臨時雇用執事の使用人育成記

椿

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9 2日目

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【2日目】


「……、」

 チュンチュン

 穏やかな鳥の囀りと共に目を開けると、そこには昨日と同じ見慣れない天井。動かした手に触れるシーツの感覚と、マットレスの弾力。

 レイノルドは、ベッドで目を覚ましていた。


 ………、…夢?


「…いや!!んなわけっ!!」


 ガバッ!っと勢いよく飛び起き、レイノルドは素早く身支度を始める。

 昨日、再度外を見ようとしたのは覚えているが、それからの記憶が全くない。勿論自分でベッドまで戻ってきたという認識もなかった。
 執事な俺だから、意識を失ったとしても自分で部屋に戻ってくる可能性がないこともないだろうけど…。

 最初から、レイノルドが深夜に目を覚ました時から夢の中だったのだと決めつけるのは簡単だ。だって眠りについた時と変わらずベッドにいるし、あの控えめで穏やかな性格のスティーフが人を殺すなんて到底考えられないし。
 しかし、レイノルドにはそれがただの夢だと一蹴することは出来なかった。何故ならあまりにも昨夜の記憶はリアルだったから、それに尽きる。肌で感じる深夜の静謐さも、延々と鼓膜を揺らす自身の革靴の音も、暗闇で眼を刺す金の髪も。

 頭ではなく、身体が覚えていた。






「…確かに…、ここだよな…」

 昨夜の記憶で、スティーフらしき人物が居た場所にレイノルドは立っていた。
 もう1人の誰かが最後に横たわっていた地面を確認するが、そこには血液の跡など残ってはいない。他にも特におかしいと思えるようなことはなかった。

 あの時、スティーフに殺された人物の顔を良く見ることが出来なかったが、レイノルドには1人心当たりがあった。心当たりと言っても、そもそもこの屋敷で顔を合わせている人など数えるほどしかいないわけだが。
 そう。殺されたのはきっと、ほぼ庭で生活しているニカさんだ。元は主人を襲った犯罪者とのことだし、そんな彼に対して、主人に仕える使用人スティーフが耐えかねて…という筋書きなら一応納得は出来る。出来る、けど……。

 仲間同士の熾烈な蹴落とし合いは想定していたけど、流石に殺し合いにまで発展するとは思ってなかったんだけど!?も、もしかして、俺も少し間違えば即刻処断される可能性があるってこと!?謝罪は貴様の命でっ!?


「──レイノルドさん?」

「ッッ!?」

 バッ!!と勢いよく背後を振り返ったレイノルドに、先程の声の主──スティーフは驚きに目を見開いて、しかしすぐにその表情を微笑みに変える。

「おはようございます。 こんなところでどうされたんですか?」

 普通だ。

 普通に、昨日と同じかそれ以上に可愛い…じゃなくて、目元に隈はないし、特に寝不足らしき様子も見られない。
 返事をしないままジッ、と顔を見ていたのが悪かったのか、スティーフは居心地悪そうにじわじわと頬を染めていく。

「…レ、レイノルド、さん?」
「あっ、ごめん! ……ちょっと、外の空気が吸いたくなって。 散歩でもしようかなと」
「そうだったんですね。 …ですが、庭にはニカさんがいますから少し心配です。 僕もご一緒していいですか?」

 本当にニカさんは居るのか…?と穿った見方をするレイノルドの前で、微力ながら逃げるお手伝いは出来るかと!と言って張り切るように拳を握ったスティーフ。
 健気な彼の姿に、レイノルドの疑念は根底から大きく揺らいで崩れかける。

 いやーー、明らかにいい人なんだよなーー!
 こんなスティーフが人殺すとかイメージ出来ない!!逆に昨夜のことは全て俺の夢であれと全力で願いたい!!

 内心で騒がしくしながらも、レイノルドはスティーフの提案にのって少しだけ屋敷周辺を歩いた。
 その途中で、ニカが木の上で眠っているのを発見して、あ、生きてた…、と安心すると同時、勝手に想像の中で殺してしまったことを詫びる。目を覚まされると色々面倒なので、心中でひっそりと、ではあったが。


 うーん……。
 …やっぱりあれは、全部俺が見た夢、なのだろうか。




 *

「おはよう…ござい…ます!」
「流れるようにピッキングをするんじゃない」

 もう鍵を開けるのにも手慣れてきて、挨拶をする途中でレイノルドが部屋の扉を開けきると、室内の少し奥側に居たルイス様がその表情を殊更苦く歪ませる。
 対するレイノルドは、ルイス様が話しかけて下さった!とポジティブだ。

「おはようございます、ルイス様。 朝食をお持ちいたしました」
「いらん、出て行け」
「そんなことを仰らずに。 錠剤だけでは味気ないでしょう。 肉と野菜のうまみが溶け込んだこのスープ、頬が落ちる程美味しいですよ?」

 レイノルドが用意したのは、固形物の少ない薄い黄金色のシンプルなスープ、ただ一品だけ。錠剤しか口にしていなかったらしいルイスの身体に配慮しつつ、美味しさも見た目もギリギリまで妥協しない物を…!と考え抜かれたメニューであった。
 食欲がそそられることを期待して、温かな湯気と優しい香りが立ち上るそれを、主人の方向へと手で仰ぐ。しかしそれを見て、ルイスは嫌悪すら混じる表情で咄嗟に鼻を摘んだ。

「っ、やめろ! …何が入っているかわからない、得体の知れないものを食べたいはずがないだろ」
「それは、…私が毒を盛った可能性がある、ということですか?」

 返答の代わりに、無言で鋭い視線を向けられる。
 紛れもない肯定だ。

「…では食べてみましょうか」

 レイノルドはルイスのためのスープをひと匙すくって、そのまま口内を潤わせる。
 直後、唾液と共にその液体が食道を通り抜ける音がして、

「何ともありません。 ただの美味しいスープです」
「今仕掛けたかもしれない」
「それならもう一口、」
「お前が特殊な訓練を受けているかもしれないだろう」

 ええ…、流石に耐毒性は無いけど…。
 レイノルドの戸惑いを正確に察知してか、ルイスは小さく呟く。


「……信じられない」


 何かに怯え、それを精一杯の強がりで覆い隠したようなその声を、レイノルドは聞き逃さなかった。

「食材を無駄にするだけだ。もう作らなくていい」

 フイ、と顔を背け、話は終わりだと言外に示すルイスに、


「――いいえ。

 主人にはいつでも最高の食事を」


 レイノルドは、真剣な表情で告げる。
 ルイスがそれにゆっくりと振り返り、やや面食らったように目を瞬かせたが、レイノルドはその顔を目にする前にはもう既に次の行動へと移っていた。

 スープが上に乗ったカートを、部屋の扉を塞ぐようにして配置し、少し離れた位置にある低めのフラワースタンドを椅子に見立ててレイノルドはそこへと腰掛ける。
 ルイスの部屋の入り口には、即席の簡易ダイニングテーブルが出来上がっていた。

「な…なに、」
「ここで食べます」
「は?」
「いただきます」

 ルイスに食べさせる筈だったスープを飲み、「はい天才。美味すぎる」などと自画自賛したり、食事について親しみやすい口調で話し出したレイノルドに、ルイスは唖然とした顔で酷く困惑する。何でコイツ主人の部屋の前で主人の朝食食べてんの?という当然の反応である。

 しかしレイノルドにとってそれは、ちゃんと理由ありきの行動だった。
 食事をしてもらうことばかりをメインに考えるのではなく、まずは交流を図り、信頼を深める土台作りが大切だと判断したのだ。
 口調も、初対面時の少し気安い感じの敬語を意識するようにした。出来るだけ距離が縮むように、親しみを覚えて貰えるように、畏まった物言いを控えたのだ。本来ならば不敬に当たるそれだが、一般的な対応を続けていてもきっとルイス様へは響かないだろうと、どこか自然に頭の隅で理解出来ていたから。


「そういえば、使用人が夜にもした方が良い業務ってありますか?」
「…、」
「使用人が、夜にもした方が良い業務ってありますか?」
「……、」
「使用人が、」
「聞こえてるんだよあえて反応してないんだよ。 …というか何で主人の部屋の前で主人の朝食を食べている!? 意味が分からなさ過ぎるわ! せめて扉を閉めろ!」
「ただの質問じゃないですか。 美味しいですよ、が作ったルイス様の食事。 一口いかがですか?」

 馴れ馴れしくスプーンを差し出したレイノルドにルイスは一回呆気に取られて、その後すぐ、忌々し気に顔を逸らした。多分、室内に入って来る様子の無いレイノルドに多少警戒を緩めたのだ。その証拠にルイスは、レイノルドが扉を開ける前に見ていたのであろう書類に視線を移している。まだ大部分の意識はこちらへの警戒に向いているようではあったが。

「それで夜は、」
「夜は動くなさっさと寝ろ」

 ルイスは不機嫌そうな態度を隠さず、投げやりに返事をする。それでもレイノルドは、確かな前進を感じて密かに気分を上向かせていた。

 質問内容については、昨夜の出来事について何か知っているのでは?と鎌をかけたつもりだったが、望んだ返答は得られず。ルイスが特別何かを隠している風にも感じ取れなかった。
 うーーん。今のところ、夢じゃない!と断定できる明確な証拠が1つも無いんだよな…。

 その他にもレイノルドは、ルイスに聞きたかったことを投げかける。
 ルイスはそれを嫌そうにしながらも、答えなかったら延々に質問を繰り返されるのでそれも面倒だ、とばかりに渋々会話に応じてくれているようだった。

「ニカさんとは使用人契約をしているんですか?」
「……ニカ?」
「庭にいる首輪をつけた男性です」

 名前を知らなかったのか、レイノルドの言葉で漸く「あぁ…」と小さく納得してから、

「あいつは使用人じゃない。 ただ庭に居付いているだけだ」
「居付いてる……って、危険人物だからということで、ルイス様が首輪の魔法道具で拘束しているんですよね? 屋敷内にも、敷地外にも足を踏み入れられないように」

 何か文句があるのか、とばかりに睨まれて、レイノルドは慌てて首を振る。

「純粋に疑問で。 …そんな素晴らしい道具が作れるんだったら、ここではなく牢屋に彼を閉じ込めておけばいいのに、と思いまして。 何か理由があるんですか?」
「例えあったとして、お前に話す必要性を感じない」

 話したくないことなのか、返答は素っ気ない。

 無理に聞くつもりは無いけど…。拘束しているとはいえ、自分を襲った犯罪者がすぐ近くに居るのは不安じゃないだろうか。もしかして性癖が一致してる…?まあそれは冗談として、

 ──不安に決まっている。
 当たり前だ。近くに居ても離れていても、自分を害する誰かが存在するという事実だけで、完全な心の安寧が得られるはずもない。

 そしてルイス様にとってそれは、ニカさんに対してだけの感情ですらない。

「何であれ、犯罪者を庭に放っているのというのは少々外聞が悪いなと思いまして。 外部に出す気が無いのなら、いっそ庭師として利用すべきかと」

 現状のニカさんは、完全に浮浪者と野生動物のハイブリットって感じだが、身なりを整えて仕事を与えれば見た目だけならまともに見えるだろう。もし今の状態のまま来客に見られでもしたら、流石のレイノルドも上手い言い訳が思いつかない。
 しかしその提案に、ルイスは渋い顔だ。

「…あいつにまともな働きが出来ると思えないが?」

 うーん、あなたの雇っている使用人もそもそもまともに働いていませんでしたけどねー。

「彼がこの屋敷の使用人であるなら、俺が教えます。 囚人の労役と考えれば至極真っ当じゃありませんか? それに、植物との触れ合いは人間の心を穏やかにするものです。 多少は彼の更生にも役立つかもしれません」

 というわけで、彼をこき使ってもいいですよね?
 もっともらしい事を並べ立てたレイノルドだが、つまりはこういうことだ。
 スティーフとレイノルドの2人では屋敷の事をするのに精一杯で、到底庭まで手が回りそうにない。業者に任せるにしても、ニカが庭を徘徊している状態では彼らにも危険が及ぶ可能性があるし。…つまり正直に言って、彼にはレイノルドが管理できる立場で居て欲しかったのだ。

 ルイスは少し考える風にして、

「……勝手にしろ」
「はい、ありがとうございます!」
「働きに見合った給与は出すと伝えておけ」

「エッッ」

 使用人にしようと提案したのはレイノルド自身だが、当然のように無給で働いてもらうつもりでいたため、思わず甲高い驚愕の声が出た。それが分かったのか、ルイスはやや気分を害したように眉を寄せ、

「別の対価を求められても困るからな」
「エッッ!」
「…報酬があった方が業務に責任を持とうとするだろ」
「エッッ!!」
「~~っ、何だ!!」

 再度同じような声を上げたレイノルドに、ルイスは堪らず目を吊り上げて怒鳴る。
 まずいまずい!とすぐに謝罪したレイノルドだが、この話題をまだ終わらせるつもりは無かった。

「囚人に給金を与えるんですか? ルイス様は被害者であるにもかかわらず、既に彼に生活の場(庭)と食糧(侵入する野生動物)を与えているんですから、…それで十分では、」


「立場が報酬を与えない理由にはならない」


 唖然。

 何でもないように言われたその言葉に、レイノルドは開いた口が塞がらない。

 理由になるよ。 理由になるんだ。
 立場は、身分は、張られたレッテルは、それら以外の全てを無視した上で誰かを軽んじていい理由になる。

 ──ただしそれは、ルイス様の前以外の話、なのかもしれない。


「…伝えて、おきます」


 何とか言葉を絞り出して、レイノルドはどうにも逸る自身の鼓動を落ち着けようと、咄嗟にスープへ手を伸ばす。が、いつの間にか中身を全て飲み干してしまっていたらしい。
 スープスプーンがカツン、と皿の底を打った。

 その乾いた音に気付いたルイスは、すかさず指摘する。

「食べ終わったなら出て行け」
「まだ無色透明な部分が残ってますねルイス様からは見えないかもしれませんが」
「雑な嘘を吐くな」

 ちぇ。流石に騙されないか…。

 渋々立ち上がり、しかし出来るだけコミュニケーションを!との思いからいつもの何倍も時間をかけて片付けをしていると、「早くしろ」と苛立ち混じりに急かされた。目敏い。

 そうして、後は扉を閉めて立ち去るだけ、となったところで、

「では、最後にひとつだけ。 スティーフのメイド服はルイス様の趣味ですか?」
「は?」
「いえ、人の趣味趣向は自由なのでそれについて何か言うつもりはありませんが、動きやすさを考えるならばやはり男性用の制服の方が良いと思いまして。 彼はやや小柄とはいえ女性とは骨格が違いますから、服のサイズが微妙に合っていないんです」
「な、」

 怒りか、羞恥か。じわじわと、ルイスの顔が熱を帯びていく。

「しゅ、趣味じゃない!! ……おいその生暖かい目をやめろ!」
「恥ずかしい事じゃないですよ。 でも、ちょっとあからさま過ぎるかも…」
「ふざっ、おま…、ふざけるな!!」
「っく…、すみませ、冗談のっ…つもりで、ふふ、」

 笑いを堪えるレイノルドを見て揶揄われたのだと理解したルイスは、「ぐぬっ…」と恨めしそうに奥歯を噛み締める。しかし両者の間に流れる空気は、決して悪いものではなかった。

「…断じて。 断じて! 俺の趣味ではないが!! …あいつはあの服のままでいい。
 ──見分けがつかないだろう」

 見分け?

 それが何を示しているのかをレイノルドが問う前に、ルイスは続ける。

「サイズの件はランドルフに言え。 オーダーメイドでもなんでも購入すればいい。 金は出す。 さて話は以上だな。 さあ出ろ、今出ろ」
「……はい」

 用途不明な、しかし恐らく護身用なのだろう小型魔法道具を突き付けられたレイノルドは、流石にルイスの本気を察知して降参のポーズをとった。
 これ以上居座るのは無理そうだ。

「ごちそうさまでした。 また昼食もお持ちしますね」

「来なくていい」と食い気味の返事を笑顔でいなしながら、レイノルドは扉が閉まりきる直前にベッドシーツを一本釣りする。
 成功!なんて華麗な釣竿捌き!格好良い!流石執事な俺!

 既に閉じ切った扉から聞こえる驚愕混じりの怒号には、気付かない振りをした。


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