような賑やかさとなっていた。

「アン、あなたも遠慮せずに食べてね」
「えっ、そう言うわけには……」
「ほら、早く食べないとなくなっちゃうわよ」
 テレサは料理を配るのを手伝っていたアンにも、たっぷりのスープを取り分ける。
「あ、ありがとうございます……」
 アンはスープを受け取ると、スプーンですくって一口食べる。ホロホロと口の中でとろける野菜。優しくて、どこか懐かしいその味に、思わずほろりと涙がこぼれた。

「えっ!?急かしてごめんなさい。熱かったかしら……」
 おろおろするテレサにブンブンと首を振る。
「ち、違うんです!あの、あまりにおいしくて……」
 胸のなかに染み込むような、優しい、優しい味。まるで、心の中の悪いものが、全て洗い流されていくような、不思議な感覚に、アンは震えていた。
(ああ、私、変だ。変なんだけど、どうしよう。涙が止まらない……)
 気がつけば、そこかしこで、ポロポロと泣きながらスープを食べる人たち。それは、強制デトックスとも言える、作用だった。

「えっ……も、もしかして美味しく無いですか……」
 真っ青になるテレサの肩に、カールがポンッっと手を置く。
「いや、本当にうまいんだよ。ほら、見てみろよ。皆毒気の抜けたいい顔してるだろ?」
 泣き笑いでスープをうまいうまいと食べる領民たち。食べたあとは、不思議と心が軽くなっているのだった。

「カールさんも、美味しいですか?」
 真剣に見つめてくるテレサに、くすりと笑うカール。
「ああ。王都に戻ったら、毎日テレサの手料理が恋しくなるだろうな」
「えへへへ。じゃあ、王都に戻っても、いつでも遊びに来て下さいね!」
 ほのぼのと微笑み合う二人。そこに、慌てた様子のレオンが駆け込んできた。

「た、大変だっ!……って、何これ!?」
「あ、レオン、お疲れ様~。お昼ご飯まだでしょう?領民の皆さんから沢山食糧を分けていただいてね。今、皆さんをお誘いして一緒にいただいてたの。レオンの分もちゃんと取ってあるから、一緒に食べましょう」
「えっ、食糧を?それってもしかして、今回の突然の豊作のせい?」
「突然の豊作?」
 領民たちは顔を見合わせる。
「枯れたはずの畑に、小麦が成ってるんだよ!あと、果物に野菜も!とにかく、畑がすごいことになってるんだけど!どうなってるの!」

 早口に捲し立てるレオンに、ソワソワと立ち上がる領民たち。まさかそんな。枯れた畑に小麦が?そうは思っても、いてもたってもいられなかった。
「皆、食べてからでいいから、畑の様子を見に行ってみてよ!ほんと、わけわかんない……」
 混乱するレオンに、テレサはそっとスープを手渡す。
「まぁ、取り敢えず落ち着いて。スープでもどう?」
「全くねぇさまは相変わらずのんきなんだから……ってうまっ!何これ、凄く美味いんだけど、なんか、凄く、泣けてくる……何なんだよぉ……」
 テレサは泣き崩れるレオンを見て、そっとカールに視線を送る。
「レオンは疲れてるんだろ。泣かせてやれ」
 ポンッと手を打つテレサ。
「なるほど!皆さん、お疲れだったのですね!えーっと、おかわりは、どうしましょう」
「「「下さい……」」」
「えへ。一杯食べてくださいね!」

 その日、テレサ特製のスープは、大の大人も泣くほど美味いスープとして、騎士団と領民たちに認定されたのであった。実際にはすっきり爽やかになれるデトックス効果で、活力が漲ってくるデバフ付きなのだが。その効果は昼からの収穫時に大いに役立つのであった。
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