『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

文字の大きさ
57 / 251
第三章 シャノン大海戦編

EP51 警告

しおりを挟む
 
 それぞれ必要な物を買った二人は北に向けて出発した。天気は快晴で、日差しが照りつけている。

「うげ・・・あっつ・・・。」

 シンは耐えきれずに言葉に出した。
 それにより、更に暑く感じるようになった。

「先の事でも考えましょう・・・。」

 花も出発してまだ1時間なのに、既にバテ始めている。
 息が荒くなり、首筋が汗で光り始めた。

「北って、流石にアバウトすぎると思うんだよな。なんか目印ないのか?」

 シンは無理に笑顔を作って聞いた。

「えぇっと・・・たしか"シャノン"っていう港町があるらしいわ。そこの近海に、アトランティスは沈んでるそうよ。」

「近海ってことは観光とかもあるのか?」

 シンは真面目な顔をして聞いた。
 海底を観光出来るほどの技術力が、この世界にない。という事実は、今の彼では思い付かなかった。

「どうかしら・・・結構危険な海だって聞いたわ。潮の流れは遅いけど・・・。」

「今日はもう寝るか?言われてみれば、留置場でもまともに寝れてないんだ。普通に寝不足だぜ。」

 シンは花を気遣い、まだ正午だがテントを張る提案をした。

「いやいや、まだまだ行けるわよ!」

 花は強がっているが、足取りもおかしい上に、顔が赤くなっている。

「完全に熱中症だな。いいから、今日はもう休むぞ。清也にキレられるのは俺だからな!」

 シンは、清也が自分を叱責しないと分かっていたが、その名前を出せば花を納得させられるだろうと思った。

「そ、そうよね・・・。」

 花はシンの予想通り大人しくなった。

「テントは俺が張るから、お前は木の下にでもいてくれ。」

 シンはそう言うと、5分と経たずにテントを設営した。

「ありがとう・・・。」

 花は具合が悪そうな表情で感謝すると、倒れ込むようにテントに入って行った。

 花が無事にテントに入るのを見届けたシンは、思い出したように強烈な眠気に襲われ、花と同様にテントに入った。

~~~~~~~~~~~~~~~~

 目を開けると、シンは不思議な空間にいた。
 辺りは水に覆われているのに明るく、呼吸ができる。目の前には苔むした台座と錆びた二つの扉がある。

(ここが・・・アトランティスなのか?)

 シンが目を凝らすと、左の扉の近くに人影がある。

「開いたぞ!」

 人影は扉を開けると、部屋の中に入ろうとする。

 しかし、その時ーー。

「ご苦労だったな。」

 シンは自分とは違う者の声が、喉から発せられるのを感じた。そして、槍を握りしめた腕が一人でに振り上がった。

(お、おい!何やってるんだ!やめろ!!)

 シンは自分を止めようとしたが、体が言うことを聞かず、手に持った槍は人影を貫いた。

「裏切・・・ったな・・・。」

 貫かれた人影は倒れ込んだ。
 シンは自分の意識と無関係に、その顔を覗き込む。
 倒れ込んだ人影は若い男で、その瞳に光はない。

「秘宝"ミストルテイン"は俺の物だ。悪く思うなよ!」

 シンはそう言って、笑いながら部屋に入った。
 部屋の中央には巨大な棺のような箱がある。

 しかし、部屋に入り数秒が経った時に異変が起こった。

 突然入ってきた扉が音を立てて閉まり、天を裂くほどの荘厳で、恐ろしい怒声が聞こえた。

「弱く汚い心よ!暗闇で眠るがいい!!」

 天井から何本もの三叉の槍が現れてシンに電撃を放った。

「おわあああああああああああ!!!!!!」

 凄まじい激痛と絶叫に合わせるように、シンの意識は途絶えた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うわぁっ!!」

 シンは人生で初めて、叫びと共に目を覚ました。
 目に入るのは苔むした部屋ではなく、新品のテントの天井だった。

「夢、か・・・。」

 シンは、"太古から伝わる言葉"を発した。

「あれは誰かの記憶なのか・・・?
 ミストルテイン・・・聞いたことがあるような?」

 シンはその響きに覚えがあったが、
 エクスカリバーと違い、思い出せなかった。

(喉渇いたな・・・。いま何時だ?)

 シンは汗でベタつく腕を掲げ、カンテラで時計を照らし、時間を確認する。

(朝の4時・・・半日以上寝てたのか!)

 シンは飛び起きたが、すぐに花を起こさないような忍足に変わった。

(川でも探すか。)

 シンがテントのジッパーを開けると、外はまだ暗かった。
 しかし、朝日の先端のようなものが見え始め、地平線が紫色に染まっている。

(仕事がないってだけで、早起きはこんなに素晴らしいんだなぁ・・・。)

 シンは2ヶ月以上会っていない上司を思い出し、吐き気が込み上げてきた。その顔を、清也と花の顔で打ち消した。
 最初に会ってから3週間と経っていないが、シンには二人が10年来の付き合いの様に感じられた。

「そろそろ行くか!」

 シンは小さく気合を入れると、ナックルダスターを両手に嵌めて、静まり返った森の中へと分け入った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 川を見つけること、それは薄暗がりの中でも難しくは無かった。
 水の流れる音を辿れば良いのだから。

 シンは僅か2分で川に辿り着いた。
 暗闇でよく見えないが、川の対岸にも四足歩行の何かがいて、水を飲んでいる。
 目には映らないが、シンは不思議な気品のようなものを"その水を飲む何か"から感じた。

(一応、少しだけ上流の水にするか。)

 動物の唾液から病気になった話を、友人から聞いたことがあったので、念には念を入れることにした。

 シンが水を飲み終え、持ってきた水筒を満たすと、ちょうど朝日が昇り、シンのいる川を照らした。
 川は想像よりも澄み切っており、濁りを少しも感じないばかりか、川底の石に苔すら生えていない。

 シンが顔を上げて立ち上がろうとすると、対岸にいる"もの"が目に入った。

「・・・ッ!?そうか!アレが清也の言ってた・・・。」

 シンはその場に立ち尽くした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...