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序章 異能力者転生編
第2話 待ち伏せ
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二階堂に助けられた少女は、彼に礼の言葉を送る。
「助けてくれて恩に着るわ、私の名前はノア。あなたの名前は?」
「俺の名は二階堂だ。お前が野盗共との間に何があったのか知らんが、
一応気絶してるだけだってのは言っとく、能力を解除すれば奴らの体も武器も元に戻るだろうぜ」
「ふうん、随分器用なことが出来るのね。アンタがあいつらに何したのかは知らないけど…」
「まあひとまずこの場を離れよう、話は歩きながらでも出来るからな」
すると二階堂達は早々に現場から離れ、森の中を進んでいく。
「それで?お前は何者なんだ?」
「何者ってただの吸血鬼よ。この森よりもっと奥で暮らしてた吸血鬼、いわばはぐれ吸血鬼ってとこね」
さも当然ながら吸血鬼という単語が出され、二階堂は改めて異世界の常識に驚かされる。
「き、吸血鬼が普通にいるってのも驚きだが、お前の姿を見れば信じざるおえないんだろうな…」
「何?別に珍しいものでもなんでもないわよ、今や吸血鬼族だって立派な種族の一つなんだから」
「そうなのか、それはすまなかったな。ところでノア、お前はなぜ野盗共に追われているんだ?
俺は何の事情も知らずにあの場に出会わせてしまったから、よければ理由を教えてくれないか?」
二階堂が質問を投げかけると、困った顔でノアはこう言った。
「うーん…助けてくれたアンタには申し訳ないんだけど、あんまり人に話していいわけじゃないのよね。
できれば理由は触れないでくれると助かるわ」
「そうは言ってもな、このまま理由も知らずに手助けし続けるってのも…」
「手助けならもう結構、こう見えても私吸血鬼なんだから。そこらの人間とはわけが違うわ!
もっとも空飛べないし、血の吸い方なんて分からないし、なんなら魔法も使えないけど…」
「お前本当に吸血鬼か?」
「う、うっさいわね!!」
頬を膨らますノアに対し、二階堂は心配そうな眼差しを送る。
そしてため息を吐いたかと思えば、彼はノアにこう返した。
「分かったよ、これ以上の詮索はしないことにする。ただしここでお前を見殺しにするのも目覚めが悪い。
引き続き協力はさせてもらうぜ」
「い、いいわよ!もう十分アンタには手を貸してもらったわ!これ以上迷惑かけられな…」
「気にするな、それに俺だって何のリターンもなしで協力するわけじゃない。
俺はここらの事情に疎くてね、お前にくっついていけば何か情報が得られるかもしれないんでな」
「な、なるほど、アンタは私を通して情報を得る、私はアンタに守られる。
まさにギブアンドテイクってわけね…そういうことならいいわ、お互い協力しましょう。
ただ忘れないで、アンタが私の命を救ってくれた恩は、絶対に返すから!約束よ!」
「フッ、義理堅いこった」
二階堂とノアは手を取り合い、互いに協力関係を結んだ。
「それでよノア、しばらく森の中を歩いてるが、どこに向かっているんだ?
まさかアテもなく彷徨ってるんじゃないだろうな?」
「ちゃんと考えてるわ。友人に馬車を手配してもらうよう頼んだの、この森を抜けた先の道で落ち合うことになってるから、そしたら馬車で王都へと向かうのよ」
王都という場所を聞き、二階堂は異世界の雰囲気を改めて味わう。
(王都…っていうと、王国の中心とか、城下町みたいなもんか?いずれにせよここよりは安全だろう。
それに栄えている場所なら、この世界の情報を集めるにはもってこいの場所かもしれない)
「よし、じゃあ俺もそこまでついていこう。異論はないか?」
「えぇいいわよ。私も王都でやることがあるし、アンタも王都でなら情報収集もしやすいだろうしね。
…っと、喋っている間に着いたわよ。ここを抜けた先で、知り合いが待っているはずだわ」
ノアが指差す方向を見ると、そこには道端に一台馬車が停まっていた。
二人は馬車に近づき、ノアの友人とコンタクトを取ろうとする。
しかしある程度接近したところで、二階堂は異変に気づく。
「…ちょっと待てノア、馬車の様子が何かおかしいぞ。前の方で何かが倒れてる」
二階堂はいち早く駆け寄り、馬車の前方を確認する。
するとそこには二頭の馬が、血を流して地面に倒れていた。
「な!?なに!?」
「嘘!?い、一体どうして!?」
異常事態の起こった馬車を間近に見て、ノアはさらなる嫌な予感を、脳裏に走らせる。
馬車の周囲のどこにも、彼女の友人の姿が見えないのだ。
「ま、まさか…!」
ノアが急いで馬車の扉を開けると、そこには血を流して息絶えた遺体が、項垂れて座り込んでいた。
その遺体は紛れもなくノアの友人であり、彼女の瞳からボロボロと涙が溢れ落ちる。
「そ…そんな…!セバス…!起きて!!起きてよっ!!」
生命感のない体を揺すりながら、大きな声で悲しみに暮れるノア。
彼女の悲しい背中を見て、拳を硬く握りしめる二階堂は、周囲の様子を確認した。
「くそっ!一体誰がやったんだ!?」
次の瞬間、馬車の方へ青く輝いた矢のような光が、勢いよく殺意を持って飛んでくる。
「っ!!奇襲か!?」
二階堂は咄嗟に屈んで、接近してくる光の矢をかわす。
彼が飛んできた方向に視線を向けると、ローブを羽織った男が、茂みから姿を現した。
「ほう、不意打ちのマジックアローを避けるとは、中々やるな」
「この馬車を襲ったのはお前か?まさかノアを狙ってここへ先回りしてたってのかよ?」
「御明察、そこのお嬢さんの協力者らしき人がいたから、先に始末させてもらったんだ。
この馬車を使ってお嬢さんが逃げようとしてるのは察しがついたからね、ここで待ち伏せてたわけ」
遠くから不敵な笑みを浮かべるローブの男に、二階堂は鋭く睨みつけた。
「お前がどこにも行ってなくてよかったぜ、すぐにノアへ友人の仇を取らせてやれるからな」
「フン、そう易々と私を倒せると思うのか?いいかい?待ち伏せっていうのはね、
“複数人”の方が効率的なんだよ?」
その時、二階堂の背筋に悪寒が走り、咄嗟にノアの耳に届くよう行動の指示を出した。
「馬車の中に隠れろ!!!早く!!!!」
二人が馬車内へ駆け込んだ刹那、森の茂みから幾人もの野盗が姿を現し、魔法の杖から青い光を放出した。
王都への脱出を図っていた二階堂達は一変、
ローブの男率いる野盗の集団によって、窮地に追いやられてしまった。
「はっはっは!懸命な判断だ!包囲されていることを悟り、馬車の中に隠れて集中砲火を凌いだか。
しかしその馬車が自らの棺桶になることを、今教えてやろう!!」
ローブの男が杖を構えると、他の野盗達も同時に攻撃態勢へ入った。
再び魔法の的にされた馬車の中で、二階堂は頭をフル回転させる。
(マズイ…こんな馬車に隠れていても、すぐに破壊されてしまうだけだ。
なにか突破できる策を考えなければ!)
二階堂が知恵を振り絞る間、ノアはただひたすら涙を流している。
啜り泣く彼女の顔を見て、二階堂は悲しそうな瞳を向けた。
この場をなんとか打開しようと、二階堂が馬車を隅々まで観察する。
すると彼は、驚くようなことに気がついた。
(っ!!馬車の前方で倒れてる馬の一頭、まだ息があるぞ!瀕死だがまだ生きている!!)
なんと生き絶えているかに見えた馬の一頭が、出血しながらも呼吸をしていたのだ。
好機と思った二階堂は、御者席から身を乗り出し、倒れた馬に手で触れる。
そして彼は能力を使い、馬を瀕死から回復させようとした。
(傷口を治して、血行を時間進行で促進させれば…!頼む!立ち上がってくれ!!)
しばらくすると馬の心音が一気に加速し、止まっていた時が進んだかのように、体を少しずつ動かし始めた。
馬が動き出したのを確認しつつ、二階堂は後ろで啜り泣くノアを見て、一つ息を吐いて思考する。
(馬が息を吹き返した、だがこのまま突っ走っても包囲網を突破出来ない。
集中砲火を食らってぶっ倒されるだけだ、ならば…!)
覚悟を決めた二階堂は、項垂れるノアにこう諭す。
「ノア、お前馬は乗ったことあるか?」
「…ま、まぁ…」
「そうか、それを聞いて安心した、さっき馬の一頭が息を吹き返したんだ。
お前はこいつに乗ってここから逃げろ」
「ど、どういうこと?この場は包囲されてるんじゃ…」
すると二階堂は、涙を手で拭くノアに背を向け、馬車の扉に手をかけた。
「俺が奴らの注意を引きつける、そうすればお前はこの場から離れられるだろ」
「!?な、何言ってんのよアンタ!?馬鹿なことはやめて!!相手は魔法で四方を囲んでいるのよ!?」
「だが他に生き残る術はない、誰かが奴らの包囲を解かないと、馬に乗ろうがこの場からは逃げられない」
「だからってアンタが犠牲になっていい理由にはならないわよ!死ぬつもりなのアンタ!?
ねぇ!考え直して!」
ノアが涙跡を残した目で、二階堂に訴えかける。
しかし彼は背を向けたまま、彼女にこう返した。
「お前とは短い付き合いだが、やっぱ元気な声がよく似合う。
さっきの悲しい啜り泣きなんかより、よっぽどな」
二階堂は馬車の扉を開いて、外の敵たちに姿を晒した。
「っ!!ま、待って!!待ってよ二階堂!!」
ノアの声は彼に届かず、ただ虚しく馬車の中で響くだけだった。
「助けてくれて恩に着るわ、私の名前はノア。あなたの名前は?」
「俺の名は二階堂だ。お前が野盗共との間に何があったのか知らんが、
一応気絶してるだけだってのは言っとく、能力を解除すれば奴らの体も武器も元に戻るだろうぜ」
「ふうん、随分器用なことが出来るのね。アンタがあいつらに何したのかは知らないけど…」
「まあひとまずこの場を離れよう、話は歩きながらでも出来るからな」
すると二階堂達は早々に現場から離れ、森の中を進んでいく。
「それで?お前は何者なんだ?」
「何者ってただの吸血鬼よ。この森よりもっと奥で暮らしてた吸血鬼、いわばはぐれ吸血鬼ってとこね」
さも当然ながら吸血鬼という単語が出され、二階堂は改めて異世界の常識に驚かされる。
「き、吸血鬼が普通にいるってのも驚きだが、お前の姿を見れば信じざるおえないんだろうな…」
「何?別に珍しいものでもなんでもないわよ、今や吸血鬼族だって立派な種族の一つなんだから」
「そうなのか、それはすまなかったな。ところでノア、お前はなぜ野盗共に追われているんだ?
俺は何の事情も知らずにあの場に出会わせてしまったから、よければ理由を教えてくれないか?」
二階堂が質問を投げかけると、困った顔でノアはこう言った。
「うーん…助けてくれたアンタには申し訳ないんだけど、あんまり人に話していいわけじゃないのよね。
できれば理由は触れないでくれると助かるわ」
「そうは言ってもな、このまま理由も知らずに手助けし続けるってのも…」
「手助けならもう結構、こう見えても私吸血鬼なんだから。そこらの人間とはわけが違うわ!
もっとも空飛べないし、血の吸い方なんて分からないし、なんなら魔法も使えないけど…」
「お前本当に吸血鬼か?」
「う、うっさいわね!!」
頬を膨らますノアに対し、二階堂は心配そうな眼差しを送る。
そしてため息を吐いたかと思えば、彼はノアにこう返した。
「分かったよ、これ以上の詮索はしないことにする。ただしここでお前を見殺しにするのも目覚めが悪い。
引き続き協力はさせてもらうぜ」
「い、いいわよ!もう十分アンタには手を貸してもらったわ!これ以上迷惑かけられな…」
「気にするな、それに俺だって何のリターンもなしで協力するわけじゃない。
俺はここらの事情に疎くてね、お前にくっついていけば何か情報が得られるかもしれないんでな」
「な、なるほど、アンタは私を通して情報を得る、私はアンタに守られる。
まさにギブアンドテイクってわけね…そういうことならいいわ、お互い協力しましょう。
ただ忘れないで、アンタが私の命を救ってくれた恩は、絶対に返すから!約束よ!」
「フッ、義理堅いこった」
二階堂とノアは手を取り合い、互いに協力関係を結んだ。
「それでよノア、しばらく森の中を歩いてるが、どこに向かっているんだ?
まさかアテもなく彷徨ってるんじゃないだろうな?」
「ちゃんと考えてるわ。友人に馬車を手配してもらうよう頼んだの、この森を抜けた先の道で落ち合うことになってるから、そしたら馬車で王都へと向かうのよ」
王都という場所を聞き、二階堂は異世界の雰囲気を改めて味わう。
(王都…っていうと、王国の中心とか、城下町みたいなもんか?いずれにせよここよりは安全だろう。
それに栄えている場所なら、この世界の情報を集めるにはもってこいの場所かもしれない)
「よし、じゃあ俺もそこまでついていこう。異論はないか?」
「えぇいいわよ。私も王都でやることがあるし、アンタも王都でなら情報収集もしやすいだろうしね。
…っと、喋っている間に着いたわよ。ここを抜けた先で、知り合いが待っているはずだわ」
ノアが指差す方向を見ると、そこには道端に一台馬車が停まっていた。
二人は馬車に近づき、ノアの友人とコンタクトを取ろうとする。
しかしある程度接近したところで、二階堂は異変に気づく。
「…ちょっと待てノア、馬車の様子が何かおかしいぞ。前の方で何かが倒れてる」
二階堂はいち早く駆け寄り、馬車の前方を確認する。
するとそこには二頭の馬が、血を流して地面に倒れていた。
「な!?なに!?」
「嘘!?い、一体どうして!?」
異常事態の起こった馬車を間近に見て、ノアはさらなる嫌な予感を、脳裏に走らせる。
馬車の周囲のどこにも、彼女の友人の姿が見えないのだ。
「ま、まさか…!」
ノアが急いで馬車の扉を開けると、そこには血を流して息絶えた遺体が、項垂れて座り込んでいた。
その遺体は紛れもなくノアの友人であり、彼女の瞳からボロボロと涙が溢れ落ちる。
「そ…そんな…!セバス…!起きて!!起きてよっ!!」
生命感のない体を揺すりながら、大きな声で悲しみに暮れるノア。
彼女の悲しい背中を見て、拳を硬く握りしめる二階堂は、周囲の様子を確認した。
「くそっ!一体誰がやったんだ!?」
次の瞬間、馬車の方へ青く輝いた矢のような光が、勢いよく殺意を持って飛んでくる。
「っ!!奇襲か!?」
二階堂は咄嗟に屈んで、接近してくる光の矢をかわす。
彼が飛んできた方向に視線を向けると、ローブを羽織った男が、茂みから姿を現した。
「ほう、不意打ちのマジックアローを避けるとは、中々やるな」
「この馬車を襲ったのはお前か?まさかノアを狙ってここへ先回りしてたってのかよ?」
「御明察、そこのお嬢さんの協力者らしき人がいたから、先に始末させてもらったんだ。
この馬車を使ってお嬢さんが逃げようとしてるのは察しがついたからね、ここで待ち伏せてたわけ」
遠くから不敵な笑みを浮かべるローブの男に、二階堂は鋭く睨みつけた。
「お前がどこにも行ってなくてよかったぜ、すぐにノアへ友人の仇を取らせてやれるからな」
「フン、そう易々と私を倒せると思うのか?いいかい?待ち伏せっていうのはね、
“複数人”の方が効率的なんだよ?」
その時、二階堂の背筋に悪寒が走り、咄嗟にノアの耳に届くよう行動の指示を出した。
「馬車の中に隠れろ!!!早く!!!!」
二人が馬車内へ駆け込んだ刹那、森の茂みから幾人もの野盗が姿を現し、魔法の杖から青い光を放出した。
王都への脱出を図っていた二階堂達は一変、
ローブの男率いる野盗の集団によって、窮地に追いやられてしまった。
「はっはっは!懸命な判断だ!包囲されていることを悟り、馬車の中に隠れて集中砲火を凌いだか。
しかしその馬車が自らの棺桶になることを、今教えてやろう!!」
ローブの男が杖を構えると、他の野盗達も同時に攻撃態勢へ入った。
再び魔法の的にされた馬車の中で、二階堂は頭をフル回転させる。
(マズイ…こんな馬車に隠れていても、すぐに破壊されてしまうだけだ。
なにか突破できる策を考えなければ!)
二階堂が知恵を振り絞る間、ノアはただひたすら涙を流している。
啜り泣く彼女の顔を見て、二階堂は悲しそうな瞳を向けた。
この場をなんとか打開しようと、二階堂が馬車を隅々まで観察する。
すると彼は、驚くようなことに気がついた。
(っ!!馬車の前方で倒れてる馬の一頭、まだ息があるぞ!瀕死だがまだ生きている!!)
なんと生き絶えているかに見えた馬の一頭が、出血しながらも呼吸をしていたのだ。
好機と思った二階堂は、御者席から身を乗り出し、倒れた馬に手で触れる。
そして彼は能力を使い、馬を瀕死から回復させようとした。
(傷口を治して、血行を時間進行で促進させれば…!頼む!立ち上がってくれ!!)
しばらくすると馬の心音が一気に加速し、止まっていた時が進んだかのように、体を少しずつ動かし始めた。
馬が動き出したのを確認しつつ、二階堂は後ろで啜り泣くノアを見て、一つ息を吐いて思考する。
(馬が息を吹き返した、だがこのまま突っ走っても包囲網を突破出来ない。
集中砲火を食らってぶっ倒されるだけだ、ならば…!)
覚悟を決めた二階堂は、項垂れるノアにこう諭す。
「ノア、お前馬は乗ったことあるか?」
「…ま、まぁ…」
「そうか、それを聞いて安心した、さっき馬の一頭が息を吹き返したんだ。
お前はこいつに乗ってここから逃げろ」
「ど、どういうこと?この場は包囲されてるんじゃ…」
すると二階堂は、涙を手で拭くノアに背を向け、馬車の扉に手をかけた。
「俺が奴らの注意を引きつける、そうすればお前はこの場から離れられるだろ」
「!?な、何言ってんのよアンタ!?馬鹿なことはやめて!!相手は魔法で四方を囲んでいるのよ!?」
「だが他に生き残る術はない、誰かが奴らの包囲を解かないと、馬に乗ろうがこの場からは逃げられない」
「だからってアンタが犠牲になっていい理由にはならないわよ!死ぬつもりなのアンタ!?
ねぇ!考え直して!」
ノアが涙跡を残した目で、二階堂に訴えかける。
しかし彼は背を向けたまま、彼女にこう返した。
「お前とは短い付き合いだが、やっぱ元気な声がよく似合う。
さっきの悲しい啜り泣きなんかより、よっぽどな」
二階堂は馬車の扉を開いて、外の敵たちに姿を晒した。
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