爺ちゃんとミノルの会話

マー坊

文字の大きさ
21 / 28

「爺ちゃんとミノル」の会話(3)~8

しおりを挟む
(97)
 
 
「そんなにいたの?」
「一番好きな仕事じゃったからのう(笑)技能も学科も教えたし、送迎のマイクロバスも運転したし、ええ思い出じゃのう」
「僕もいっぱい経験したいな~」
「お金を稼ぐ必要がない社会なら誰でもいっぱい経験出来るんじゃがのう」
「僕にも出来るかな~?」
「出来るど。でもしっかり勉強せんにゃあダメど」
「何で?」
 
 
「何をするにしても資格が要るんじゃ」
「資格って?」
「例えばじゃのう、車の運転は免許証が要るじゃろうが」
「あ~そういうことか」
「資格を取るにはテストがあるから字を覚えんにゃあいけんし、文章の意味もわからんにゃあいけんじゃろうが」
「自分の夢を叶えるにはまず勉強が必要だということだね?」
 
 
「自動車学校にはいろんな人がおってのう。受け持った人で字が読めん人が学科で落ちるんじゃ」
「その人はどうなったの?」
「自宅まで行って教えたことがあるど」
「へ~そこまでやるの?家庭教師みたい(笑)」
 
 
 
(98)
 
 
「せっかく仮免の実技が合格しても学科が受からんにゃあ免許がもらえんじゃろうが」
「そういう人もいるんだね」
「他には身体障害者とか耳が聞こえん人も教えたど」
「それでも免許が取れるの?」
「身体障害者の人は障害者用の自家用車を使うたど。耳が聞こえん人はほとんど筆談じゃったのう」
「いちいちノートに字を書くの?」
 
 
「そうなんじゃ。番号札を作って割り箸に取り付けて3番の交差点を左に曲がってくださいとかの」
「大変だったんだね」
「でも楽しかったど(笑)」
「その人たちはみんな合格したの?」
 
 
「そうじゃ」
「へ~みんなすごいな~」
「小学校の勉強も中学校の勉強も大人になってから役に立つってことなんじゃ」
「勉強は好きじゃないけど勉強は大切だということがわかったよ」
「試験勉強も大切じゃがの考える力も付けんにゃあいけんど」
「うん。大人になってからの冒険も聞いたけど子供の頃の冒険ってあるの?」
 
 
 
(99)
 
 
「あまり覚えちょらんが田んぼや土手で遊んだり空き地で鬼ごっこやら缶けりやら三角ベースの野球やら」
「外で遊ぶことが多いんだね。僕は友だちとゲームで遊ぶことが多いよ」
「ミノルは星は好きか?」
「うん。好きだけど、どうして?」
「お爺ちゃんは子供の頃手作りで望遠鏡やらラジオを作ったど」
「へ~子供でも作れるの?」
 
 
「そうなんじゃ。本を買って作り方を見ながら作るんじゃがの。失敗をいっぱい経験すると面白いど」
「失敗したら楽しくないと思うよ」
「これが楽しいんじゃ(笑)」
「そういえばお爺ちゃんの所に望遠鏡があるよね。あれは買ったんでしょ?」
「あれは天体写真を撮るために買うたんじゃがの、もう40年くらい前の話じゃ」
「あの望遠鏡で星は見えるの?」
 
 
「見えるど。今は寒いから温うなってから見せちゃるの」
「うん。楽しみだな~。他におもしろ体験みたいなのはあるの?」
「あるど。死んだはずの母ちゃんが助けた体験やら木や草とお話したことかの~」
「死んだお母ちゃんってお爺ちゃんのお母さんのこと?」
 
 
 
(100)
 
 
「そうなんじゃ。産業廃棄物の運搬の時のことなんじゃがの2トントラックにガラクタを積み込んでシートをかける時シートから手が外れて荷台の上から後ろ向きに落ちたんじゃ」
「え~。それで」
「こりゃあまずいと思った時、死んだはずの母ちゃんの手を感じたんじゃ」
「それで?」
 
 
「スローモーションで地面に落ちたんじゃがの無傷じゃったんじゃ」
「へ~」
「その時周りにおった近所の人が救急車を呼ばんにゃあいけんと思うちょったって(笑)」
「そりゃあそうだろうね(笑)」
「その時思ったど。死んだ人が守ってくれることってあるんじゃのうって」
「波動もだけど目に見えないことっていっぱいあるんだね」
 
 
「見える世界っちゅうもんはほんの少しの世界なんじゃのう」
「それで、もう一つの木や草とお話したというのは?」
「それは次回にゆっくり話そうかのう(笑)」
「え~次回なの?」
「そろそろお父さんが迎えに来るじゃろうが」
「そうだけど・・・・じゃあ続きはまたね」
 
 
 
「爺ちゃんとミノル」の会話(4)に続く

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...