『無頼勇者の破王譚』〜無能社員だった青年は、異世界で精鋭部隊を率いる~

八雲水経・陰

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第九章 反逆の狼牙編

EP269 帰りたい場所 <☆>

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「手ぇ繋ごっか……?」
「うん」
「…………///」
「…………///」

 2人はパジャマに着替えて、ベッドに入った。
 花に促され手を繋ぎ、仰向けになって天上を見上げながら、2人は頬を赤らめた。

「そんなに気持ち良かった?」
「え?」
「私のお腹……。」
「ッ"!? ぁ"、ぃやあのその!」
「良いんだよ? ちょっとビックリしたけど……。」

 花は仄かに頬を赤らめ、そっぽを向く。
 繋がった征夜の手を軽く引いて、パジャマの内に滑らせた。柔らかく滑らかな下腹部に、柔らかく抱き込んだ熱を感じる。

「男の子だもんね。 女の人のお腹は、やっぱり気になるよね……。」

「っ! ぁ、いや……!」

「アハハ、何言ってるんだろう私……。」

 照れ笑いを浮かべ、花は天井を見上げた。

「少しは元気になれた?」
「元気には、まだなれないかも……。」
「じゃあ、落ち着けた?」
「落ち着く……か、僕は落ち着いて良いのかな?」
「まだ言ってるの?」
「ごめん、でも……。」

 花の問い掛けに、征夜は答えられない。
 脳裏に巡る罪悪感。砕け散った命の残像が心の平穏を掻き乱し、その状態を肯定する。穏やかに過ごす事そのものが、間違いに思えた。

「じゃあ、こうしようか。
 貴方の帰る場所は、いつもどんな時も私がいる場所」

「君のいる場所……。」

「どれだけ大変な時でも、迷っても、こらだけは思い出して? 自分には、帰りたい場所があるんだって。」

 征夜の罪悪感を肯定も否定もせぬまま、花は選択肢を提示した。

「どんなに無茶しても、どんなに貴方が変わっても、私は全てを受け入れる。
 別人みたいに振る舞っても、傷ついても、傷つけても――それでも、私のところに帰りたいと思ってくれるなら」

 戦いの中で変貌し、鬼神に成り果てても。
 日常に支障をきたすほど、心と体を病んだとしても。
 名も知らぬ誰かを傷つけて、その怨嗟を受け止める事になったとしても。

 それでも、花は――。

「私は、アナタの背中を押せる。」

 自分の元に帰ってきたい、と思っていてくれる。それだけで、彼の居場所になると誓った。

「……ありがとう。」

 征夜の頬に、理由の分からない涙が伝った。
 何を怯えていたのか、分からなくなるほどの安堵だ。たとえ取り返しのつかない失敗をしても、信じてくれる人がいる。それだけで人間は前に進めるのだと、改めて思った。

「やっぱり、僕には君が必要だ。」

 どこまでも広がる大宇宙の暗がり――その一点で、この女性と巡り合った事実。
 征夜は今再び、その奇跡に感謝した。他の誰でもない花だけが、自分の求める物だと思えた。

「何があっても、君の事は絶対に守る。」

「本当に?」

「あぁ、約束だ。 どれだけ多くを望んでも、必ず君に帰ってくる。」

 たとえ重荷を背負い過ぎても、押し潰されることはしない。最後の一線だけは、常に彼女に捧げたい。
 物事には優先順位がある。花が1番だ。もしも天秤に掛かったなら、必ず彼女を選びたい。――それは、信じてくれた彼女への礼儀だった。

「僕にとって、何よりも大切なのは君だから。」

 隣に寝そべる恋人を見つめ、視線を合わせる。
 その真っ直ぐな瞳の奥に、征夜はを見つけた気がした。
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