見えない想いの行く末

花戸あみ

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side 未優

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 なんだかんだ真紀にうまく丸め込まれて4人で試験終了まで無事勉強が終わった試験休み。その初日、僕は寮の自分の部屋で机に座って寮について考え事をしていた。

 この学園の寮の部屋は生徒会長などの役職についているメンバーなどや、僕より病弱な生徒が使う1人部屋と、多くの生徒が使う2人部屋とに分かれている。
 僕はその中で僕は2人部屋に住んでいる。2人部屋は4畳ほどの共有部分と洗面、風呂があり、そして、各々の部屋があって一室となっている。
 僕の2人部屋は今のところずっと僕だけで、もう一部屋が空室になっている。僕は発作は出るけどそこまで病弱ではないし2人部屋で事足りている。
 
 ちなみに各部屋には緊急連絡用押しボタンが寮監の部屋と、学園の横に地域の医療を担って堂々と建っている聖高峰医療センターの救急センターに連絡が繋がるようになっている。
 なので、部屋で何かあっても手遅れになることは少ないのだ。

 ちょっと考えが膨らみすぎているが、ここの寮はいたれり尽せりなのである。ってなぜこんなことを考えているのは、寮監の牧野先生から、これからその部屋に他の生徒が入居しても良いか?と問い合わせがあったからだ。

 学園の決めることだし僕に打診があったってことは決定だろう。でもこんな時期に生徒でも転校してくるのかな?
 いったい誰が入るんだろう?

 ピンポーン
 そんなとき、部屋のベルが鳴った。ドアスコープを覗くとそこにはいとこの乾将希だった。僕は慌てて、扉を開けた。

「どうしたの?将希くん」
「いきなり悪いな。未優。ちょっと入っても良いか?」
「もちろん。どうぞ、どうぞ。お茶入れるね」
「ありがとうな」
「はい、どうぞ。砂糖は入れる?」

 お気に入りのマグカップにお気に入りの紅茶を入れて将希くんの前に出した。

「ありがとう、砂糖は1本くれるか?」
「うん。どうぞ」

 スティックシュガーを将希くんに渡す。長身イケメンなのにまさかの甘党で、ドリンクには砂糖が欠かせないのが将希くんなのだ。きっとスティックシュガー1本では足りないはず。我慢しているんだって思ったら、10歳年上だけど可愛いなって密かに思っている。って僕も蜂蜜を入れていたりするんだけどね。

「牧野から聞いたんだが、同室者が入るらしいな」
「うん、僕にもそう打診があったよ」
「大丈夫か?」
「何が?」
「今まで同室者なんていなかっただろ?」
「でも、ここしか空いてないのじゃないの?」
「いや、1人部屋が空いているらしい」
「そうなんだ~。でも、大丈夫だよ。きっと」

 紅茶で口を湿らせた将希くんは僕が思ってもいないことを言った。

「それが、朝比奈でもか?」
「ゲホ、ゲホ、ごめんなさい、気管に入った。ゲホ、ゲホ」

 だめだ、このまま発作が出る。

「すまない。未優、飲み物を口にしてる時に言った俺が悪い」
「ヒュー、ゴホゴホ、ゲホゲホゲホ」
「未優!しっかりしろ!!!未優!緊急連絡するからな」

 朝比奈くんと同室?そんなことがある?そんなことって……。
 
 将希くんの僕への言葉を遠くで聞きながら僕の意識は遠のいて言った。
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