異能力者の異世界冒険譚 〜能力は一人一つまでのはず…え?魔法使い?〜

空の小説マン

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序章 異能力者転生編

第24話 各々の成果

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戦いに勝利した二階堂は、ミイラとなり倒れたルヒトの首を掴み、強く問いただした。

「何故お前は王都を襲った!?オリエリンとはどんな繋がりがある!?
 知っていることを全て話せ!!」

「だ…誰が…話すものか…!我々は同志を…売るような真似はしない…!
 わ、私は…任務を失敗した…ならケジメを…つけるのみ…!」

ルヒトは胸元に手を当て、最後の力を振り絞る。

「っ!!な、なに!?」

能力を使用したルヒトは、自身の心臓を瞬間移動させ、口を割らないよう自害した。
あまりに突然のことで、二階堂は唖然とするも、ルヒトの最後の行動に、ただならぬ忠義を感じた。

「…コイツは悪党だったが、強力な能力を持ちつつ、自身の命を捨てる覚悟を持った男でもあった。
 元の世界では、かなり気合の入った能力者だったんだろう。そんな男を従えているオリエリンは一体…」

二階堂が首から手を離し、戦いの後の静けさに身を晒していると、
路地裏の陰で鬼灯が、意識を取り戻したのを視認する。

「う…うぅ…」

「鬼灯!!目が覚めたのか!待ってろ、すぐに立たせて…」

二階堂が彼女へ近づこうとすると、足に受けた傷から激痛が走った。

「うぐっ!!」

「に、二階堂…!大丈夫だ!アタシは自分で立てるから…」

立ち上がった鬼灯は、二階堂の肩を担いで歩行を補助する。

「手ェ貸すぜ、傷はお前のほうが深いだろ、肉が少し抉れてるじゃねえか。
 足が使えなくなる前に、すぐ教会へ連れてってやる」

二階堂達はヨロヨロと街道を歩き、教会へと距離を進めた。


かたや噴水の前での戦いを終えたノアも、
緊張や疲労から解放され、ドサリと地面に座り込んだ。

彼女が視界を広げると、周囲を民衆が囲っているのを確認し、ノアは急いで自身の姿を隠した。

なにせ彼女は今、恐ろしいガーゴイルの姿なのだから。

「っ!?ア、アナタ達避難したはずじゃ…!み、見ないで!!私を見ないでっ!!」

蹲り非難や畏怖の雨から耳を塞ぐノア、しかし彼女へ贈られたのは、予想外のものだった。

「うぉおお!!吸血鬼の嬢ちゃんが街を救ってくれたぞ!!」

「アンデットから私達を守ってくれてありがとう!!感謝するわ!!」

賞賛の声と拍手の音を市民達から受け、ノアが困惑した表情を見せる。
すると後ろから、ゆっくりとロスが歩いてきた。

「もし化け物の姿ってだけで怯えられると思ってたなら、王都の人達をみくびりすぎ。
 皆受けた恩には、素直に感謝するいい人達よ。偏見も何も関係なくね」

「そ、そうだったの…よかったぁ」

安堵するノアへ諭したロス、すると彼女はフラフラと膝から崩れ落ち、地面に倒れてしまった。

「ロスちゃん!ま、まださっき受けた傷が堪えてるんだわ…!早く治療しないと!!」

ノアが通常形態に戻ると、ロスを担いで医療施設へ急ごうとすると、
民衆達をかき分け、騎士団の騎士らがノアの元へ近づいてきた。
集まってきた騎士達の中央から、騎士団長のエドナが姿を現す。

「よくやってくれた。ノアさんとロスのおかげで、
 市民への被害を出さずに済んだ。本当に感謝している」

「あ、アナタは騎士団長のエドナさん!?ご自身で足を運ばれたんですか!?」

「二人が倒れてしまった時、助けてあげられるようにね。
 だが君達は見事アンデット達を撃破してみせた、その強さに敬意を表すよ。
 …と、それどころではないのだったな、今すぐ我々が教会まで案内しよう」
 
エドナは騎士団専用の馬車にノア達を乗せると、
医療施設を兼ねた王都の教会へ治療を受けに行った。



馬車が教会まで辿り着くと、ノア達は扉を開き、中へと足を踏み入れる。

「すまない!騎士団の者だ!怪我人がいるのだが、手当てしてはもらえないだろうか?」

「急にごめんなさい!小さな少女が一人倒れているの!助けてあげ…あっ!?」

治療を懇願するノアが教会の中を見ると、そこには治療魔法を受けている二階堂の姿があった。

「の、ノア!?お前どうしてここに!?」

「それは私の台詞よ!!というかその傷…まさか!?」

「ああ、こっちも交戦してたんだよ。どうやら連れの少女の状態を見るに、お前らも戦ってたようだな。
 まぁ話は後でも出来る、今は治療師さんに回復してもらえ」

すると数人の回復術師がノアとロスに歩み寄り、治療魔法をかけて傷を癒した。
胸の傷が回復し、ロスが意識を取り戻す。目を覚ました彼女へ、姉のエドナは優しく語りかける。

「え…エドナお姉ちゃん…」

「よく頑張ったなロス、お前のおかげで市民は救われたぞ。本当に自慢の妹だ」

「え…エヘヘ…」

姉妹が仲睦まじく微笑みあっていると、二階堂はロスへ既視感を覚えた。

「ん?あの少女、ギルドの試験で見た気が…」

「どうしたの二階堂?」

「あ、いや、なんでもない」

ノアの言葉を二階堂が受け流すと、二人はお互いの首尾について確認しあった。

「それで?色々大変だったけど、アンタは資金を工面出来たの?」

「フッ、そりゃあコイツを見てみりゃ分かる」

二階堂は持ってきた袋の口を開き、中に入った大金をノアに開いてみせた。

「全部で金貨六百枚ある、当分は遊んで暮らせるぞ」

「ちょ!?ちょっと稼ぎすぎじゃない!?一体何したら手に入るのよ!?」

「ちとドラゴン退治に行ってきたのさ、Sランク冒険者のコイツと一緒にな」

二階堂は後ろの椅子に座った鬼灯を紹介し、彼女もノアに自己紹介をした。

「おっす!アタシは二階堂のダチで鬼灯彰ってんだ!
 アンタが二階堂の言ってた仲間ってやつか?よろしくな!!」

「ええ、二階堂が随分お世話になったみたいね。私はノア、吸血鬼よ。よろしく」

二人が手を取り合い握手すると、二階堂はノアに別れた後のことを尋ねる。

「そっちの首尾はどうなんだ?さっき入ってきた騎士たちは、
 自分らを騎士団と名乗ってたが、交渉は成功したのか?」

「うーん、ちょっと難航しててね…
 でもアンタが想像以上の成果を上げてくれたんだもの、私も負けてらんないわ」

ノアはエドナに頭を下げ、村へ警備を寄越すよう再度頼み込んだ。

「お願いよエドナさん。お世話になった村へ恩返しがしたいの、警備を送ってくれないかしら?」

「う、うむむ…確かに街を救ってくれたノア君の願いは、こちらも叶えてあげたいのだが…
 人手不足が深刻なのはどうにもならんのだ、すまない」

「そ、そんな…」

再び要求を断られてしまったノアは、冷たい床に崩れ落ちる。

すると教会の扉が音を立てて開き、一人の少年が姿を見せた。

「彼女は僕の用件を代わりに聞いてくれているんだ。
 本人である僕が頼みに行くのが当然の筋さ」

「あ、あなたは…!」

中にいた者全員が扉の方へ視線を移すと、そこには身なりの整った姿をしたエットが居た。

「エット!!よくここが分かったな!!心配したんだぞ!!」

「エットくん!!ようやく合流できたわね!大事なかったかしら?」

「フフ、大事なかったかと言われれば微妙だけど、でもなんとか顔を出すことができたよ。
 お待たせ、二人とも」

二階堂達に微笑みかけるエットに対し、エドナは驚いた表情を見せる。

「ど、どうしてあなたがここに!?騎士団は何も報告を受けていないのですが…」

「うんそうだろうね、なにせ国の上層部が秘密にするよう決断したんだから、
 僕がこの地を踏めるのも、特例中の特例だよ」

エットとエドナの話について行けていない二階堂は、疑問を二人に投げかける。

「ちょっと待ってくれ。国の上層部とか、この地を踏めないとか、エットがここにいるだけで、
 何故そんな話が出てくるんだ?そもそも彼は、なんで王都への入場を止められたんだよ!?」

疑問や不満を募らせた二階堂の言葉を聞き、エドナはエットの顔を見つめた。

「…彼らにはお話ししていないのですか?」

「うん、まあ話せるわけないしね。いいよ、僕から明かすから」

するとエットは改めて姿勢を正し、二階堂達へ衝撃的な真実を打ち明ける。

「村の少年エットっていうのは、僕の仮の姿なんだ。
 本当の名前は“クリスベルト・ルデリシア“、王都を中心に領土を広げる、
 ルデリシア王国の“元”第一王女さ」

”彼女“の突然の告白を聞き、二階堂とノアは唖然とした表情のまま、その場に固まってしまった。
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