『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

文字の大きさ
10 / 251
序章 登録試験編

EP8 渓谷

しおりを挟む

 清也は渓谷へと降りるための梯子を無我夢中で駆け降りていく。
 その途中で、梯子が壊れて使えなくなってしまったが、構わずに血の海になっている渓谷の中心へと、一目散に走り出す。

 息は切れ頭はジンジンするが、そんなことどうでも良かった。

 自分にとって初めての仲間。
 前世では金勘定抜きで付き合ってくれる友は、ただの1人もいなかった。だからこそ、死なせるわけにはいかなかった。

「フラウーッ!死んじゃダメだぁっ!」

 近寄って初めて傷を見るが、かなりひどい。
 後頭部を強く打って、大量に出血している。全身を打撲し、口と鼻からも血が垂れている。
 元いた世界でも、この傷ではきっと助からない。

「くそ!くそくそくそ!何か無いのか!」

 清也が必死になって周囲を周囲を探ると、杖があった。
 これなら彼女を治せるかもしれない。そう思い振りかざしたが、反応がない。
 
 たしか、フラウが調合した魔法は5回分。そしてーー。

「僕が切られたのも5回だ・・・。」

 そう、彼女は回復魔法を既に使い切っていたのだ。
 
「僕が弱かったせいで!くそ!」
 
 何か無いかと思い清也は必死に、彼女のバッグを失礼だと知りながらも探った。しかし小さな種以外は、何もなかった。

 袋には観賞用とかいてあり、魔法には使えないと注意書きがある紙が貼ってある。
 清也は万策が尽きた事を、絶望を以って悟る事になった。



 しかし、遂にフラウが呼吸をしなくなった時、それは起こったーー。

 ガツンッ!

「痛ぁっ!?」

 彼の頭上に、何か硬い物が落下してきた。
 頭頂部の激痛を耐えながら、落下物を取り上げて見ると、それは青い"星型の鉱石"だった。

 いや正確には、先ほどまでは青色だった。今は赤色、いや緑色だ。次々と色が変わる。

「これはまさか!エレメンタルストーン!?こんな物がどうして上から・・・。」

 頭上を見上げても、鉱石が取れそうな場所はどこにも無い。だからこそ、上から落ちてくるはずがないのだ。
 だが、これは紛れもなくエレメンタルストーンだった。そして清也は、瞬時に図鑑での解説を思い出す。

「工夫して使えば瀕死の重傷を治せる!」

 そしてその"工夫"は今、目の前に転がっているーー。



「杖だ!この杖を使うのか!」

 自分でも魔法が使えるのか、そんな事は分からない。
 しかし成功を祈りながら、エレメンタルストーンを砕く。砕いた鉱石の粉末を、杖の持ち手部分に流し込み、魔法の生成を待つ。

 そしてーー。

「頼む!効いてくれ!」

 そう叫んで、清也は杖を彼女に向けて振りかざした。すると、彼女の体が黄金色に輝いたーー。



 次の瞬間、彼女はパッチリと目を覚ました。



「あれ?清也さん。ここは一体?」

 彼女の声には苦痛の色は一切無かった。

「ここは渓谷だよ。君は袖を掴まれて落ちたんだ。トロッコと一緒に。」

「ああ!思い出した!私、頭を打って・・・死にそうなほど体中が痛くて・・・こ、怖かったよぉ・・・!」

 フラウは泣き出してしまった。
 無理もない、通常なら死んでしまう傷を負って、激痛に耐え続けたのだから。

「で、でも、どうして生きてるんだろう。私、傷もほとんどないようだし・・・。」

「エレメンタルストーンを使ったんだ。君の杖と組み合わせて。」

「本当にありがとうございます!感謝してもし切れません!
 でも、それって貴重な鉱石ですよね・・・それを、私なんかのために・・・。」

 生まれて初めて、お世辞でなく人に感謝された気がする。
 言葉では言い表せないほど、気分が良くなって来る。

「君は大切な仲間だ。仲間より貴重で大切な物なんて、この世にあるわけないだろう?」

 清也は気の利いた事を言ってみる。
 それを聞いた彼女は、更に泣き出した。そして、こんな事を言った。

「でも、エレメンタルストーンを持ち帰ったら凄い剣が作れたんですよね・・・。
 実は私、町に帰ったら売ろうと思ってたのですが、お礼としてこれをあげます!」

 そう言うと、胸ポケットから血が付着しても分かるほど、白く光り輝く美しい鉱石を取り出した。

「これは、一体?」

 そう言って図鑑を取り出して調べた。

 どうやらこの鉱石は"アイス・クリスト"というらしく、名前の通り"氷属性の原石"で、この鉱石から剣を作ることもできる。

「本当にくれるの!?ありがとう!」

 そう言って立ち上がったが、すぐにある事に気が付いた。
 上に登る手段がない。さっき、梯子は壊してしまったのだ。

~~~~~~~~~~~

「う~ん・・・どうやって登ろうかな・・・。」

 清也とフラウは途方に暮れる。日没も近くなり、辺りは暗くなり始めた。

「そろそろ、野犬とか狼が出て来ちゃう頃ですね・・・。」

 そうなってはまずい。盾のある清也はともかく、ほぼ丸腰のフラウは簡単に組み伏せられ、柔らかいお腹から食べられてしまうだろう。

「何とかしないと・・・うん・・・?」

 足元に、フサフサとした違和感を覚えた清也は、視線を下に落とす。すると、先ほどまで無かった苗が、地面から生えている。
 良く見ると植物の根本には、"観賞用・魔法には使えない"と書かれた紙が刺さっている。

「ジャックと豆の木みたいに、これを伝って登れたら楽だね!」

 夜が近くなり、気温が下がり始めた事で不安になって来た清也は、軽い冗談を飛ばす。
 当然だが、この苗が崖を越すまで渓谷の底で待っていたら、ヨボヨボの爺さんになってしまう。

 たが、彼女は目を輝かせて清也の方に向き直った。

「これで上に上がれますよ!」

 流石の清也も、そこまで馬鹿じゃない。この苗では上がれないと、フラウに言ったがーー。

「大丈夫です!私を信じて!」

 彼女は、清也の手を力強く掴んだ。女性特有の柔らかい肌触りが、手のひらに伝わって行く。
 そしてーー。

<原始より受け継がれし命よ!その無限の可能性の一端を私に見せて!>

 花が詠唱を行うと杖から青い閃光が走り、小さな苗は2人を乗せれるほど巨大な葉を付けて、メキメキと成長し始めた。

 彼女に連れられて葉に乗ることで、清也は無事に渓谷を抜け出すことができた。

~~~~~~~~~~~~~

「今のは一体?」

「あれが、1日に一回の攻撃技です。植物の形や、生える向き、成長速度、その他様々な要素を操れます。
 植物が生えてないと使えないのですが、何故あそこに生えていたのでしょう・・・?」

「多分、君を助けるためにバッグを漁らせてもらったとき、出てきた種がエレメンタルストーンを使った魔法の余波で発芽して、ある程度まで育ったんだろうね。」

「何はともあれ、抜け出せて良かったです!」

「そうだね!君がいて助かったよ!」

「う、うん・・・。私も、セーヤがいて良かった・・・///」

 フラウはどこか恥ずかしそうに頬を赤らめた。清也には、その意味が理解出来ない。
 疲れて気が抜けているのか、気を許したのか、その両方なのか定かでは無いが、フラウは敬語を使うのをやめている。

(それにしても、あれほど凄まじい技だったとは・・・。凄い仲間を見つけたな!!)

 清也は今後の冒険が、更に楽しみになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...