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第四章 異質殺し
4-3 そう! 校外学習!
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「校外学習、ですか?」
魔法教室にて、雪冬くんが立花先生にそのままをオウム返しをした。
「そう! 校外学習!」
立花先生はそう言うと、意気揚々というか、顔にニヤつきを隠せないままに言葉を続ける。
「いやあ、ここを魔法教室と謳っているけれどさ、いまいち学校とか教室っぽいことはしていないなぁ、って最近思ったんだよね。今日も職員会議で今年の校外学習について話し合ったんだけど、養護の僕はどこの校外学習や修学旅行についても参加しなくちゃいけなくてさぁ。
ほら、自分が行きたくもないところに行かなければいけないんだよ? そんなの面倒だしさぁ、なんというか不自由じゃない?
だからこの際、僕が魔法教室のみんなを引率して気晴らしをしてしまえば、それでなんかチャラになるかなってそう思ったんだよね!」
「つまりは巻き添えってことですね……」
雪冬くんは面倒くさそうに溜息を吐いた。
私も彼に同感だ。
……別にいつも家に帰っても無為に時間を過ごすだけで、とても暇ではあるのだけれども、誰かに時間を強要されるのはどことなく嫌な感覚を覚える。それが校外学習というのならばなおさらだ。
明楽くんの方を見ると、そんな私たちとは裏腹に楽しそうな顔をしている。
「いいじゃないすか! ここ最近退屈だったんでそういう刺激のあるやつ、俺は大歓迎ですよ!
ちなみに、どこに行くんすか」
「うーんとね。それはね……」
立花先生はそうして白衣のポケットをまさぐると、数枚のチケットのようなものを出す。
「思い立ったら吉日、ということでみんなの分の遊園地のチケットを買ってきたんだよね。というわけで、校外学習先は遊園地です」
……もうこの時点で買っているということは、参加については強制ということじゃないか。
「あ、そういえば金治くんも水月ちゃんも受験が終わって暇になったから来てくれるって言ってたよ。久々に魔法教室のメンツが全集号って感じでいいよねぇ!」
「え、マジですか。水月先輩も?!」
明楽くんはそれにウキウキとしている様子を見せる。もともと彼は水月先輩のために魔法教室に来ている節があったから、なんとなく察することもある。
それにしても、魔法教室の面々がそろうというのは久しぶりかもしれない。去年の五月ごろから彼らは大学の受験に向けて勉強をして魔法教室には来なかったから。
……それなら、別に行ってもいいかもしれない。特に遊園地というものに興味はないけれど、久々に会える人間がいるならば話は別だ。
別に先輩らのことが特別に感情を抱くほどに好きというわけでもない。なんならフラットな感受性でいつも関わっていたけれども、久しぶりに会えるというのならば、その人がどういう風に変わっているのか、そんなことを知りたくなってくる。
雪冬くんの表情を見る。呆れた顔については変わらないようだったが、それについて拒否を示す姿勢もない。
「よし、反論する人もいなさそうだから、早速今週末に校外学習を決行しようじゃないか! 僕、しおりとか頑張って作るからさ!」
立花先生はこれまで見せたことがないほどにニコニコとしながら私たちにチケットを配る。
……まあ、流されている感は否めないけれど、どうでもいい。
◇
遊園地に行くというのは、今までに経験がない。両親に連れて行ってもらった記憶さえも存在しない。
きっと、去年の今頃であったのならば、葵と行くこともできたのだろうけれども、そんな過去の事ばかりを考えていても仕方がない。
……仕方がない、ってわかっていても自然と考えてしまうのだけど。
「入場料、結構高かったね……」
天音は遊園地当日の入場券をびらびらと遊ばせている。俺はその言葉に肯定した。
高校生という身分であれば、学割なるものも使えたのだろうが、俺たちには今学籍というものが存在しない。天音についてはもとより、俺についてはそもそも通っていた高校の記憶が封印されているわけなので、そもそもその証明ができない。
一応、学生手帳や学生証などについては捨てていなかったから持ち合わせてはいるものの、このような状況で使うのは、どこか詐欺師と似通っているような気がするから使わないでおいた。だから、俺たちの入場料金については普通の大人と何一つ変わらない。
入場口をくぐれば、遊園地のテーマとなっているキャラクターのイラストが描かれた看板があったり、その横に園内の地図を指し示す看板があったり。
とりあえず俺たちは入場口で止まっていても仕方ないということで地図の看板の方まで歩いていく。
遠目に見た看板は詳細な情報が書かれているような雰囲気を感じたが、距離が近づいていくたびに、その看板が掠れていたり、錆びついていたりして読みづらい。
唯一、わかりやすく目につくのは、その遊園地の目玉となっているジェットコースターだったが、正直あまり乗りたくはない。
「──おもしろそう」
天音はそう呟きながら、地図に示されたジェットコースターに指をさす。
「……マジすか?」
「……まじです」
「さいですか……」
俺は溜息を吐いた。彼女はその様子を見てクスクスと笑う。
──きっと、葵と一緒にいれば、こんな感じの反応が返ってきたのかもしれない。
……いいや、それはもう考えない。考えてはいけない。
だから、俺は天音のうきうきしている様子に手を引っ張られながら、そうしてジェットコースターを目指すことになった。
「校外学習、ですか?」
魔法教室にて、雪冬くんが立花先生にそのままをオウム返しをした。
「そう! 校外学習!」
立花先生はそう言うと、意気揚々というか、顔にニヤつきを隠せないままに言葉を続ける。
「いやあ、ここを魔法教室と謳っているけれどさ、いまいち学校とか教室っぽいことはしていないなぁ、って最近思ったんだよね。今日も職員会議で今年の校外学習について話し合ったんだけど、養護の僕はどこの校外学習や修学旅行についても参加しなくちゃいけなくてさぁ。
ほら、自分が行きたくもないところに行かなければいけないんだよ? そんなの面倒だしさぁ、なんというか不自由じゃない?
だからこの際、僕が魔法教室のみんなを引率して気晴らしをしてしまえば、それでなんかチャラになるかなってそう思ったんだよね!」
「つまりは巻き添えってことですね……」
雪冬くんは面倒くさそうに溜息を吐いた。
私も彼に同感だ。
……別にいつも家に帰っても無為に時間を過ごすだけで、とても暇ではあるのだけれども、誰かに時間を強要されるのはどことなく嫌な感覚を覚える。それが校外学習というのならばなおさらだ。
明楽くんの方を見ると、そんな私たちとは裏腹に楽しそうな顔をしている。
「いいじゃないすか! ここ最近退屈だったんでそういう刺激のあるやつ、俺は大歓迎ですよ!
ちなみに、どこに行くんすか」
「うーんとね。それはね……」
立花先生はそうして白衣のポケットをまさぐると、数枚のチケットのようなものを出す。
「思い立ったら吉日、ということでみんなの分の遊園地のチケットを買ってきたんだよね。というわけで、校外学習先は遊園地です」
……もうこの時点で買っているということは、参加については強制ということじゃないか。
「あ、そういえば金治くんも水月ちゃんも受験が終わって暇になったから来てくれるって言ってたよ。久々に魔法教室のメンツが全集号って感じでいいよねぇ!」
「え、マジですか。水月先輩も?!」
明楽くんはそれにウキウキとしている様子を見せる。もともと彼は水月先輩のために魔法教室に来ている節があったから、なんとなく察することもある。
それにしても、魔法教室の面々がそろうというのは久しぶりかもしれない。去年の五月ごろから彼らは大学の受験に向けて勉強をして魔法教室には来なかったから。
……それなら、別に行ってもいいかもしれない。特に遊園地というものに興味はないけれど、久々に会える人間がいるならば話は別だ。
別に先輩らのことが特別に感情を抱くほどに好きというわけでもない。なんならフラットな感受性でいつも関わっていたけれども、久しぶりに会えるというのならば、その人がどういう風に変わっているのか、そんなことを知りたくなってくる。
雪冬くんの表情を見る。呆れた顔については変わらないようだったが、それについて拒否を示す姿勢もない。
「よし、反論する人もいなさそうだから、早速今週末に校外学習を決行しようじゃないか! 僕、しおりとか頑張って作るからさ!」
立花先生はこれまで見せたことがないほどにニコニコとしながら私たちにチケットを配る。
……まあ、流されている感は否めないけれど、どうでもいい。
◇
遊園地に行くというのは、今までに経験がない。両親に連れて行ってもらった記憶さえも存在しない。
きっと、去年の今頃であったのならば、葵と行くこともできたのだろうけれども、そんな過去の事ばかりを考えていても仕方がない。
……仕方がない、ってわかっていても自然と考えてしまうのだけど。
「入場料、結構高かったね……」
天音は遊園地当日の入場券をびらびらと遊ばせている。俺はその言葉に肯定した。
高校生という身分であれば、学割なるものも使えたのだろうが、俺たちには今学籍というものが存在しない。天音についてはもとより、俺についてはそもそも通っていた高校の記憶が封印されているわけなので、そもそもその証明ができない。
一応、学生手帳や学生証などについては捨てていなかったから持ち合わせてはいるものの、このような状況で使うのは、どこか詐欺師と似通っているような気がするから使わないでおいた。だから、俺たちの入場料金については普通の大人と何一つ変わらない。
入場口をくぐれば、遊園地のテーマとなっているキャラクターのイラストが描かれた看板があったり、その横に園内の地図を指し示す看板があったり。
とりあえず俺たちは入場口で止まっていても仕方ないということで地図の看板の方まで歩いていく。
遠目に見た看板は詳細な情報が書かれているような雰囲気を感じたが、距離が近づいていくたびに、その看板が掠れていたり、錆びついていたりして読みづらい。
唯一、わかりやすく目につくのは、その遊園地の目玉となっているジェットコースターだったが、正直あまり乗りたくはない。
「──おもしろそう」
天音はそう呟きながら、地図に示されたジェットコースターに指をさす。
「……マジすか?」
「……まじです」
「さいですか……」
俺は溜息を吐いた。彼女はその様子を見てクスクスと笑う。
──きっと、葵と一緒にいれば、こんな感じの反応が返ってきたのかもしれない。
……いいや、それはもう考えない。考えてはいけない。
だから、俺は天音のうきうきしている様子に手を引っ張られながら、そうしてジェットコースターを目指すことになった。
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