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三章【変わる世界】
九話
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佐々斬は、招き入れた帝と向きあっていた。
帝はいつもの話題に心を踊らせている。
さしだした菓子にも茶にも口をつけず、扇子を広げて恍惚と語り続ける。
「あやつの望む鬼憑きを育てられれば、朕はあやつの愛を手にする事ができるでの」
「はっ、分かっておりまする。しかし泰正殿にはもう可能性はないのでは?」
「何をいっておる。英心がやつを愛することなどあるものか」
「……されど、夫婦にされたのは」
「泰正にはな、感謝しておるのじゃ。奴がいなければ、朕はあやつに出会えなかった……」
そこで話を途切れさせ、ようやく茶を一口啜った。
「あやつは、いま頃時空の狭間で、清明の様子を伺っているであろうなあ……清明は気づいているであろう」
「は、はあ」
「佐々斬よ」
「はっ」
「捕えた者たちについて、外にもれぬよう、あの男子共を見張るのじゃ」
「承知しております」
帝は扇子を広げて口を覆うと、肩を揺する。
「道満にもっと、鬼憑き達の負を刺激するように伝えよ、清明の見張りも怠たらぬようにと」
「は、ははっ」
「清明が、万が一にもあやつに危害を加えるような事があってはならぬ……朕が二度とあやつと会えなくなるような事は、決してあってはならぬ」
佐々斬は帝を屋敷の門まで見送り、大きな息を吐いて顔を振った。
――やれやれ。いくら身代わりを用意しているからとはいえ、こうも勝手に訪ねてこられては、身が持たぬ。
庭に足を踏み入れた時、人の気配に顔を上げると、そこには久遠が佇み、口元を吊り上げていた。
この男子は、魔鏡師の蓮よりもはるかに面妖であり、佐々斬は苦手意識を持っている。
「何をしておる。出歩くな!」
「帝が望む最高の鬼憑きなら、あの二人がなると思いますけど」
「……それは、英心と泰正の事か」
「帝は、分かっているから二人を一緒にしたのでは?」
その可能性は充分にあり得た。
捕えている者たちは、帝の権威を知らしめる為である事も。
――常に首を狙われている御方だからな。
今、注意すべきは清明の動向であろう。
都と繋がる時空の狭間は、清明しか正常な監視ができない。
いつ魑魅魍魎が狭間から溢れ出るかもわからず、官人陰陽師達は怯えているのだ。
――そんな状況だというのに、帝は、頭の中に花を咲かせている。
「出かける。お前は蓮と大人しくしていろ」
「はーい」
全く緊張感のない輩だ。
昔からこのような異人は出現していたが、いつの間にか、魔鏡を扱う天照一族が保護するようになり、奴らは帝さえも安易に手を下す事はできなくなった。
だが、今の帝は何をしでかすか分からない。
佐々斬は、清明の屋敷へと向かった。
清明の式神に許可を得て、部屋に案内されると、不気味な光景に唖然とした。
「お、お前達」
「おや、佐々斬殿」
「何か用か」
「お、お前達……な、仲が良いのか?」
「「ん?」」
並んで茶を飲んでいる清明と道満を見つめ、佐々斬は頭痛がしてきた。
――これは、帝の思惑通りにはいかぬぞ。
帝はいつもの話題に心を踊らせている。
さしだした菓子にも茶にも口をつけず、扇子を広げて恍惚と語り続ける。
「あやつの望む鬼憑きを育てられれば、朕はあやつの愛を手にする事ができるでの」
「はっ、分かっておりまする。しかし泰正殿にはもう可能性はないのでは?」
「何をいっておる。英心がやつを愛することなどあるものか」
「……されど、夫婦にされたのは」
「泰正にはな、感謝しておるのじゃ。奴がいなければ、朕はあやつに出会えなかった……」
そこで話を途切れさせ、ようやく茶を一口啜った。
「あやつは、いま頃時空の狭間で、清明の様子を伺っているであろうなあ……清明は気づいているであろう」
「は、はあ」
「佐々斬よ」
「はっ」
「捕えた者たちについて、外にもれぬよう、あの男子共を見張るのじゃ」
「承知しております」
帝は扇子を広げて口を覆うと、肩を揺する。
「道満にもっと、鬼憑き達の負を刺激するように伝えよ、清明の見張りも怠たらぬようにと」
「は、ははっ」
「清明が、万が一にもあやつに危害を加えるような事があってはならぬ……朕が二度とあやつと会えなくなるような事は、決してあってはならぬ」
佐々斬は帝を屋敷の門まで見送り、大きな息を吐いて顔を振った。
――やれやれ。いくら身代わりを用意しているからとはいえ、こうも勝手に訪ねてこられては、身が持たぬ。
庭に足を踏み入れた時、人の気配に顔を上げると、そこには久遠が佇み、口元を吊り上げていた。
この男子は、魔鏡師の蓮よりもはるかに面妖であり、佐々斬は苦手意識を持っている。
「何をしておる。出歩くな!」
「帝が望む最高の鬼憑きなら、あの二人がなると思いますけど」
「……それは、英心と泰正の事か」
「帝は、分かっているから二人を一緒にしたのでは?」
その可能性は充分にあり得た。
捕えている者たちは、帝の権威を知らしめる為である事も。
――常に首を狙われている御方だからな。
今、注意すべきは清明の動向であろう。
都と繋がる時空の狭間は、清明しか正常な監視ができない。
いつ魑魅魍魎が狭間から溢れ出るかもわからず、官人陰陽師達は怯えているのだ。
――そんな状況だというのに、帝は、頭の中に花を咲かせている。
「出かける。お前は蓮と大人しくしていろ」
「はーい」
全く緊張感のない輩だ。
昔からこのような異人は出現していたが、いつの間にか、魔鏡を扱う天照一族が保護するようになり、奴らは帝さえも安易に手を下す事はできなくなった。
だが、今の帝は何をしでかすか分からない。
佐々斬は、清明の屋敷へと向かった。
清明の式神に許可を得て、部屋に案内されると、不気味な光景に唖然とした。
「お、お前達」
「おや、佐々斬殿」
「何か用か」
「お、お前達……な、仲が良いのか?」
「「ん?」」
並んで茶を飲んでいる清明と道満を見つめ、佐々斬は頭痛がしてきた。
――これは、帝の思惑通りにはいかぬぞ。
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