見えない想いの行く末

花戸あみ

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side 未優

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 見慣れた天井と窓からの景色。
 いつもの4人部屋には僕しかいないのかそこを1人で使っている。ここでも、寮を1人で使っているのを表しているのかと、自虐ネタのように考えたりしている。
 
 人間って手に入りそうで手に入らなかったものに対して、いつまでも引きずることがある。まさしく僕はそれだった。昨日入院しなければ、朝比奈くんと同室になれたかもしれないのに。これは僕が悪いのに、胸の中に黒いモヤモヤが溜まる感じがするのだ。でも、誰のせいでもなく自分のせいだと理解している僕もいる。

ーコンコンコン

 ドアのノックが響いた。

「はい、どうぞ」
「ヤッホー、元気にしてる?」
「真紀、来てくれたの?嬉しい~」
「元気そうだね。良かったよ」
「うん、発作もそんなにひどくなかったんだよ」
「そうなんだ、でも良かった」
「真紀、あの……、朝比奈くんには……」
「会ったよ、早速さっきね。未優に会いたかったみたいだし、心配していたよ。なんてったって関根の首絞めてたよ」
「首?」
「そそ、なんで黙ってた~、みたいな感じに首もとの襟を締め上げていたよ」
「そんな、そんなことがあったなんて」
「ねえ、朝比奈ってだいぶん未優のこと好きじゃない」
「そんなこと……あのね……」

 僕は我慢ができなくて夕べの出来ごとを真紀に告げていた。

「え~、じゃあ、同じ部屋だったのに1人部屋に決まったってこと?何それ~!!!」
「真紀、声が大きいよ」
「だって、乾先生のせいじゃん。もう、なんか怒りが湧いてくる~」
「将希くんも悪気があったわけじゃないからね」
「ねえ真紀、乾先生にも相談していたの?」
「そんなことしてないよ」

 体の前で思いっきり両手を振った。

「じゃ、先生知ってたんだね~。だから心配したんだね」
「うん、そうだと思う。だから僕は何も言えない……」
「そうだよね~。うん、僕ももう何にも言えないね」

 なんだかしんみりしてしまったけれど、いつもの元気な真紀が雰囲気を変えてくれて、明るい気分で面会の時間を終えることができた。
 やっぱり真紀はすごい。真紀と友達になれて本当に良かった。
 僕も前向きに頑張ってみようかな?
 告白できなくても、僕から話しかけてみよう!僕も前向きにいかなくちゃ。

 あれから退院してその日の夕食の時間。食事に行こうと食堂に向かっていると、前を1人で歩く朝比奈くんを見つけた。話しかけよう!そう思った時だった、朝比奈くんの携帯に連絡が入り話始めた。
 また、改めようと思った時、朝比奈くんお声が聞こえた。

「どうした華?何かあったか?」

 僕の呼吸が止まった。華って誰?
 噂の彼女?
 やっぱり僕には話しかける勇気が持てない。
 でも、こんなにモヤモヤするなら、聞いてしまいたい。そう思う僕もいた。
 朝比奈くんが好きすぎて本当のことを知るのが怖すぎる。怖すぎるんだ……。
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