笑って下さい、シンデレラ

椿

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笑って下さい、シンデレラ1

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好きな人がいる。
小学生の頃からずっと、変わらず想い続けている相手だ。

掬った端からサラサラと滑り落ちてしまいそうに繊細な髪。涼やかな目元とスッと通った鼻筋、血色の良い魅惑的な唇、そしてそれぞれが完璧に配置されている小さな顔。
『その人』は、世界中のどんな宝石の輝きも霞むくらいにとても美しい見た目をしていて、映画やドラマでいったら画面の端に移り込めるかどうかも怪しいモブ確定な僕なんかとは、明らかに住む世界の違う人間だ。

そんな僕が『その人』に告白をして…ましてや付き合おうだなんてことを想像することすら烏滸がましい。ずっとずっとそう思っていた。…思っていた、だけだった。
だけど、高校2年生も終わりかけの冬の日。ふと、約1年後には恐らく…いやほぼ確実に、互いに顔も見ないような関係になってしまうんだろうな…、とそんな当たり前の事実を唐突に自覚した僕は、約10年間温め続けたこの想いを自分の中だけで消してしまうのが何だか勿体無くなって。
普段見ない朝のニュースで星座占いがたまたま一位だったり、ラッキーアイテムが『カボチャ』で、その時の朝食もたまたまカボチャのスープだったり、とそんな偶然にも何となく背中を押されて。

一体どこにそんな勢いがあったのか、僕は気が付けば無計画に『彼』へと自分の気持ちを伝えてしまっていた。
当然玉砕覚悟の告白だ。というかその結果しか考えていなかった。自分の中でこの気持ちにケリをつけるために、僕は自分勝手に彼を利用するつもりでいたのだ。

しかし、「好きです!付き合ってください!」という告白のお手本をなぞったような僕の言葉に返ってきたのは、

「…別にいいけど」

──そんな、奇跡を越えてもはや幻想にも思える承諾の呟きだった。






世界が、輝いて見える…。

朝。起床直後のベッドの中で僕は数度目を擦る。
一体何なんだ、この昨日より明らかに彩度が増した空間は。遮光カーテンから漏れ出る朝日のせいか?それとも起きたばかりでまだ明るさになれない目が原因?大穴で、寝ている間に壁紙が一段階明るい色に貼り変えられたとか?

否!否、否、否!!

真冬の朝恒例の「あ~~まだ布団から離れたくないよ~~」という羽毛布団への媚び売りもそこそこに、僕は勢いよくベッドから降りてそのまま自身の勉強机へと殆ど飛びつくように駆け寄った。
机の上には、開け広げられた状態の大学ノート。その一面には太い油性ペンで大きくこう書かれている。

『12月3日、灰被はいかぶり あらた君と付き合うことになった!左の二の腕を確認!』

僕は寒さも忘れ、弾かれたように着込んでいた服を脱ぎ去って自身の二の腕を凝視した。
内側の皮膚が柔らかい所には、複数の赤い痣が出来ている。
それらは昨日、僕の長年の想い人──灰被はいかぶり あらた君と付き合えた事実が夢ではないことを確認するために、自分で力いっぱい抓っては「痛いっ!!ってことは現実!?イヤッッホウ!!」という狂気の行動を2,3回繰り返した結果の産物なわけで。
この確認作業をした痣が残っているということは、昨日の事はやっぱり全部夢でも妄想でもないわけで……。

「~~~生きてて良かったあああ!!!」

室内でさえ吐いた息が白く染まる真冬の朝。僕――大路おおじ 真白ましろは、自室の中心にてボクサーパンツ一枚という何とも寒々しい格好で拳を掲げ、抑えきれない喜びを声に出していた。





昨日、新君に告白した直後の僕は、どちらかというと彼と付き合えたことへの驚きが大き過ぎたせいで喜びの感情が少々隠れてしまっていた感があった。しかし今日の僕はその驚愕と夢ではないかという疑心を全て消化し、純粋に幸福と嬉しさだけで構成されていると言っても過言ではない。

つまりどういうことかというと、最高潮に気持ちが舞い上がった浮かれ野郎の誕生というわけである。

僕と新君が、こ、こ、恋人…!!うわああーー!!何度思い返しても本当に夢みたいだ!!
…待って?恋人ってことは、もしかして朝一緒に登校とかしちゃっても許されるんじゃないですか!?新君と一緒に登校!?それなんて高額なオプション!?

ドタバタとかつてない忙しなさで通学準備を済ませる僕に「うるさい!」と母から苦言が飛ぶが、そんなものが絶賛浮かれポンチの僕に響くわけもない。
騒がしいのは認める…、だが止めてくれるな!僕は今日、初めて好きな子と登校を共にすることが出来るかもしれないんだ!

用意された朝食をよく噛まないまま強引に飲み込んで、ご馳走様と同時に家を飛び出す。
扉を開けると襲い来る屋外の突き刺すような冷たさは、真隣の一軒家を見てドキドキと高鳴る心臓と全身を巡る熱に相殺されてすぐに気にならなくなった。

そう。何を隠そう僕と新君はお隣さんで、何なら生まれた時から接点のある幼馴染なのである!…と言っても特別仲が良いとかそんなことは無く。毎月一回程の頻度で母に使いを任されて新君の家へ出向くこともあるけど、その時ですら殆ど会話らしい会話をしたことが無いし、そんな僕が学校内で彼に話しかけるなんて夢のまた夢だし。うん、まっったく仲は良くないな。というかむしろ認識されていさえすれば万々歳というレベルである。
そんな感じで、『灰被新のお隣さん兼幼馴染』というきっと多くの人間が喉から手が出るほど欲しがっているに違いないプレミアもののギフトを全く有効活用できていなかった僕。唯一恩恵を得られているなと感じられることとしては、幼少期から新君に出会えていることと、生活圏内が被るので偶に彼の私生活を垣間見ることが出来ることと、新君の家の匂いを知っていることと……、最上級のご褒美だったわ。恩恵受けまくってたわ。有効活用できてないとかどの口がって感じだわ。
いやしかし!その最上級のご褒美をも超える隣人メリットを僕は今ものすごく実感していた。
よく考えなくてもわかる。家が近いってことはだ、それだけ登下校で一緒に居られる時間が長いってことだろ…?最初から最後まで新君と一緒に居られるんだぞ?え?最高過ぎないか?隣人サイコーーー!!!ヒューーー!!!

昂りが抑えられていないが、これは心の中の叫びなので安心して欲しい。



元々僕と新君は小、中、高と学校が一緒なので、登校距離がほぼ同じということもあって何となく家を出る時間が被っていることが多い。大体は僕が新君の家を通り過ぎたあたりで新君も家から出てきて、僕の10メートルくらい後ろを彼が歩いている感じだ。
今までの僕はその距離感でも「新君と一緒に登校してる!!」と十分幸せな気持ちになれていたものだが、…いよいよ「恋人」という大義名分が出来てしまった!
僕恋人ぞ??彼氏ぞ???これ、夢にまで見た「待ち合わせて一緒に登校」が叶う日が来たんじゃ???よし、そうと決まれば新君の家の前で待ち伏せだー!!

そんなこんなで浮かれに浮かれ、また張り切りに張り切った僕は、母からの騒ぐなコールにもめげずに超特急で朝の準備を済ませ、普段より30分も早く家を出たというわけだった。

流石にこの時間であれば新君もまだ準備中だろう。彼が出てくる前に心の準備と、登校時の会話のシミュレーションを完璧にしておこう。
まだ余裕のある顔で自宅の簡易な門扉を開けていると、

ガチャリ、

隣から聞こえた、玄関扉の開閉音。


まさか!?と咄嗟に顔を向けた先に見えたのは新君、

……ではなく、会社へ出勤しようとする麗しいスーツ姿の美丈夫──新君のお父さんだった。
僕が勢いよく見たために目立ってしまっていたのか、間を置かずお父さんと視線がぶつかる。とりあえず気まずさを誤魔化すためにヘラリとぎこちなく笑って会釈をしてみると、彼も同じように会釈を返してくれた、…のだが、その後忘れ物でも思い出したのかすぐに家の中へと逆戻りしていく。

び、びっくりした。いつもこのくらいの時間に出勤してたのか。

新君のお父さんはあまり無闇矢鱈に愛想を振り撒くような人では無く、常に凛とした姿は正直少し取っ付き難い。だけど流石新君の親御さんというべきか、顔もスタイルもモデルみたいに整っているし、話してみたら意外に冗談を言って笑わせてくれたり、年の功で経験も知識も豊富だったり、と格好良い男性の代表格と言っても過言ではない人だ。
僕の子供の頃からの『こんな風になりたい男ランキング』堂々の一位に輝く相手でもある。
…あと、単純に顔が大人版新君って感じだから目の保養になるんだよなぁ。

流石に新君のお父さんが出て来るかもしれない内に彼らの家の前で待機しているのは申し訳なく、僕が自宅の門扉前で無意味に留まっていると、お父さんはすぐにまた玄関から出て来た。通勤方向なのだろう。こちらに向かってくる姿は姿勢よく、相も変わらず格好良い。
すれ違い際、ペコリとお辞儀をされたのでこちらも慌てて頭を下げて彼を見送る。
無意識に見惚れてしまっていた。ダンディーなオジサマの魅力、恐るべし。中年太りが著しいうちの父親とは大違いである。
少しの間、遠ざかっていくお父さんの後姿をぼーっと眺めてテンションを上げた後、「さて!」と気を取り直して僕は新君の家の前へと歩みを進める。

──と、その時、
隣の玄関扉内からドタンバタンと何かがぶつかり合うような騒がしい音が聞こえて。

直後、

バン!!

「「!!」」

勢いよく扉を開いて出てきたのは、制服のネクタイも締めないまま、どこか焦ったような顔をする新君だった。
咄嗟に視線が合って、両者とも驚きに目を見開く。

新君、今日は早めに出る気だったのか!!あ、あっぶねーー!早い時間に出てきて良かったーー!!

驚きと緊張に心臓をバクバクとさせながらも、僕はすかさず新君の元へと駆け寄って自然に一緒に登校する流れを作りだそうとする。

「お、おはよう!!」
「……はよ」

すぐにこちらから視線を逸らしてネクタイを締め始める新君だったが、僕のどもった挨拶にも小さく返事をしてくれた。

あ、新君と挨拶を交わしてしまった!!恋人すげーー!!

しばらくその事実を噛み締めジ~ンと幸福に浸っていた僕だったが、スタスタと速足で学校へ向かいだした新君に置いて行かれそうになったことで慌てて我に返り、急ぎ彼の背を追った。

シミュレーションが出来なかったせいでこれといった会話が思いつかず、僕は速足で歩く新君に付いて行くのに精いっぱいだ。というか隣を歩けている、それだけで十数年の人生至上一番の喜びである。胸がいっぱいで苦しいよ新君!ありがとう!!
新君はというと、ずっと前髪を触りながら不機嫌そうな顔をしている。上手くセットが決まらなかったのかな?新君ならたとえ寝癖のままの姿だったとしても格好良いのに…。
あ、でもこっち側の手は空いてる。

髪に触れていない、身体の真横に下ろされている自分と近い方の新君の腕を僕は凝視する。

も、ももも、もしかしてこれ、…手とか、繋げちゃうんじゃない!?むしろそういうサインじゃない!?初めての登校デートで手繋げちゃうんじゃない!?

まともに会話も出来ないくせに下心だけは満々である。
僕は制服のスラックスに自分の手の平を数回擦りつけると、汗が出ていないことを確認した震えるそれを新君の方にそろりと伸ばして、

──しかし、指先と指先が皮一枚触れ合うか触れ合わないかというところで、その不埒な動きに気付いた新君によって僕の手は払い退けられた。

「……きゅ、うに、触んな!」
「あ、ごめん…」

一瞬の驚愕の後、怒りを孕んだような表情を向けられて、僕は即座に自身の失態を悟る。

やばい。恋人になれたからって調子に乗り過ぎた。普通に考えてあんまり親しくない奴に急に馴れ馴れしく触られても不快に思うだけだよな。ましてや僕は可愛い女の子なんかでもなく、自他共に認めるモブの、しかも男だし!勘違いも甚だしいぞ僕!!
と、とととにかく、今後新君との接触は禁止だ!!

恐る恐る新君を横目で見ると、彼は再び前髪を興味の対象にしたらしかった。もう俺の事など気にしていられないという風に一生懸命そこを整えている。

た、助かった。恐らく、さっきは手がギリギリ触れていなかったから新君も見逃してくれたんだろう。もし少しでも強引に手を繋ごうとしようものなら「キモ、無理」で一発退場だ。ここでの退場は、スピード破局ということである。イヤッッ!!

血の気の引いた僕が心のメモに「接触禁止」の文字を深々と刻んでいると、不意に進行方向にある曲がり角からジャージ姿の男子高校生が現れた。

よく見るとそのジャージは、僕と新君の高校指定の体操服で。
焦茶色の髪を朝日に煌めかせた彼は、眠そうに欠伸をしながらこちらを一瞥して、すぐに前を向いたかと思うと今度は「えっ!?」と何かに驚きながら勢いよく身体ごと振り返る。
そして次の瞬間、人懐っこそうな顔でにぱっと笑ってこちらに駆け寄ってきた。

「新―!!何お前!今日来んの早くね?あっ、俺と一緒に朝練行きたかったとか~?」
宙太ちゅうた…」

ガシッ!
何の躊躇いも無く新君の肩に腕を回して見せたこの人は、どうやら新君の友達らしい。僕が新君を見る時はいつも新君の姿だけしか目に入っていなかったけど、確かにこんな声の人が新君の周りにいた気も…する。多分。
くっ、やけに簡単に新君の身体に触ってくれるじゃないか…!友人A!別に悔しくなんか無いけどね!?今の僕は新君の恋人ですし!?

心中で強がりながらも歯をギュッと食いしばっていると、友人Aが今気づいたように僕を見る。

「お?どちらさん?新の友達?」

おっと来ましたその質問!聞いて驚け友人A!
何を隠そう僕は──、

「僕はっ、」
「知らね」

意気揚々と自己紹介をするつもりだった僕の言葉は、新君の吐く白い息に巻かれて何も伝えられずに終わった。

「…いや、知らねーって事はないだろ!まあいいけどさぁ。あ、そういや昨日たっつんがー、」

ポカンと固まる僕を置いて、新君と友人Aは仲良く会話をしながら先へと進んで行く。

え?待って?
もしかして友人Aと一緒に登校したいがために、今日は珍しく家を出る時間が早かったの新君??え?そういうこと!?一緒に登校出来るー!とか舞い上がっちゃってたけど、これって新君にとってはとんだ迷惑行動だったってこと!?
お友達に紹介されるどころか、「知らね」って知人ですら無いように言われたし。…多分、僕と一緒に居るのが恥ずかしかったんだろうな。……いや、本気で僕の名前とか知らない可能性も無くはないけど…。どっちにしてもへこむ…。

……まあでも、新君の後ろ姿を見ながら新君の通った道を歩くって、実質一緒に登校してない??してるよね??
というかこの場所までは隣で歩けたわけだし、途中で友人Aに新君が奪い取られてしまったとしてもプラマイプラスで一億点だ。…え?それって最高にハッピーじゃ??最高にハッピーだな!!登校デート!!フゥーーー!!新君の後ろ姿サイコーー!!よっ!!見返り美人!!見返された事は一度もないけどね!!
次からは、ある程度距離をとって後ろから新君を眺める「新君ウォッチング登校デート(架空)」を決行だーい!!

僕は一瞬のショックなどすっかり忘れ去った頭で、いやむしろ当初よりもホクホクと満ち足りた表情をしながら、登校時の注意点を心のメモにしっかりしたためておいた。
ポジティブ?偶に言われる!





「はあ!?灰被新!?
お、おま、告白するって…あの灰被新にだったのかよ!?」
「うん。あはは」

それなりにざわついている朝の教室であるにも関わらず、周囲に配慮してか器用に小声で叫んでみせた僕の親友こと宇海うかい 秀真ほつまは、「あははって…、」と驚きと呆れが半々に混じったような視線で僕を見る。

「…幸せそうにしてるとこあれだけどさ、もしかして知らないのか?…灰被の噂」
「噂?」

首を傾げた僕に、秀真は手を口の側に添えて内緒話をするように少しだけ身を乗り出した。

「…灰被新は、フリーの状態で告白されたら絶対に断らない。…けど、付き合った全員を何故か決まって毎月12日にはフるんだよ。
…1組の木村さん居るだろ?ほら、文化祭のミスコンで優勝した。あの子も少し前に灰被に告って付き合ったらしいけど、それが10日だったせいで例にもれず2日間でお別れ。例えどんなに可愛くても、どんなに性格が良くても、…逆にどんなにおかしな相手でも、12日までの期限はずっと変わらない。

──ついた異名は『100人斬りのシンデレラ』」

随分物騒な異名だな…。というか、シンデレラ?どっちかというと新君は王子様って感じじゃないか?
…まあでも『12』という制限といい、灰被り姫を連想させる姓、シンとも読める名前、そして美しく清らかな外見と高潔な内面…。うん、そう考えてみるとなかなかハマっている気もする…。

流石に話盛ってるだろ!と言いたかったが、秀真の眼は真剣だ。この話は冗談でも何でもないんだろう。
一応僕だって隙あらば新君を見ていたのだから、彼に彼女や彼氏が出来ては別れ、出来ては別れ、を繰り返していたということぐらいは把握していた。それに12日という明確なリミットがあった事についてと、新君が誰の告白であっても受け入れるっていうのは初耳だったけど。

「真白の場合は、今日が4日だから……9日後にフられるわけだけど…」
「フらっ……、因みに今までに例外とかは~…」
「無いな」

微かな期待はバッサリと切り捨てられる。

そうだったのか…。
恋人という肩書きはあるけど、そこに新君の気持ちは欠片も存在していない。期限付きで恋人を作る、なんてどうしてそんな事をしているのかは分からないけど、それなら登校時のほぼ他人に接するような態度も頷ける。

…期限付きか。ショックはショックだけど、まあ僕だし。ダメで元々な感じだったし。仕方ない、よな…。

──でも、


「──でも、あと9日も新君の恋人で居られるのかぁ…」


今の僕は、本来だったら実現できない夢を現実で見させてもらっているようなものだ。
一方通行の恋心。新君はその僕の気持ちを無下にせず、期限付きではあれど真摯に受け入れてくれた。…いや、これが本当に真摯な対応なのかどうかは賛否があるだろうけど。
でも!新君は今朝、僕が隣を歩いて一緒に登校しようとするのをあからさまに拒絶したりはしなかった。本当は友達と一緒に行くつもりだったのに、僕は邪魔に違いなかったのに、「ついてくるな」とか、「隣を歩くな」とか、そんな突き放すような言葉は一言も無かったんだ。
きっとそれは、僕が今新君の恋人だから。
新君は新君なりに、恋人の僕に対して何かしら自分の中の義理を通そうとしてくれているんだと思う。

だったら僕は、遠慮なくそれに甘えさせてもらおうじゃないか。

9日間?充分充分超充分!!
その期間、僕は新君の迷惑にならない程度に、彼との恋人関係を楽しむと決めた!!今決めた!!

秀真は、期待に目を輝かせる僕を半眼で見やりながら、「…まあ、骨は拾ってやるよ」と呆れた口調で呟いた。
もっと応援して!!


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