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風が止んだことでようやく正面を向くことができる。
ノジアムは目から血の涙を流して、呻き声を上げている。
『うオオオオ…おまエには、わからヌ!』
ノジアムが右手を突き出すと、その右手の先から禍々しい触手が伸び、俺を掴んだ。
「サトル!今助ける!」
ルシアーノが剣を突き立てるが、弾き返される。
「お前がどんな、苦しい、思いをしたか、はわからない!でも!こんなことで、お前の、悔しさがなくなることは、ない、はずだ!」
触手が体を締め上げて呼吸が難しい。
それでも、言葉が通じるならなんとかなるかもしれないから、必死に言葉を続ける。
「一緒に、考えて、やるから!」
レメがノジアムに火炎魔法を放つが、ノジアム周辺に張ってあるバリアに弾かれる。
「ちっ!魔法防御もかなり手強いな!」
次の瞬間神聖魔法の聖なる光がビームのように次々と邪神に向かって放たれる。
ドゥーガルの指揮で一斉放射されたようだ。
こちらはバリアに弾かれることなく、わずかだがダメージを与えている。
わずかに触手の力が緩み、少し呼吸が楽になった。
『いっショに?考エる?いっショに?』
「そうだ!1人で考え込むから、何も解決しないんだ!お前には一緒に考える人が必要だ!」
『いっショいっショいっショいっショいっショ』
ノジアムは壊れたレコードのように、繰り返し同じフレーズを呟く。
説得したつもりが地雷を踏んでしまったのだろうか。
と思っていたその時、触手が体から離れてノジアムの下に戻っていく。
「待て!一旦攻撃やめ!」
ドゥーガルが叫ぶと一斉に攻撃が止み、静寂が神殿を包んだ。
気がつくとあんなにも夥しい数だった獣達が、いつの間にか姿を消している。
目の前のノジアムは『いっショいっショいっショ』と呟きながら、苦しんで立ちながら体をクネクネさせている。
そこで俺はもう一声かけることにした。
「本当は人間のこと、そこまで嫌いじゃないんだろ?」
目の前を向いたノジアムがはっとこちらを向き、目を見開いたかと思うと身体中から光が溢れ出し、次の瞬間光の粒となって爆発した。
あまりの一瞬のことに神殿にいる一同が呆然としている。
全体に指揮を出していたドゥーガルも状況が飲み込めていないようだ。
「サトル…ノジアムと会話してた?」
レメが静寂を破り話しかけてくる。
「うん。なんか声が聞こえてさ…人間不信になっていたみたいだから諭して見たんだ」
「え!?邪神相手に?」
レメが目を見開き驚く。いや俺だって会話が成立するとは思っていなかったさ。
でも、通じたから…ねえ?
にわかに神殿内が「倒したのか?」「爆発した?」「どうなっているんだ?」と騒がしくなってきた。
さっきの話を早速ドゥーガルとルシアーノに共有するレメ。
でも、俺にも今の状況がわからない…。俺にもここであったことを3人に共有するかと歩き出した時。
神殿内に急に一筋の光が差し込んだかと思うと、神殿内全体が明るくなった。
それまで薄ぼんやり仄かに明るかった神殿内がその全貌を表す。
神殿内は明るくなると邪神の住処だったとは思えないほど、細部に渡って細やかな装飾が施され、天井には神々が集う絵が描かれていることがわかる。
元の世界にあったナントカ大聖堂のような神々しさだ。
そして目の前の玉座があった場所の前に、1人の女性が立っていた。
「女神…アルテイシア様!!」
ガバッと神官長が膝をつき、両腕を組む。聖職者達もそれに習う。
その姿を見て、その場にいる全員が同じように膝をついた。
それを見て、俺も同じように慌てて膝をつく。
女神の腕には1人の少年が抱えられていた。その少年は髪は白髪で、肌の色は褐色…え!?あれノジアムなの??
『異世界人サトル殿…よくぞ我が願い叶えてくれました。』
女神は口を開いていないが、直接頭にその声が届く。
「願いとは、なんですか?」
恐る恐る尋ねる。
『我が願い…それは邪神へと堕ちた我が子サピセンを消滅させる、もしくは元の善き神であったときの姿に戻すこと。この世界の理と異なる世界から訪れたあなたならもしかしたら、と思っていました。でも、本当に助かるとは…本当にありがとう。』
本当は自分の子が助かるとは思っていなかったのだろう。女神様は感動しているのか声が震えている。
「アルテイシア様!邪神ノジアムとは、もしかして知恵の神サピセンが堕ちた姿だったのですか?」
すかさずレメが女神に問う。
女神は苦しそうに眉根を寄せると、苦しげにその問いに答える。
『ええ。500年前この地にあったさる大国の男が、我が子より授かった知恵を悪用し、多くの者を死に至らしめました。無邪気なこの子は、その時与えた自分の知恵が恐ろしい結果をもたらしてしまったことに深く後悔したのです。それだけでなく私利私欲のために自分の力を利用した人間が許せなくなったのでしょう。』
「失われた大国アズールか!」
ドゥーガルが小さな声で驚く。
『自らの心を閉じて現実から目を背けた結果、そして人間に全ての責任を擦りつけた結果、あのような邪神に成り果ててしまった。我が子ながら痛々しくてどうにかしたかったのですが、私ではこの子を浄化することは叶わなかった。それをサトル殿がこの子を救い出してくれたのです。』
「今…彼はどうなっているんですか?」
『ただ眠っているだけですよ。もう目覚めるでしょう。』
とその時、抱えられていたサピセンが「んん~」と伸びをして体を起こした。
それに気づいた女神が彼を床に下ろす。
部屋全体を見渡して、俺の姿を見定めたサピセンは見つけるなり俺に駆け寄って抱きついてきた。
「サトル!結婚して!」
ノジアムは目から血の涙を流して、呻き声を上げている。
『うオオオオ…おまエには、わからヌ!』
ノジアムが右手を突き出すと、その右手の先から禍々しい触手が伸び、俺を掴んだ。
「サトル!今助ける!」
ルシアーノが剣を突き立てるが、弾き返される。
「お前がどんな、苦しい、思いをしたか、はわからない!でも!こんなことで、お前の、悔しさがなくなることは、ない、はずだ!」
触手が体を締め上げて呼吸が難しい。
それでも、言葉が通じるならなんとかなるかもしれないから、必死に言葉を続ける。
「一緒に、考えて、やるから!」
レメがノジアムに火炎魔法を放つが、ノジアム周辺に張ってあるバリアに弾かれる。
「ちっ!魔法防御もかなり手強いな!」
次の瞬間神聖魔法の聖なる光がビームのように次々と邪神に向かって放たれる。
ドゥーガルの指揮で一斉放射されたようだ。
こちらはバリアに弾かれることなく、わずかだがダメージを与えている。
わずかに触手の力が緩み、少し呼吸が楽になった。
『いっショに?考エる?いっショに?』
「そうだ!1人で考え込むから、何も解決しないんだ!お前には一緒に考える人が必要だ!」
『いっショいっショいっショいっショいっショ』
ノジアムは壊れたレコードのように、繰り返し同じフレーズを呟く。
説得したつもりが地雷を踏んでしまったのだろうか。
と思っていたその時、触手が体から離れてノジアムの下に戻っていく。
「待て!一旦攻撃やめ!」
ドゥーガルが叫ぶと一斉に攻撃が止み、静寂が神殿を包んだ。
気がつくとあんなにも夥しい数だった獣達が、いつの間にか姿を消している。
目の前のノジアムは『いっショいっショいっショ』と呟きながら、苦しんで立ちながら体をクネクネさせている。
そこで俺はもう一声かけることにした。
「本当は人間のこと、そこまで嫌いじゃないんだろ?」
目の前を向いたノジアムがはっとこちらを向き、目を見開いたかと思うと身体中から光が溢れ出し、次の瞬間光の粒となって爆発した。
あまりの一瞬のことに神殿にいる一同が呆然としている。
全体に指揮を出していたドゥーガルも状況が飲み込めていないようだ。
「サトル…ノジアムと会話してた?」
レメが静寂を破り話しかけてくる。
「うん。なんか声が聞こえてさ…人間不信になっていたみたいだから諭して見たんだ」
「え!?邪神相手に?」
レメが目を見開き驚く。いや俺だって会話が成立するとは思っていなかったさ。
でも、通じたから…ねえ?
にわかに神殿内が「倒したのか?」「爆発した?」「どうなっているんだ?」と騒がしくなってきた。
さっきの話を早速ドゥーガルとルシアーノに共有するレメ。
でも、俺にも今の状況がわからない…。俺にもここであったことを3人に共有するかと歩き出した時。
神殿内に急に一筋の光が差し込んだかと思うと、神殿内全体が明るくなった。
それまで薄ぼんやり仄かに明るかった神殿内がその全貌を表す。
神殿内は明るくなると邪神の住処だったとは思えないほど、細部に渡って細やかな装飾が施され、天井には神々が集う絵が描かれていることがわかる。
元の世界にあったナントカ大聖堂のような神々しさだ。
そして目の前の玉座があった場所の前に、1人の女性が立っていた。
「女神…アルテイシア様!!」
ガバッと神官長が膝をつき、両腕を組む。聖職者達もそれに習う。
その姿を見て、その場にいる全員が同じように膝をついた。
それを見て、俺も同じように慌てて膝をつく。
女神の腕には1人の少年が抱えられていた。その少年は髪は白髪で、肌の色は褐色…え!?あれノジアムなの??
『異世界人サトル殿…よくぞ我が願い叶えてくれました。』
女神は口を開いていないが、直接頭にその声が届く。
「願いとは、なんですか?」
恐る恐る尋ねる。
『我が願い…それは邪神へと堕ちた我が子サピセンを消滅させる、もしくは元の善き神であったときの姿に戻すこと。この世界の理と異なる世界から訪れたあなたならもしかしたら、と思っていました。でも、本当に助かるとは…本当にありがとう。』
本当は自分の子が助かるとは思っていなかったのだろう。女神様は感動しているのか声が震えている。
「アルテイシア様!邪神ノジアムとは、もしかして知恵の神サピセンが堕ちた姿だったのですか?」
すかさずレメが女神に問う。
女神は苦しそうに眉根を寄せると、苦しげにその問いに答える。
『ええ。500年前この地にあったさる大国の男が、我が子より授かった知恵を悪用し、多くの者を死に至らしめました。無邪気なこの子は、その時与えた自分の知恵が恐ろしい結果をもたらしてしまったことに深く後悔したのです。それだけでなく私利私欲のために自分の力を利用した人間が許せなくなったのでしょう。』
「失われた大国アズールか!」
ドゥーガルが小さな声で驚く。
『自らの心を閉じて現実から目を背けた結果、そして人間に全ての責任を擦りつけた結果、あのような邪神に成り果ててしまった。我が子ながら痛々しくてどうにかしたかったのですが、私ではこの子を浄化することは叶わなかった。それをサトル殿がこの子を救い出してくれたのです。』
「今…彼はどうなっているんですか?」
『ただ眠っているだけですよ。もう目覚めるでしょう。』
とその時、抱えられていたサピセンが「んん~」と伸びをして体を起こした。
それに気づいた女神が彼を床に下ろす。
部屋全体を見渡して、俺の姿を見定めたサピセンは見つけるなり俺に駆け寄って抱きついてきた。
「サトル!結婚して!」
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