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35.ここ掘れウォーレンくん

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 俺は目の前の出来事に驚きを隠せないでいた。こんなことが起こるとは誰も思ってもみなかっただろう。

「さすがオラのにいちゃだ!」

「おっ……おう!」

 まさか匠の短剣に短剣術と雷属性のスキル玉を使うことで、本当に短剣で壁を崩せるとは誰も思わないだろう。

 できたらいいなという淡い期待だったが、本当にそれが起きると人は何も反応できずに固まってしまう。

「お兄ちゃんすごいー!」

 ニアは手を叩いて喜んでいた。そこから俺の無双が始まった。

「にいちゃここも!」

「お兄ちゃんすごいね!」
「さすがオラのにいちゃだ!」

 短剣から出る光の粒子が洞窟内で綺麗に輝き、さらに二人からのお願いは加速した。俺は子供達に褒められるのが嬉しくてどんどん掘り進めている。

 それにしても恐ろしいぐらいに短剣がスルスルと壁の中に入って行くのだ。

『スキル【雷属性】を吸収しました』
『スキル【短剣術】を吸収しました』

 それに伴って俺の頭の中では声がずっと響いている。

「はぁ、もうこれで大丈夫だろう」

 俺はロンに言われた通りに壁を掘っていくと、明らかに他の物とは違う金属や鉱石が足元に落ちていた。

「じゃあ、協力して集めようか」

 俺と子供達は壁と違う材質のものを集めると大量の山となっていた。

「流石にこの中にはあるだろう」

 俺は一つずつ鑑定を使うことにした。

――――――――――――――――――――

《純魔金》
レア度 ★★★★★
説明 魔金の純度が高く圧縮されたもの。手に入れるのも珍しいため世に出回ることが少ない。

――――――――――――――――――――

 求めていた魔金を手に入れることができた。レア度も高いためやはり手に入れにくいものだった。

 そして問題なのは純魔金より説明が恐ろしい金属達だった。

――――――――――――――――――――

《ミスリル》
レア度 ★★★★★
説明 鋼よりも強くて羽よりも軽い金属。一般の人では扱いが難しくて細工をするには細心の注意が必要だ。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

《ヒヒイロカネ》
レア度 ★★★★★★
説明 伝説の金属とも言われている合金。魔力の伝導率が高く、金よりも硬くダイヤモンドより軽い特徴がある。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

《アダマンタイン》
レア度 ★★★★★
説明 非常に強固な金属。ただその性質上重く鈍器や盾に使用すると良い。

――――――――――――――――――――

 どれもレア度が高いのだ。ヒヒイロカネという金属なんか今まで星五つが最大だと思っていたら星が六つになっていた。

「とりあえず袋に持っていけるだけ持って行こうか」

 俺達は袋に入れるだけ金属を詰め込んだが、アダマンタインだけは性質上重いため置いていくことにした。

「やっぱりじいじの言った通りだね」
「でもすごいのはお兄ちゃんだけどね」

「次はじいじの言ったことを簡単に信じちゃだめだぞ?」

「はーい!」

 メジストは簡単に言っていていたが、魔金を手に入れるのは結構大変だった。それをロンとニアもわかったのか返事をしていた。

 無事に手に入れた魔金を俺達はメジストの錬金術店に持って行った。

 お店に入ろうとした瞬間、中からモーリンとメジストが言い合いをしている声が聞こえた。

「にいちゃ入らないの?」

「じいじとばあばが喧嘩してるからちょっと待っていようか」

 俺達は言い合いが終わるのを待つことにした。内容的には俺達のことを話しているようだった。

「あんた自分が何を言ったかわかってるの? 魔金なんて滅多に出現しない金属なのよ!」

「本当にあの子達が採取に行くなんて誰も思わないじゃないか! ウォーレンもいるから普通は止めると思うだろう? 洞窟なんて一般の冒険者でも入るのを躊躇うぞ」

「あの子はああ見えて一般常識がないし、どこか抜けているからあの子が一番何をするかわからないのよ! 聞いたことのない金属って聞いたら普通は嘘か手に入らない物だと気づくけど――」

 あれ、いつのまにか俺の視界は見えづらくなっていた。

「にいちゃ大丈夫?」
「ニアのハンカチ使って!」

 俺はいつのまにか涙が出ていた。俺ってそんなに一般常識がないのだろうか。俺は何をするかわからない危ないやつという認識らしい。

 俺は悲しくなりその場でしゃがみ込むと動けなくなってしまった。そんな俺を見てロンとニアは扉を開けた。

 いや、二人とも流石に今開けるのはやめてくれよ。

「にいちゃをいじめるばあばとじいじなんて嫌いだ!」
「ばあばとじいじがそんな悪者だって知らなかったよ!」

「お兄ちゃん(にいちゃ)をいじめる人は大嫌いだ!」

 扉を開けたと同時に叫ぶロンとニアがどこかたくましく見えた。ああ、子供の成長ってこんなに早かったんだと、どこか親の気持ちになった。

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