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第2部 成り代わりなんてありえなくない!? 泣く泣く送り出した親友じゃなくて真正のご令嬢は、私のほうでした
その日は突然訪れた
しおりを挟むその日は突然訪れたの!
「私はウィズダム伯爵の使いで参った者。昔この孤児院に託された女児を探している。
彼女はリーズン家の令嬢で、十三年前の国家騒乱の折、身の危険を感じた乳母がここへ預けていくしかなかったのだ。
院長には話を聞いている。君がエミル、そして、君がジューンだね。
そなたらのどちらかがリーズン家の令嬢に間違いあるまい。さて、一体どちらがそうであるか……」
これを待ってたわ! それはわたし! 絶対、わたし!
いつか誰かがわたしを迎えに来る、そう信じてたの!
ついにその時が来たのだわ!
くすっ! 見て、みんなの顔!
「ほらね、ジューン! 言ったでしょう? いつか本当の家族が迎えに来るって。
それが今現実になったのよ!」
「す、すごいわ、エミル……。あなたの言ってたこと、本当だったのね……」
「うそだろ、やったな! でも、マジかよ、信じらんねぇよ!」
「エミルおねぇちゃ、おひめしゃまなの?」
「お姫様じゃなくて、お嬢様なんだって!」
「今まで嘘つき呼ばわりしてごめんな……」
「おとぎ話みたいよ、エミルが本物の貴族様だなんて!」
「あいたっ! ほっぺたつねったら痛い!」
「僕もだ! ゆ、夢じゃないよぉ~!?」
「みんなが驚くのも無理ないわ。だって普通だったらまずありえないことだもの。
だけどわたしは信じてた! この孤児院だけで終える人生じゃないってわかっていたの!」
使者のおじ様と院長様が顔を合わせてなにか話しているわ……。
きっと出発の日を相談しているのね。
「エミル、ジューン、あなたたちはしばらく子どもたちを見ていてちょうだい。私はもう少しこちらの方とお話しますから」
「わかりました、院長様! さ、行くわよ、みんな!」
「はい、院長様」
うふふっ、みんなのわたしを見る目が変わったわ。
今まではどんなにわたしが、いつかわたしを高貴な身分の人か、裕福な商人かが探しに来るといっても、みんなちっとも真剣に聞いていなかった。
でも、これで正真正銘わたしの言っていたことが本当だったということが明らかになったわ。
うふふふっ、ああ、なんていい気分かしら!
***
「さて、それで院長殿、孤児が預けられた記録にはどのように記されておりますかな?」
「ええ、記録はここに。でも、エミルもジューンも、寒い冬の夜、生まれたばかりの赤子の姿でここに託されました。
二人とも髪の色も目の色も同じですし、判別がつきませんわ。
違うといえば、性格は大きく違いますけれど……」
「確かに、二人の印象は全くの真逆のようでしたな。エミルは快活で明るく、ジューンは大人しい」
「ええ。エミルは子どもたちの世話をよくしてくれてとても慕われていますわ。
ジューンは物静かな子ですけれど、聖典をひとりで通読できるほど聡明な子なんですの」
「ほう……。するとエミルの識読や作法のほうはどうです?」
「お世辞にも得意とは言えませんわ。そういうことはジューンのほうが理解が早いですわ」
「なるほど……。実を言うと、ウィズダム伯爵はリーズン家のご令嬢を妻に迎えるおつもりです」
「……えっ、なんですって?」
「騒乱の間、国外へ亡命していたウィズダム家ですが、先の大粛清の後、新しい国王陛下にその影響力を求められ、再びセントライト王国に復籍することになりました。
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「……ということは、エミルかジューンのどちらかが、アーロン・ウィズダム伯爵の伯爵夫人に……」
「人づてにリーズン家の行方を探しつづけていたご母堂様たっての願いなのです」
「ことは重大ですわね……」
「しかし、性格意外に違いのない二人の少女のどちらが令嬢であるか……。それを確かめるすべがない。
それに、実を言うと私は、孤児院で育った娘が伯爵家でやっていけるのかと杞憂もしています」
「ご心配は驚くに値しませんわ……。
どちらかといえば、ジューンのほうが賢く性格も物静かですから、高貴な人々の暮らす環境にも順応できるかもしれません。
エミルは……」
「そういえば、彼女はいつか迎えが来ると妙な自信があったようですが」
「ええ、あの子は物心ついたときからあのようなことを口にする子でした。
貧しい孤児院暮らしの憂さを晴らすために言っているのだと思っていました」
「彼女が夢を抱くに至る記憶や持ち物でも?」
「聞いておりませんわ。あの子がここへやって来たのは赤子の時ですし、その赤子を受け入れた当時の院長はもう他界しましたから」
「でしたら、これはどうにもはっきりはいたしませんな」
しばらくの沈黙の後、使者は言った。
「それでは、ジューンを引き取ろう」
「それがよさそうですわ」
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