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第三章 シャノン大海戦編
EP60.5 破海竜の伝説
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シャノンの歴史、それは遥か数百年前にさかのぼる。
元々、沖合に三つの潮流がぶつかり合う潮境があることで漁場としてにぎわっていたシャノンに、港ができ、家が並び建ち、それが町と呼ばれるようになるのは自然な流れであった。
魚たちはそこに集まる餌を求めて集まり、そうして集まった魚たちを漁師たちが釣り上げて売る。
それが、伝統的なシャノンの人々の生活だった。
しかし、シャノンに集まる魚を狙っているのは漁師だけではなかった。
巨大なサメさえも餌としか見ていない生物が、この近海にはシャノンが町として成立するずっと前から大量に生息していたのだ。
その生物は脚が生えていたり、魚のようであったりと、様々な外見があったが鱗に覆われ巨大な牙を生やしたその姿は、どれも海竜その物であった。
漁師達は沖合で漁を始めると毎回のように群がってくる海竜に襲われ、網にかかった魚だけではなく乗っている船や、自分たちの命までも奪われる事が日常茶飯事であった。
そう言った日々に光明を差したのが、ギルドの分割組織サーペントの海中兵だった。
彼らは水中戦のプロフェッショナルであり、銛や魔法などを用いて海竜達と互角以上に渡り合う事が可能だったのだ。
シャノンの人々の漁を援護、護衛する彼らは海竜達の根絶こそ出来なかったが、漁師への攻撃を防ぎ、退けるのに十分な戦力であった。
彼らの協力を得たシャノンの漁師達は安全とは言えなくとも、効率の良い漁をする事ができるようになったのだ。
しかし、そんな数百年も続いた生活は数年前のある日、突然現れた巨大な海竜によって、跡形も無く消え去ってしまった。
ある日、いつもと同じように海中兵と共に沖合いに出た漁師達は誰一人として、シャノンには戻ってこなかった。
数人の海中兵たちが、居なくなった漁師と同胞を探しに海に出たが、またも誰一人として戻らなかった。
事態を重く見たサーペント本部は、数百人の海中兵を乗せた数隻の大型船で大規模な調査を行うことにした。
しかし、順調に探索を進める中、ある日突如として船団は巨大な嵐に飲み込まれる。
それは巨大な船舶を、横倒しに近い角度まで傾ける程の嵐だった。視界は雨粒に覆われ、波は20メートルの高さまで跳ね上がった。
そんな中、
ある者は見た、波を切り裂いて進む尾ヒレを。
ある者は見た、巨大な海竜を端に咥えた顎を。
ある者は見た、海面に波を作り出す背ビレを。
ある者は見た、巨大な牙が船舶を噛み砕く様を。
嵐が収まった時、生き残っていた船は一隻だけだった。
命からがら逃げ帰ったサーペントの生き残りが、本部に自分達が見たものを報告すると、その後に漁師と共に沖合に出ようとする者はいなかった。
海竜を喰らい、海さえも我が物とし、通った場所に道を作るその竜を人々は破海竜、又の名をマスターウェーブと呼び、恐れた。
今でも夜に、望遠鏡で沖を眺めると、潮境を切り裂いて進む不自然な波が時折見えるそうだ・・・。
元々、沖合に三つの潮流がぶつかり合う潮境があることで漁場としてにぎわっていたシャノンに、港ができ、家が並び建ち、それが町と呼ばれるようになるのは自然な流れであった。
魚たちはそこに集まる餌を求めて集まり、そうして集まった魚たちを漁師たちが釣り上げて売る。
それが、伝統的なシャノンの人々の生活だった。
しかし、シャノンに集まる魚を狙っているのは漁師だけではなかった。
巨大なサメさえも餌としか見ていない生物が、この近海にはシャノンが町として成立するずっと前から大量に生息していたのだ。
その生物は脚が生えていたり、魚のようであったりと、様々な外見があったが鱗に覆われ巨大な牙を生やしたその姿は、どれも海竜その物であった。
漁師達は沖合で漁を始めると毎回のように群がってくる海竜に襲われ、網にかかった魚だけではなく乗っている船や、自分たちの命までも奪われる事が日常茶飯事であった。
そう言った日々に光明を差したのが、ギルドの分割組織サーペントの海中兵だった。
彼らは水中戦のプロフェッショナルであり、銛や魔法などを用いて海竜達と互角以上に渡り合う事が可能だったのだ。
シャノンの人々の漁を援護、護衛する彼らは海竜達の根絶こそ出来なかったが、漁師への攻撃を防ぎ、退けるのに十分な戦力であった。
彼らの協力を得たシャノンの漁師達は安全とは言えなくとも、効率の良い漁をする事ができるようになったのだ。
しかし、そんな数百年も続いた生活は数年前のある日、突然現れた巨大な海竜によって、跡形も無く消え去ってしまった。
ある日、いつもと同じように海中兵と共に沖合いに出た漁師達は誰一人として、シャノンには戻ってこなかった。
数人の海中兵たちが、居なくなった漁師と同胞を探しに海に出たが、またも誰一人として戻らなかった。
事態を重く見たサーペント本部は、数百人の海中兵を乗せた数隻の大型船で大規模な調査を行うことにした。
しかし、順調に探索を進める中、ある日突如として船団は巨大な嵐に飲み込まれる。
それは巨大な船舶を、横倒しに近い角度まで傾ける程の嵐だった。視界は雨粒に覆われ、波は20メートルの高さまで跳ね上がった。
そんな中、
ある者は見た、波を切り裂いて進む尾ヒレを。
ある者は見た、巨大な海竜を端に咥えた顎を。
ある者は見た、海面に波を作り出す背ビレを。
ある者は見た、巨大な牙が船舶を噛み砕く様を。
嵐が収まった時、生き残っていた船は一隻だけだった。
命からがら逃げ帰ったサーペントの生き残りが、本部に自分達が見たものを報告すると、その後に漁師と共に沖合に出ようとする者はいなかった。
海竜を喰らい、海さえも我が物とし、通った場所に道を作るその竜を人々は破海竜、又の名をマスターウェーブと呼び、恐れた。
今でも夜に、望遠鏡で沖を眺めると、潮境を切り裂いて進む不自然な波が時折見えるそうだ・・・。
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