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ロイド・テラフォーラの夢うつつ
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テラフォーラ帝国の第二皇子として生まれたロイドは、生まれた時から高い神聖力を持っていた。幼い頃から不思議な力を持ち、今は神官の立場から帝国に尽くしている。
ある日、ロイドは夢を見た。
――小川のせせらぎが聞こえる
水音に導かれるように歩いていくと、美しい鳥がダンスをするように舞っている。見上げた空にはオーロラが揺れ、ロイドは思わず見惚れていた。
(美しい……夢なのか……?)
どこからか聞こえてくる話し声がする方に目を向けると、先ほどまではなかった森が広がっていた。いつの間にか自分も森の中に立っている。
近くにある木に手を伸ばして蔦をなでると、ブドウのような実がこうべを垂れてきた。食べろと言っているようだ。
断ることが許されないような圧を感じ、恐る恐る一粒を手のひらに乗せる。
どうしていいのかその場に立ち尽くしていると、強くも優しい女性の声がした。
『ロイド、こちらへ来なさい』
清らかな湖の傍らで多くの人が思い思いにリラックスしているようだ。
みんな白い服を着て趣向を凝らした金の装飾を身に着けている。古代の神々のような衣装で、雰囲気からも只者ではない気配だ。
ハーブを持つ女性や寝転びながら歌を歌う男性の近くには動物も多い。体の何倍も立派な角を持つ鹿が寝そべり、額に宝石が埋まっているうさぎが楽しそうに飛び跳ねている。
他にも多くの動物があちこちにいるが、彼らに従属しているようだ。
孔雀が広げた羽を仰いでいる先には、信じられないほど美しい女性がいた。
(……ここは桃源郷なのだろうか)
『ロイド』
声がした方を見ると、サラサラな茶色の髪が地面まで届く、凛々しくも美しい女性がいた。黄金の弓を傍らに、自分を手招きしている。
警戒するべきだと心では思うのに、体は素直にその声に従ってしまう。その場にいる人達の前まで進んだ。
『お前は現存する子孫の中で一番親和力があるから呼んだ。彼女が伝言したいことがあるそうだ。お前から伝えなさい』
『彼女』は先ほどの美しい女性のようだ。彼女が微笑むだけで周囲の蕾が嬉しそうに揺れる。
『カルナに薬草辞典の裏表紙を見るように伝えてね』
にっこり笑った彼女の周りの花が一斉に咲き誇った。花の精なのだろうか?
(あなた達は一体……)
『ここは神々の庭。私はお前の祖先、大地の女神ガイア。テラフォーラ帝国の建国の神だ』
大地の女神の横に、水色のウェーブした髪を持つ女性がやってきた。
『私はアクアリア王国の建国の神、水の女神ネレイアよ。ガイア、いい子孫がいるじゃない。羨ましいわ』
花の精のような女性を取り囲み、女神たちが和やかに談笑している。ロイドはその光景を呆然と見惚れていた。
ロイドの様子を見てにやりと笑ったガイアが、おもむろに片手を上げて指を鳴らす。
『ロイド、ネレイアのいとし子がテラフォーラ帝国にいる。礼を尽くせ』
パチン
「はっ!」
驚いて飛び起きると自室のベッドの上だった。
(……おかしな夢だった。昨日、建国の書を読み過ぎたせいだろうか)
まだ夜明け前のようだが外が白んでいる。……まだもう少し寝れそうだ。
ベッドサイドの水差しに手を伸ばそうとしてはっとする。
手のひらにはブドウが一粒握られていた。
◇ ◇ ◇
ライオネルの朝は早い。
第一騎士団に所属しながら領地運営も学ぶようになり、着々と爵位を持つ準備を始めている。騎士団の鍛錬へ参加できない分、早朝からアーサーを相手に自主練を始めていた。
夜がようやく明けようとする頃、慌ただしく皇族の馬車が出発していくのを目にする。
(は? こんな早朝に? 方向からするにロイド兄上の宮殿からか?)
女性に全く興味がなさそうな人なのに、この時間にこっそり女性を帰したのか?
……いや、それなら皇族とわからない馬車にするはずだ。何かあったんだろうか。
アーサーに目を向けると優秀な彼は頷き、すぐに調査へと向かった。
しばらくして慌てて戻ってきたアーサーが口にしたのは、衝撃的な内容だった。
「何? こんな早朝からカルナの下へ向かっただと!?」
ある日、ロイドは夢を見た。
――小川のせせらぎが聞こえる
水音に導かれるように歩いていくと、美しい鳥がダンスをするように舞っている。見上げた空にはオーロラが揺れ、ロイドは思わず見惚れていた。
(美しい……夢なのか……?)
どこからか聞こえてくる話し声がする方に目を向けると、先ほどまではなかった森が広がっていた。いつの間にか自分も森の中に立っている。
近くにある木に手を伸ばして蔦をなでると、ブドウのような実がこうべを垂れてきた。食べろと言っているようだ。
断ることが許されないような圧を感じ、恐る恐る一粒を手のひらに乗せる。
どうしていいのかその場に立ち尽くしていると、強くも優しい女性の声がした。
『ロイド、こちらへ来なさい』
清らかな湖の傍らで多くの人が思い思いにリラックスしているようだ。
みんな白い服を着て趣向を凝らした金の装飾を身に着けている。古代の神々のような衣装で、雰囲気からも只者ではない気配だ。
ハーブを持つ女性や寝転びながら歌を歌う男性の近くには動物も多い。体の何倍も立派な角を持つ鹿が寝そべり、額に宝石が埋まっているうさぎが楽しそうに飛び跳ねている。
他にも多くの動物があちこちにいるが、彼らに従属しているようだ。
孔雀が広げた羽を仰いでいる先には、信じられないほど美しい女性がいた。
(……ここは桃源郷なのだろうか)
『ロイド』
声がした方を見ると、サラサラな茶色の髪が地面まで届く、凛々しくも美しい女性がいた。黄金の弓を傍らに、自分を手招きしている。
警戒するべきだと心では思うのに、体は素直にその声に従ってしまう。その場にいる人達の前まで進んだ。
『お前は現存する子孫の中で一番親和力があるから呼んだ。彼女が伝言したいことがあるそうだ。お前から伝えなさい』
『彼女』は先ほどの美しい女性のようだ。彼女が微笑むだけで周囲の蕾が嬉しそうに揺れる。
『カルナに薬草辞典の裏表紙を見るように伝えてね』
にっこり笑った彼女の周りの花が一斉に咲き誇った。花の精なのだろうか?
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『ここは神々の庭。私はお前の祖先、大地の女神ガイア。テラフォーラ帝国の建国の神だ』
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『私はアクアリア王国の建国の神、水の女神ネレイアよ。ガイア、いい子孫がいるじゃない。羨ましいわ』
花の精のような女性を取り囲み、女神たちが和やかに談笑している。ロイドはその光景を呆然と見惚れていた。
ロイドの様子を見てにやりと笑ったガイアが、おもむろに片手を上げて指を鳴らす。
『ロイド、ネレイアのいとし子がテラフォーラ帝国にいる。礼を尽くせ』
パチン
「はっ!」
驚いて飛び起きると自室のベッドの上だった。
(……おかしな夢だった。昨日、建国の書を読み過ぎたせいだろうか)
まだ夜明け前のようだが外が白んでいる。……まだもう少し寝れそうだ。
ベッドサイドの水差しに手を伸ばそうとしてはっとする。
手のひらにはブドウが一粒握られていた。
◇ ◇ ◇
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……いや、それなら皇族とわからない馬車にするはずだ。何かあったんだろうか。
アーサーに目を向けると優秀な彼は頷き、すぐに調査へと向かった。
しばらくして慌てて戻ってきたアーサーが口にしたのは、衝撃的な内容だった。
「何? こんな早朝からカルナの下へ向かっただと!?」
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