最弱の荷物持ちは謎のスキル【証券口座】で成り上がる〜配当で伝説の武器やスキルやアイテムを手に入れた。それでも一番幸せなのは家族ができたこと〜

72.仕組まれていた？

　騎士達はウィリアムの圧に息苦しそうにしていた。俺にもその圧が向けられていたらきっと同じようになっていただろう。

　エヴァンとプリシラは俺達に近づいてきた。

「ロンくん、ニアちゃん大丈夫？」
　ロンとニアはプリシラに預けて、俺はエヴァンに差し出された手を取り立ち上がった。

「あー、父さん相当怒ってるね」
　それは俺が見てもわかっていた。目は笑っているのに感じる圧は全く違うのだ。この間のように無駄に輝いていたウィリアムはいなかった。

「それで君達は私の客人に勝手に帰れって言ったのかな？」

「大変申し訳ありません。　私どもの勝手な判断で――」

「君達に謝る許可も与えていないし、人を守る騎士が獣人だからといって傷つけていいはずもないよな？」
　どこか丁寧な口調だが全く優しくないウィリアムに怖さを感じてきた。

「そもそも謝るべきはここに呼ばれている彼らに対してですよ」
　ウィリアムはこちらを振り向くと普段と変わらないような表情にどこか寂しさを俺は感じた。

「いえ、何も言い返せない俺も悪いです」
　そもそも俺にロンとニアを守る力がなかったのが原因だ。俺がポーターでも勇者としての資格があれば貴族相手に対して言われる筋合いはないはずだ。

「それも一理あるからな……あっ、そういえば君達は今年高等教育を終えたばかりだよな？」

　圧から逃れられた男達は再びウィリアムに視線を向けられ姿勢を正していた。

「はい、そうです」

「んー、ならせっかくだからウォーレンくんに機会を与えようか」
　俺はどこか嫌な予感がした。俺としては早く帰らせて貰えれば特に問題はないのだ。

「あー、また始まった」
　俺の隣にいるウィリアムの息子であるエヴァンでさえもこんな感じなのだ。

「ウォーレンくんの実力も知りたいし君達にはウォーレンくんと手合わせをしてもらおうか。　これでウォーレンくんも貴族だからって気にしなくて反撃できるよな？」
　こちらを見るウィリアムの目は輝いていた。どこか新しいおもちゃを手に入れた子供のような姿にさらに恐怖を感じている。

「しかし、私達みたいな高等教育を受けた者が――」

「今までやっていたことが高等教育を受けたものがやっていい行動だったのかな？」
　ウィリアムの声に男達は黙っていた。

「じゃあ、せっかくだから騎士団の練習場に向かおうか」
　ウィリアムは俺の肩をそっと叩き耳元で呟いた。

「全力で潰せ」
　耳に残るその声は次期国王とは思えぬ言葉だった。


♢


　ウィリアムを先頭に歩いていく俺達は騎士団の訓練場に近づくと騎士団員は興味深そうに俺達を見ていた。

「はぁー、なんでこんなことになっているんだろうな」

「ひょっとしたら初めからこの展開を望んでいたのかもしれないな」
　俺の後ろに歩いているエヴァンは俺の嘆きに応えてきた。

「それってどういうことだ？」

「いや、実は俺とプリシラは準備が出来ていた父さんに待ってくれと止められていたんだよ」
　俺はエヴァンの言葉を耳にして、ウィリアムが仕組もうとして起きていたことだと気づいた。

「お前の父さん思ったより性格悪いな」

「まぁ、俺の父親だからな」

「そうだな」

「おいおい、そこは否定してくれよ」
　どこかエヴァンと話していて俺も肩の力が少しずつ抜けていた。

　騎士団の訓練場は城の近くにあり、宿舎と訓練場だけでもかなりの面積を取っている。そこに俺と騎士団の2人は立たされていた。

「ウォーレンくん頑張れー！」

「えっ、これってどういう……」

「ウォーレンくんなら大丈夫だろう」
　どうやらいつのまにか俺は騎士団2人に対して1人で手合わせをすることになっていた。