4 / 141

4.薬草ではない何か

しおりを挟む
 どうにかお金を稼ぐ手段を見つけたのにまたまだ勉強不足らしい。

「じゃあ依頼達成できないですね」

 俺が落ち込んでいるとリーチェは笑っていた。実はこの女性も俺が苦しむのを見て楽しんでいた人間なのかもしれない。

 人はそんな簡単に信じてはいけないと改めて勉強になった。

 俺は冒険者ギルドから出ようと体の向きを変えると、突然腕を掴まれる。

「ウォーくんどこに行くんですか? 依頼は達成できてますし買い取りもできてますよ」

「えっ!?」

 俺はリーチェの言葉に困惑している。なら、なぜ薬草では無いもので依頼は達成できるのだろうか。

「これって薬草ではあるんですが、薬草より効果が高いので扱いが薬草ではないんです」

薬草ではないけど薬草より高く買い取りをしてくれるとはどういうことだろうか。

「この薬草って薬草の中でも100本に1本混ざってるかどうかの薬草なんですよ。だから薬草だけど薬草じゃない扱いですし、1本でも相当高い価値があるもなのにそれが83本もここにあるんですよ」

「えっ……」

「これで治療費は無事に返済できます! むしろたくさん余るぐらいです」

 俺は驚き空いた口が塞がらなかった。さっきまで絶望の縁にいた俺が今は天に昇っているようだ。

「治療費分の200Gを差し引いたもので残りは105Gあります」

 出されたのは金貨1枚と銅貨5枚だった。1桁ずつ桁が変わると貨幣が異なり、金貨の2つ上の5桁になると白金貨という価値も高く質量が重くなる。

 白金貨を手に入れるには余程のお金持ちか貴族、そして勇者ぐらいなのだ。

 白金貨より上の大白金貨を持っていると世間から注目を浴びるぐらいだが、持ち運びができないため飾るのに適していると言われている。

 貴族には大白金貨ありと言われるぐらいだ。

「こんなにもらってもいいんですか?」

「はい、ウォーくんが稼いだ物ですからね」

 俺は周りの冒険者に見られないように急いで謎のスキル【証券口座】に入れることにした。

 これでやっと魔物が出た時に対処できる剣と防具を買うことができるのだ。

 俺はリーチェにお礼を言うと、急いで冒険者ギルドの部屋に戻った。その部屋は俺が倒れて運ばれた部屋だ。

 ベッドしかない簡単な部屋だが、お金がない駆け出しの冒険者の味方になっている。ちゃんとした宿屋に泊まることができたら、一端の冒険者と言われるほどだ。

「はぁー、これが俺のお金か」

 俺は証券口座に書いてある105Gと書かれていた単位を見て喜んでいた。

 スキル【証券口座】は俺にしか見えない透明な板が目の前に表示されている。その板には上下に動く線やお店のような名前が書かれていた。

 以前試しに触った時はパーティーのお金が勝手に消え、その後アドルにバレたときにはめちゃくちゃ殴られたのも今となっては遠い過去だ。

 俺は疲れた体を休めるために証券口座を閉じてすぐに眠りについた。





 太陽の光とともに俺は目を覚ます。お金を稼いだことによる浮ついた気持ちなのか、体が軽くなった気がする。

 俺はリーチェから借りた短剣を返すためにカウンターに降りて行くと、今日も優しい笑顔でリーチェは朝から働いていた。太陽より眩しい笑顔に俺はどこかドキドキする。

「おはようございます」

「ウォーくんおはよう! 体調はどう?」

 すぐに人の心配ができる女性は中々いないだろう。今まで見て来たのはアドルにベッタリとくっつくふしだらな女性ばかりだった。

「元気ですよ! そういえば、昨日借りた短剣を返そうと思って――」

 俺は短剣をカウンターに乗せるとリーチェは不思議な表情をしていた。

「これはウォーくんの短剣じゃないんですか? 運ばれた時に一緒にライオさんが持って来ましたよ」

 どうやらこの短剣はリーチェが渡してきたものでもないらしい。

 ひょっとしたら門番のライオかと思ったが、ライオの物であれば昨日会った時には何か言ってきたはずだ。

「そうなんですね」

「どんな短剣か気になるならお金がかかりますが鑑定をしましょうか? その時にも所有者もわかりますよ」

 リーチェの提案に俺は短剣を鑑定してもらうことにした。誰のかわからない物をずっと持っておくのも悪い。

「では、10G貰いますね」

 人前でスキルを使うと変な目で見られるため、一度カウンターの下にしゃがみ込んだ。

 俺は証券口座から10Gを選択すると銀貨が出てきた。

「ではお願いします」

 俺が銀貨を渡すとリーチェは短剣の鑑定を始める。

「えっ、これって……でもウォーくんのやつだしな……」

 鑑定しているときに独り言を話すのはリーチェの癖なのだろうか。俺は鑑定を終えるまで待っていた。

「鑑定終わりました。結果をはじめに伝えるとこの短剣はウォーくんの物でした」

「俺のですか?」

 なんと俺は知らない間に短剣を手に入れたようだ。

「しかもこの短剣はすごい珍しいものでしたよ」

 リーチェは紙に詳細を書いて俺に渡してきた。そこには驚きの内容が書いてあった。

――――――――――――――――――――

《匠の短剣》
レア度 ★★★★★
説明 あるドワーフが復帰作として作った短剣。幸運が訪れるようにと願われたこの短剣は持ち主の幸運を上げる。特に採取や戦闘時に能力が発揮される。
持ち主 ウォーレン

――――――――――――――――――――

 どうやら俺は幸運の持ち主になったようだ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...