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魔女と最後のデート回①

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 今日は買い物デートの約束の日。

 待ち合わせで決めた駅で彼女を待っている。

 今回は電車で移動して駅前にあるブティックが多く入ったお店を巡ることになっている。

 スマホを見ると約束までまだ10分ある。

 スマホで最近のトピックスとかを流し見して時間を潰す。

「ごめん、お待たせ」

 僕が付いてから5分もしないうちに彼女は僕の目の前に現れた。

 彼女の服装を見て、別にちづらの様な地雷系ファッションではないんだけど、どことなく似たファッション性を感じる服装だった。

「初めて私服見たな、なんか新鮮」

「そう?じゃあ今のうちにしっかりと堪能しておくことね」

 そういうと彼女はその場でクルクルと回り始めた。

「もう、いいから行こうよ」

 僕がクルクル回る彼女に言うと、ちょっとだけ不満げに「わかったー」と言って駅の改札に向かう。

 改札でICカードを二人ともタッチして「ピッ」という音と共に中に入る。
 
 今日は地下鉄での移動ではないので、空が眩しい。

 目的の駅に向かうために、目の前で止まった電車に乗った。

 目的の駅に着き、改札を出ると雑居ビルが立ち並ぶビル街に出た。

「ビルばっかりで、ファッションブランドっぽいの無いぞ」

 僕が彼女に疑問をぶつける。

「よく見て見なさい、女の子があちこちに居るでしょ。それにブランドはこれらの雑居ビルの中にあるのよ」

 僕はもっとショッピングモールの様に華やかな場所に固まってある場所に行くのだと思っていたのに、期待が外れてしまった。

 確かに周囲を見渡すと女の子たちはまばらにだけど居る。

 だたファッションは王道とは言い難く、奇抜とまではいかないが少し個性的な感は否めない。

「ちょっと変わったファッションしてる気がするんだけど」

「まぁ、確かにこの周辺にあるお店は個性的なファッションを扱ってるのが多いかも」

 彼女はそう言いつつ、なかなかこういうところって一人で来にくかったから、誰かと来れて嬉しいわと言った。

 僕は普段見ることもない、彼女の変わった一面が見られるのかなーっとちょっと期待していた。

 とりあえず、目の前の雑居ビルに入る。

 一回にあるエレベーターに乗ると彼女は各フロアのお店を見て、三階のボタンを押す。

 三階に着くと、目の前には二つ扉がありそれぞれのドアにはお店の名前が書かれていた。

 そのお店のうち左側のドアを開けた。

 中に入るとスーッと透き通るような香りがする。

 中には色とりどりの、普段あまり目にすることが少ないような系統のファッションがズラリと上下に分かれて服が掛けられている。

 彼女はそのうちの一つを手に取る。

「うーん、これも可愛いなぁ」

 そう言いながら違う服も手に取る。

 それから次々に五着くらい手に取ると試着室へと向かった。

 僕を試着室の前で待たせ、着替えるからと言ってカーテンを閉める。

 モゾモゾとカーテンの奥から服を脱ぐ音が聞こえ、カーテンの隙間から脱いだ服が見える。

 僕は少しドキッとする、この手を伸ばせば届く距離で女の子が着替えていると思うと。

 しばらく衣擦れの音をさせて、カーテンが開く。

 彼女が試着に選んだのは少しダークめの緑のワンピーズ、ただベルトがクロスして二本と通っておりちょっと普通のものよりかっこいいなぁと思った。

 彼女はどうかなっと言いながら試着室でクルリと回って見せた。

「いいじゃん」

 僕がそう言うと他のも着てみる、といってまたカーテンを閉める。
 
 服を着替えてはファッションショーをするのを何度か繰り返す。

 ここのファッションは少しかっこいい系に依った服がメインのお店なのかな。

 彼女の繰り返す、ファッションショーの中でそういう毛色が強いなと感じたからだ。

 彼女は結局どれもお気に召さなかったのか、何も買わずに店を出る。

 二件目はガーリーチックなファッションがメインのお店。

 この店は僕からしても彼女の雰囲気に合ってる気がしたけれど、いくつかの服でファッションショーをして出てきてしまった。

 彼女が今日着てきた服もどちらかと言えばガーリーっぽいし、ファッションの開拓でもしたいのかなと付き合いながら思った。
 
 三件目は、お店に入るとふわふわとした甘い香りに包まれた感じがした。

 香りもだけど、お店自体が少しファンシーな内装と、甘めなロリータっぽいファッションをメインで扱っているお店だった。

 ロリータのファッションを眺めていると、思わずちづらを思い浮かべた。

 彼女は好んでよくこういう服を着ているけど、もしかして彼女もこの店に来ているのかも、なんて考えながら見渡していると。

「いま、女のことを考えているわね」

 と彼女はズイッと僕の顔に顔を寄せる。

 なんて鋭いんだ。

「こういう服を着る知り合いでも居るのかしら?」

 彼女にそう尋ねられ。

「最近こういう服装がなんとなく目に入ることがあったから思わずね、あとこういう服は女しか着ないだろ」

 彼女は「あっ」という表情を一瞬して「デート中に他の女の子を考えてる方が悪い」といって脇腹に肘を打ち込む。

「う゛っ」と痛みに悶えると「ちょっといろいろ探してくる―」と言い残して僕から離れていった。

 地味に痛いんだけど。

 少しして彼女に呼ばれるとまた試着室で次々に着替えては僕に見せる。

 僕は何故か前の二件では思わなかったの既視感の様なものを感じた。

 モヤモヤとする気持ちを抱きながら、彼女のファッションショーに付き合った。
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