46 / 71
46.拷…尋問を(ルートヴィヒSide)
しおりを挟む
どうしてこんなことに……?
というか、何が起こっていたんだ?
――私はこの家で死にかけたこともあります。ご存じありませんでしたか?
クラリスの安全を誰よりも願っていたはずなのに、我がレーンクヴィストの屋敷内で命を脅かす事態が起きていたなんて。
カヤはなんて言ってた?
――わたくしっ! メイド長のオパールとやらに聞き捨てならないことを言われたのですが? ……我が主ルートヴィヒ様は王女殿下と結ばれるべき。根暗な奥様をようやく実家が迎えに来たのか、と嘲笑いやがったのですが――
バンっと勢いよく扉を開けた執務室では、マルセロがいた。
「あれ? 今日は奥様と過ごすから仕事はしな――」
「マルセロッ!!! 今すぐ手の空いている私兵を全員連れて来い! 牢の準備をしてから使用人を一人ずつここへ呼べ!」
俺の剣幕にきょとんとしたマルセロだったが、「……承知いたしました」とすぐに出て行った。
*
殺気を放ちながら嘘は許さないと言えば、使用人の誰もが自らの行動を素直に口にした。彼らの言い分は一貫したものだった。
俺とソフィアが恋仲にも関わらず、クラリスが横やりを入れて結婚したから許せない。
悲劇のカップルを添い遂げさせるために、クラリスに嫌がらせをしていたのだと。
一体何の話だ……!?
「ソフィア王女と俺は恋仲でもなんでもない!」
「で、ですが、人気の劇もお二人がモチーフになってますし、小説だって……」
「ルートヴィヒ様と王女様はとても仲がいいと誰もが知っています。だけど、奥様とは口も利かないし……」
ああ、そんな……。
劇? 小説? 王女と騎士団長の物語だろう? なんであれのモデルが俺になるんだ!? 銀髪の美しい王女と赤髪の団長の恋物語だなんてどう見ても俺じゃなく……! くそっ!
ソフィアと特別な仲だと誤解されたのは……。
「あぁ……これは俺の失態だ」
第二魔獣騎士団にソフィアが入ることになった時、俺たちは本当に困った。
国王は腫れ物のように扱うなというが、王女をどうしていいのか接し方を考えあぐね……。だけど、気高く扱いにくいと決めつけていたソフィアは王女と思えないほどフランクだった。
距離感の近さに最初は団員たちの方が恐れ多くて困惑していたが、ソフィアなりに打ち解けようとしているとのだと思い、いつしか受け入れるようになっていた。
男性騎士に飛びついたり腕を取るくらい、性別関係なく騎士仲間であればおかしなことではないと――。
「だけど、俺だけにしていたわけじゃないのに…………いや、俺の脇が甘かったんだ」
まさか、そのせいで誤解を生み、クラリスに実害が及んでいただなんて。せめて、クラリスと婚約した後は接触を控えて欲しいと言うべきだった。
俺がもっともっとクラリスのことをよく観察して気にして話しかけていれば……。
後悔してもしきれないが、今さら悔やんでも過去には戻れない。
それにしても……。
「……なぜ今まで俺の耳に入らなかった? 意図的に報告をさせなかったのか? マルセロ。おまえは知っていたのか?」
「屋敷内のことは何も。街の噂は耳にしてましたが、気にも留めていませんでした。すみません」
「執事。おまえは?」
問い詰めれば、俺がクラリスを想う気持ちは知っていたが、使用人をコントロールできなかったらしい。執事が聞いて呆れる。
「で、ですが、オパールに逆らえる者はこの屋敷におりませんでした……」
「なぜだ? ただのメイド長のオパールになぜ皆が従うんだ?」
使用人たちが揃いも揃って口にしたオパールの存在。メイド長だけあって、その影響力は屋敷の隅々まで及んでおり、クラリスの品質保持費まで使い込んでいたことがわかった。
暴挙の数々に女といえど殴り殺してしまうんじゃないかとマルセロが心配し、今は地下牢へぶち込んである。あいつは最後に拷……尋問をするつもりだ。
ギリッと歯を噛み締めた俺に、執事が恐々と口にした。
「恐れながら……オパールは王家から遣わされた王女様の元侍女です。我々使用人では逆らえませんでした」
というか、何が起こっていたんだ?
――私はこの家で死にかけたこともあります。ご存じありませんでしたか?
クラリスの安全を誰よりも願っていたはずなのに、我がレーンクヴィストの屋敷内で命を脅かす事態が起きていたなんて。
カヤはなんて言ってた?
――わたくしっ! メイド長のオパールとやらに聞き捨てならないことを言われたのですが? ……我が主ルートヴィヒ様は王女殿下と結ばれるべき。根暗な奥様をようやく実家が迎えに来たのか、と嘲笑いやがったのですが――
バンっと勢いよく扉を開けた執務室では、マルセロがいた。
「あれ? 今日は奥様と過ごすから仕事はしな――」
「マルセロッ!!! 今すぐ手の空いている私兵を全員連れて来い! 牢の準備をしてから使用人を一人ずつここへ呼べ!」
俺の剣幕にきょとんとしたマルセロだったが、「……承知いたしました」とすぐに出て行った。
*
殺気を放ちながら嘘は許さないと言えば、使用人の誰もが自らの行動を素直に口にした。彼らの言い分は一貫したものだった。
俺とソフィアが恋仲にも関わらず、クラリスが横やりを入れて結婚したから許せない。
悲劇のカップルを添い遂げさせるために、クラリスに嫌がらせをしていたのだと。
一体何の話だ……!?
「ソフィア王女と俺は恋仲でもなんでもない!」
「で、ですが、人気の劇もお二人がモチーフになってますし、小説だって……」
「ルートヴィヒ様と王女様はとても仲がいいと誰もが知っています。だけど、奥様とは口も利かないし……」
ああ、そんな……。
劇? 小説? 王女と騎士団長の物語だろう? なんであれのモデルが俺になるんだ!? 銀髪の美しい王女と赤髪の団長の恋物語だなんてどう見ても俺じゃなく……! くそっ!
ソフィアと特別な仲だと誤解されたのは……。
「あぁ……これは俺の失態だ」
第二魔獣騎士団にソフィアが入ることになった時、俺たちは本当に困った。
国王は腫れ物のように扱うなというが、王女をどうしていいのか接し方を考えあぐね……。だけど、気高く扱いにくいと決めつけていたソフィアは王女と思えないほどフランクだった。
距離感の近さに最初は団員たちの方が恐れ多くて困惑していたが、ソフィアなりに打ち解けようとしているとのだと思い、いつしか受け入れるようになっていた。
男性騎士に飛びついたり腕を取るくらい、性別関係なく騎士仲間であればおかしなことではないと――。
「だけど、俺だけにしていたわけじゃないのに…………いや、俺の脇が甘かったんだ」
まさか、そのせいで誤解を生み、クラリスに実害が及んでいただなんて。せめて、クラリスと婚約した後は接触を控えて欲しいと言うべきだった。
俺がもっともっとクラリスのことをよく観察して気にして話しかけていれば……。
後悔してもしきれないが、今さら悔やんでも過去には戻れない。
それにしても……。
「……なぜ今まで俺の耳に入らなかった? 意図的に報告をさせなかったのか? マルセロ。おまえは知っていたのか?」
「屋敷内のことは何も。街の噂は耳にしてましたが、気にも留めていませんでした。すみません」
「執事。おまえは?」
問い詰めれば、俺がクラリスを想う気持ちは知っていたが、使用人をコントロールできなかったらしい。執事が聞いて呆れる。
「で、ですが、オパールに逆らえる者はこの屋敷におりませんでした……」
「なぜだ? ただのメイド長のオパールになぜ皆が従うんだ?」
使用人たちが揃いも揃って口にしたオパールの存在。メイド長だけあって、その影響力は屋敷の隅々まで及んでおり、クラリスの品質保持費まで使い込んでいたことがわかった。
暴挙の数々に女といえど殴り殺してしまうんじゃないかとマルセロが心配し、今は地下牢へぶち込んである。あいつは最後に拷……尋問をするつもりだ。
ギリッと歯を噛み締めた俺に、執事が恐々と口にした。
「恐れながら……オパールは王家から遣わされた王女様の元侍女です。我々使用人では逆らえませんでした」
3,386
あなたにおすすめの小説
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者から婚約破棄されたら、王弟殿下に捕まった件
みおな
恋愛
「ルチル、君との婚約を破棄させてもらう」
五年間、婚約者として交流して来た王太子であるランスロットから婚約破棄を告げられたクォーツ公爵家の令嬢であるルチル。
「ランスロットと婚約破棄したって?なら、俺と婚約しよう」
婚約破棄をきっかけに、領地に引きこもる予定だったルチルに、思いがけない婚約の打診が。
のんびり田舎生活をしたいルチルだが・・・
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる