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『異世界人サトル殿。教会で話をする前にあなたと話す必要があると思い、会いにきました。』
突然の女神様の来訪に腰を抜かしそうになる。
テントに帰ったら、女神様がいました。なんて誰にも想像できないだろ?
『突然きてしまってごめんなさい。でも、どうしてもあなたには話しておかないとと思って。』
「な、何もお構いできませんが、とりあえずこちらにお座りください。」
1つしかない椅子に女神様に座っていただき、お茶の用意をする。
『まず今回のこと。本当にありがとうございました。我が子のこと、本当はもう諦めていたの。』
女神様がポツポツと話す。俺は入れた紅茶をテーブルに置き、自分はベッドに腰掛ける。
「諦めていた、んですか?」
『ええ。もう500年。どんな手を打ってもあの子の心には届かなかった。それでも元に戻れたのは、あなたの率直な言葉だったのね。神である私自身が奇跡を見た気がしたわ。』
人間に裏切られて500年。彼はずっと後悔と恨みの気持ちに支配されて苦しんできた。そんな彼を救ってあげたいという気持ちに嘘はない。でも自分の言葉が通じたのはたまたまだ。そこまで強い意志でやったというわけではない。
「ただの偶然ですよ。たまたまサピセン様の声が聞こえていたというだけで。」
『人間がそれが聞こえたということ自体がすでに奇跡なのよ。あなたがしたことは本当にすごいことなの。それでね。私はあなたが本当に願うことを叶えてあげたい。元の世界に帰りたくはない?』
女神様の突然の申し出に俺ははっとした。
この世界にきてカリトゥス領の会計を改善したり、邪神討伐に参加したり色々あったが、最初は元の世界に戻りたいという気持ちが強かったことを今更ながら思い出す。
『本人に言っちゃいけない決まりなんだけど、特別に教えるわ。あなたは本当はあの世界でかなり悲惨な目に会う運命だったの。会社の同僚に監禁された上に餓死する運命だった。そういう悲惨な目に遭う運命を持った者にだけ、世界を超えた転送が許されているの。』
衝撃の事実だった。なんで俺?監禁されて餓死?なんという死に様だ。
突然の女神様の衝撃告白に目眩が起きそうになった。
「えっ!なんで俺なんですか?というか誰ですか?監禁したやつは?」
『ん~とちょっとうろ覚えなんだけど、サエキ?とかいう人よ。』
女神様が顎に人差し指を当てながら、答える。
っていうか佐伯?ええ~?
佐伯はうちの会社の営業部でもエースと呼ばれている若手イケメンで、社内の女子の大半が彼のファンとも言われている人物だ。
そもそも佐伯とは接点自体ないのに、どうして?
「ええ~!?佐伯ですか?なんでですか?」
『そこまではわからないわよ…。ただあなた、あの会社のほとんどの男から狙われていたわよ?気づいてなかったの?』
またまた衝撃発言が飛び出てきた。俺は元の世界でも貞操が危うかったのか…。
「そ、そうなんですか…」
自分の今の立場はこの世界に来たからこその異常事態であって、決して元の俺には男を誘う魅力なんてない。そう思っていた。いや今でもそう思っているが、元の世界に戻ってもこの立場に変わりはないのか…。
悲惨な目に会うことがわかっているのに、帰りたいとは言いにくいな…。
『こんな話を聞いたら不安になるでしょうね。そこで、元の世界に戻るというなら悲惨な目に会うことを回避できるようにあなたの元いた世界の神にお願いしておくわよ。』
「え?いいんですか?」
『我が子を救ってくれたあなたにはそれでも足りないくらいよ。ただ、本音をいうとあなたにはこの世界にいてほしいとも思っているわ。あなたの周りの人たちは心からあなたを愛しているから』
女神様が俺のことを考えてあれこれと手を尽くしてくれようとしているのがわかる。
でも、俺の中ではすでに結論は決まっている。意を決して口を開いた。
「結論はもう出ています。元の世界にいても俺は孤独でした…。自分が殻をかぶってしまったことも大きいのでしょう。それでも元の世界では色々なしがらみがありすぎて、もう俺は身動きが取れなくなっていました。」
元の世界では家族はもういなかったけど、生活するには十分な稼ぎがあって、楽しみもほどほどにあった。でも、自分の本心を話したり話してくれる友人はいなかった。物は溢れていたが、数字ばかり眺める孤独な…生活だった。
「この世界の人たちは必死に生きていて、素直で、ちょっと強引で…でも俺には思ったことをなんでも話してくれる人たちばかりです。俺はあの人たちと暮らして…自分にできることを返していきたい。」
静かに頷きながら俺の話を聞いてくれた女神様は、俺がそう言い終えるとすっと立ち上がり俺の頭を撫でた。
『あなたの気持ち、よくわかりました。そしてサトルがこの世界に残る意思があると聞いて安心したわ。あなたが彼らにどのように関わっていくのか、私は見守っていくことにしましょう。』
女神様と話をして、俺はようやく自分の気持ちと向き合えた気がする。これまでもやもやしていた気持ちが整理できて、なんでも受け入れられるような気がしてきた。
「女神様、ありがとうございます。ようやく俺も自分の気持ちが固まってきたみたいです。」
『それはよかったわ。ではサトル、また教会でお会いしましょう』
女神様が微笑みながら消えていく。女神様は俺の気持ちを確かめるためにわざわざここにきてくれたのかもしれない。きっとこのまま託宣が行われたとしても、素直に受け入れられていただろうか。
そう思うと、女神様の深い心遣いに感謝の念が湧き出てくる。
俺は女神様が消えた場所に対して一礼して、ベッドに入った。
突然の女神様の来訪に腰を抜かしそうになる。
テントに帰ったら、女神様がいました。なんて誰にも想像できないだろ?
『突然きてしまってごめんなさい。でも、どうしてもあなたには話しておかないとと思って。』
「な、何もお構いできませんが、とりあえずこちらにお座りください。」
1つしかない椅子に女神様に座っていただき、お茶の用意をする。
『まず今回のこと。本当にありがとうございました。我が子のこと、本当はもう諦めていたの。』
女神様がポツポツと話す。俺は入れた紅茶をテーブルに置き、自分はベッドに腰掛ける。
「諦めていた、んですか?」
『ええ。もう500年。どんな手を打ってもあの子の心には届かなかった。それでも元に戻れたのは、あなたの率直な言葉だったのね。神である私自身が奇跡を見た気がしたわ。』
人間に裏切られて500年。彼はずっと後悔と恨みの気持ちに支配されて苦しんできた。そんな彼を救ってあげたいという気持ちに嘘はない。でも自分の言葉が通じたのはたまたまだ。そこまで強い意志でやったというわけではない。
「ただの偶然ですよ。たまたまサピセン様の声が聞こえていたというだけで。」
『人間がそれが聞こえたということ自体がすでに奇跡なのよ。あなたがしたことは本当にすごいことなの。それでね。私はあなたが本当に願うことを叶えてあげたい。元の世界に帰りたくはない?』
女神様の突然の申し出に俺ははっとした。
この世界にきてカリトゥス領の会計を改善したり、邪神討伐に参加したり色々あったが、最初は元の世界に戻りたいという気持ちが強かったことを今更ながら思い出す。
『本人に言っちゃいけない決まりなんだけど、特別に教えるわ。あなたは本当はあの世界でかなり悲惨な目に会う運命だったの。会社の同僚に監禁された上に餓死する運命だった。そういう悲惨な目に遭う運命を持った者にだけ、世界を超えた転送が許されているの。』
衝撃の事実だった。なんで俺?監禁されて餓死?なんという死に様だ。
突然の女神様の衝撃告白に目眩が起きそうになった。
「えっ!なんで俺なんですか?というか誰ですか?監禁したやつは?」
『ん~とちょっとうろ覚えなんだけど、サエキ?とかいう人よ。』
女神様が顎に人差し指を当てながら、答える。
っていうか佐伯?ええ~?
佐伯はうちの会社の営業部でもエースと呼ばれている若手イケメンで、社内の女子の大半が彼のファンとも言われている人物だ。
そもそも佐伯とは接点自体ないのに、どうして?
「ええ~!?佐伯ですか?なんでですか?」
『そこまではわからないわよ…。ただあなた、あの会社のほとんどの男から狙われていたわよ?気づいてなかったの?』
またまた衝撃発言が飛び出てきた。俺は元の世界でも貞操が危うかったのか…。
「そ、そうなんですか…」
自分の今の立場はこの世界に来たからこその異常事態であって、決して元の俺には男を誘う魅力なんてない。そう思っていた。いや今でもそう思っているが、元の世界に戻ってもこの立場に変わりはないのか…。
悲惨な目に会うことがわかっているのに、帰りたいとは言いにくいな…。
『こんな話を聞いたら不安になるでしょうね。そこで、元の世界に戻るというなら悲惨な目に会うことを回避できるようにあなたの元いた世界の神にお願いしておくわよ。』
「え?いいんですか?」
『我が子を救ってくれたあなたにはそれでも足りないくらいよ。ただ、本音をいうとあなたにはこの世界にいてほしいとも思っているわ。あなたの周りの人たちは心からあなたを愛しているから』
女神様が俺のことを考えてあれこれと手を尽くしてくれようとしているのがわかる。
でも、俺の中ではすでに結論は決まっている。意を決して口を開いた。
「結論はもう出ています。元の世界にいても俺は孤独でした…。自分が殻をかぶってしまったことも大きいのでしょう。それでも元の世界では色々なしがらみがありすぎて、もう俺は身動きが取れなくなっていました。」
元の世界では家族はもういなかったけど、生活するには十分な稼ぎがあって、楽しみもほどほどにあった。でも、自分の本心を話したり話してくれる友人はいなかった。物は溢れていたが、数字ばかり眺める孤独な…生活だった。
「この世界の人たちは必死に生きていて、素直で、ちょっと強引で…でも俺には思ったことをなんでも話してくれる人たちばかりです。俺はあの人たちと暮らして…自分にできることを返していきたい。」
静かに頷きながら俺の話を聞いてくれた女神様は、俺がそう言い終えるとすっと立ち上がり俺の頭を撫でた。
『あなたの気持ち、よくわかりました。そしてサトルがこの世界に残る意思があると聞いて安心したわ。あなたが彼らにどのように関わっていくのか、私は見守っていくことにしましょう。』
女神様と話をして、俺はようやく自分の気持ちと向き合えた気がする。これまでもやもやしていた気持ちが整理できて、なんでも受け入れられるような気がしてきた。
「女神様、ありがとうございます。ようやく俺も自分の気持ちが固まってきたみたいです。」
『それはよかったわ。ではサトル、また教会でお会いしましょう』
女神様が微笑みながら消えていく。女神様は俺の気持ちを確かめるためにわざわざここにきてくれたのかもしれない。きっとこのまま託宣が行われたとしても、素直に受け入れられていただろうか。
そう思うと、女神様の深い心遣いに感謝の念が湧き出てくる。
俺は女神様が消えた場所に対して一礼して、ベッドに入った。
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