『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

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第三章 シャノン大海戦編

EP99 サム

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「うわあぁぁぁっっっっっ!!!!!!来るんじゃねぇ!!」
「きゃああぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
「嫌ぁっ!!お腹食べちゃ嫌ぁっ!!!ぐぷっ・・・。」

 二人がアトランティスに潜入していた頃、シャノン近海は"地獄の様相"を呈していた。
 水中にも響き渡る甲高い悲鳴は、老若男女を問わずに死が襲いかかる現状を、ありありと想起させる。

 次々と、肉体を食いちぎられながら死んでいく者たち。
 戦意を喪失した者もいれば、必死に抵抗を続けた者もいる。

 そんな中、一人の"幼い英雄"が次々と海竜達を薙ぎ払っていく。

<<<マスターグラウンド!!>>>
<<<マスターフラッシュ!!>>>

 両手から相反する、地面と稲妻属性の魔法を連射する離れ技。
 そんな事を出来る魔法使いは、この世界に数人しか存在しない。

 しかも、彼が乱射しているのは上級呪文なのだ。
 恐らくこの世界で、そんな事を実現しているのは、この世界でも彼一人だけだろう――。

「みんな!諦めちゃだめだ!!」

 サムは攻撃の片手間に味方を鼓舞する。
 もはや陣形や班分けなど、作戦開始前に立てた計画は、全て瓦解していた。
 ただ、生き残るためだけに魔法を打つ。それだけが彼らの精一杯だった。

「ここは僕に任せて!みんなは陣形を整えてから、陸地に向かって後退するんだ!!」

「分かった!サム、ここを頼んだぞ!!!」

 漁師の男が合図すると、他の戦士たちは海上へと泳ぎ始めた。

(よし・・・これで誰も巻き込まなくなった・・・。)

 サムは心の中で、他の戦士たちを足手まといのように感じていた。
 彼に悪意があったわけでは無い。だが他の者たちの実力は、サムと比べれば虫けら以下であったのだ。

(雷夜様と練習した魔法を使うなら・・・今だ!)



<<<<<ユニバース・カラミティ!!!!!!>>>>>



 サムは太平の世界には存在しない魔法を叫んだ。
 この平和な世界では、これほどに危険かつ強大な魔法は必要とされて居ない。

 明らかにオーバースペックな呪文。
 ありとあらゆる属性の集合体は、極限のエネルギーを周囲に放出させ、災害と呼ぶに相応しい威力と被害を齎した。

 実はサムが入隊の手見上げとして持って来た魔導書には、この世界に存在しない知識が幾つか記されていた。

 例えば魔能継承に関する話も、あれほど詳しい情報はこの世界の人間は持ち得ていない。
 それとは逆に、あの魔導書には意図的に省かれていた内容も存在する。

 その一つが”極限魔法”の存在だ。
 実際のところ、この広い宇宙には限られた人間にしか到達できない境地として、”ユニバースウィザード”という物が存在する。

 基本的に、魔能保持者はその境地に到達することは叶わない。
 しかし例外的に、サムは規格外の魔能を保有していたので、"神能を持つ者と同じ境地"に立てたのだ。

 そして、もう一つ新事実を併記しておくとするならば、あれは魔導書では無く、論文であるという点であろう。
 あの資料は全て、一人の男が旅の最中に出会った宇宙の神秘の深淵。コスモエイジ・・・・・・について、探求した結果なのである。

 その男は今、サムと雷夜を従えて”一つのささやかな願い”へ向けて邁進しているのだ――。

~~~~~~~~~~~~~

「うわぁ~・・・本当にすごい魔法だぁ~・・・。」

 この世界の住民で、他に真似出来る者が居ないほど強大な魔法を放ったというのに、当の本人は暢気なものである。

 当然のように周囲の海竜たちは悉く粉砕され、欠片さえ残っていない。
 その代償として、サムの魔力も殆ど空になってしまった。

「任務も達成したし、早く陸に上がろっ!お腹すいたぁ~・・・。」

 年相応に無邪気な独り言を呟くと、サムは仲間の後を追って上陸を試みた。
 しかし、何か様子がおかしい。突然、背後に強烈な殺気が多数出現した。





「ずっと・・・待っていた・・・最強の力を得て、お前らを倒す日を・・・!!!」

 サムは少しも物怖じしない。
 積年の恨みが彼を、不自由かつ不公平な戦闘に駆り立てるのだ。
 そして興奮が頂点に達した時、押し寄せる破海竜の群れの中に自ら飛び込んで行った――。

~~~~~~~~~~~~~~

 魔力は空になったと思われた。
 しかし、どうやらアレは錯覚だったようだ。
 憎むべき親の仇を前にして、サムの魔力は無尽蔵に溢れ出してくる。

「死ね!死ね!死ねぇ!死んじまえッ!!このトカゲ野郎がぁ!!!」

 彼は極限魔法を乱射する。
 四方八方に飛び散る熱戦は、破海竜を次々に粉砕する。
 だが、本調子ではないのか、それとも冷静さを欠いているせいなのか、雷夜ほどの破壊力は無い。

「おいサム!そろそろ離脱しろ!ソイツらの相手をするな!」

 通信魔法を伝って主君の声が響いて来るが、極度の興奮状態にある彼には通じない。

「マスターには関係無いでしょう!!!コイツらは親の仇なんです!!」

 サムは戦闘の片手間に返事をする。主君に対する発言としては不適切としか言いようが無い。

「違うぞ!ソイツらはの尖兵だ!相手をするんじゃない!命令だ、今すぐ上昇しろ!」

 男の声も心無しか興奮している。いつもの余裕が少しも感じられない。

「黙っててください!!」

 サムはそう言うと、通信魔法を遮断ミュートした。

~~~~~~~~~~~~~~

 サムは気力だけで100頭以上の破海竜を粉砕した。
 しかし、その数は一方に減らず、むしろ続々と集結している。

 完全に四方を囲まれ手遅れになってから、サムは気が付いた。いや、実感させられた。

「ちくしょうっ!!コイツらは罠か!」

 おかしいと思うべきだった。
 確かにシャノン近海にはここ数年間、誰一人として潜水していない。だから海中に何が潜んでいてもおかしくは無いだろう。

 しかし、全ての物事には限度がある。
 いくら海は広いと言われても、これほどの質量を持った怪物が数百頭もいるはずが無いのだ。
 では、今ここにいるのは一体何なのか、その答えは主君が既に提示していたのだ。

「マスターの言う事を聞いておくべきだったな・・・。」

 数十分に及ぶ死闘による疲労と衰弱で、サムの意識は途絶えそうになる。
 彼の見立てが正しければ主君は今、手が離せない状態にあり、雷夜も何らかのトラブルに巻き込まれているのだろう。

(まぁ、良いかな・・・父さん、母さん・・・今から行くよ・・・。)

 サムは父母の眠る地を自らの墓場と定めた。
 ただ、食いちぎられて死ぬのは、流石に嫌である。

(雷夜様から貰った魔力に、死力を尽くす!!!)

 サムは自らの生命力と、師匠から授かった気泡呪文に込められた魔力を融合させた。
 この時点で、彼の死は確定してしまった。

「喰らえぇぇぇっっっっ!!!!!!!!!」
<<<ユニバース・オーシャン!!!!!!>>>

 サムの放った魔法、それは海を支配する力。
 自らを中心にして巨大なうず潮を発生させ、全ての破海竜を巻き込んで行く。
 段々と巨大化していく渦は、数分のうちに海全体をその射程に収めてしまった。

 水圧と仲間との衝突で、次々と巨大な怪物は次々に圧死していく。
 最後の一匹が駆逐され、近海からは雑魚を含む全ての海竜がいなくなった。
 しかしその代償として、美しい魚の群れも悉く死滅してしまった。

 そうして全ての命が死に絶えた海に、サムを含む数十人の死者は力無く漂っていた――。
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