異能力者の異世界冒険譚 〜能力は一人一つまでのはず…え?魔法使い?〜

空の小説マン

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序章 異能力者転生編

第26話 勇者隊結成

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「…へえ、王都に向かわせた二人が、倒されてしまうなんてねぇ」

とある屋敷の中でマントを羽織った女が、報告する部下に反応を示した。

「はい、アンデットにした魔術師も、元の世界から来た能力者も、王都内で撃破されたとのこと…」

「ふぅん、なら私も新たな一手を打たないとね、なにせ優秀な部下を二人もやってくれたんだもの。
 今度こそ本気で王都を落としてやるわ」

女は大きな檻を見つめ、中にいる“怪物”に対して語りかける。

「ねぇ?私の可愛いペットちゃん?」

陰りある不敵な笑みを浮かべながら、女は“怪物”を王都へと向かわせた。



一方王都では二階堂達がベレア王女と謁見しており、
ベレアが勇者隊の結成について口にすると、二階堂は首を傾げて問い尋ねた。

「すまないベレア王女、勇者隊ってのは一体なんなんだ?」

「貴方はこの世界に来て日の浅い異世界人ですものね、知らなくて当然です」

ベレアは咳払いをし、勇者隊について解説し始めた。

「今から五年前、この世界に厄災が降り注ぎました。王国は邪悪な厄災に対処する為、
 国の中から精鋭達を集め、勇者隊を結成するよう指示したのです。

 勇者隊の戦いにより厄災は封印され、世界に平穏が訪れた折、勇者隊は解散しました。
 ですが今回のアンデット騒動、再度勇者隊を結成し、問題解決に尽くした方が賢明だと思うのです」

ベレアが説明を終えると、聞いていたエットが口を開く。

「じゃあベレア、勇者隊を結成するとして、今回新たにメンバーを集めるのかい?
 それとも五年前の精鋭達を招集させるのかい?」

「…五年前の勇者隊メンバーは、大半招集が難しい状態です。
 ですから此度は、新たに勇者隊の人員を決めたいと思います」

ベレアは、二階堂達に視線を向けて話を続ける。

「二階堂さん、ノアさん、鬼灯さん、そしてお姉様。
 貴方達が勇者隊として、事件の首謀者に対処してほしいのです!」

ベレアに勇者隊として推薦された四人、その中でノアは驚いた表情を見せた。

「わ、私達が勇者隊!?い、いいのかしら?私達で…」

ノアは二階堂達に視線を移すと、三人は揺るぎない決意を激らせる。

「勇者隊だろうが、そうじゃなかろうが、俺はハナから黒幕を止めるつもりだ。
 元の世界の自警団として当然のことだからな」

「にしし!アタシだって名誉や名義に縛られるつもりはないぜ?
 国が応援してくれるなら礼は言うけどよ」

「ルデリシア王国の為になるなら、そしてベレアの力になれるのなら、
 僕はどんな地位でだって戦ってみせるさ」

二階堂、鬼灯、エットの三人に覚悟を見せられ、ノアは一息ついて腹を括った。

「いいわ、私も黒幕と戦わなきゃいけない責任があるもの、
 勇者隊としてこの戦いに、決着をつけさせてもらうわよ」

四人全員の意見が一致し、ベレア王女は笑顔で頷く。

「志を持った貴方達ならば、引き受けてくれると思っていました!
 勇者隊として戦いに身を投じてくれれば、王国からの支援を受けることが出来ます。
 我々も全力で貴方達を支えますので、共に王国を危機からお救い下さい」

するとベレアは王座から立ち上がり、四人の元へ歩み寄った。

「私も勇者隊の一員として王国の為に立ち上がります、皆様のお力に少しでもなりますよう…」

「ちょ、ちょっと待て、王女の君も行くのか!?それは流石にマズイんじゃ!?」

驚く二階堂に対し、エットが得意げに口を開いた。

「フフ、こう見えてベレアは前勇者隊の指揮隊長だよ、五年前の厄災封印に大きな貢献をした一人なんだ。
 でもいいのかいベレア?君が居なくなったら王都は…」

エットがベレアに言葉を送り終える刹那、突如大きな揺れが王宮を襲った。

「っ!?な、なんだ!?」

二階堂達が警戒を強めると、謁見室の扉が開き、警備兵が慌てて報告した。

「申し上げます!王都南の防壁が、アンデットの大群に被害を受けたとのこと!
 只今騎士団と門番が連携を取り、外壁付近で交戦している模様です!!」

「なんですって?被害を受けたのですか!?王都の防壁はアンデットの攻撃程度で動じるほど、
 脆弱ではありません!一体何が攻めてきたというのですか!?」

「そ、それがアンデットの群れと共に、巨大な魔物が攻め込んできたとの報告が…」

不安そうな表情を浮かべるベレアに対し、二階堂達は頷いた。

「今こそ勇者隊として、俺達が国を守る時だろ」

「そうね、せっかく王女様が信頼してくれたんだもの、私達だって応えなくちゃ」

「ベレア、ここは僕達に任せてよ。君は国の王女として、市民の皆に出来ることをしてほしい」

新たに結成された勇者隊を信頼し、ベレアは王都の未来を彼らに託す。

「…分かりました、ではこれより南の防壁に向かって下さい。
 王国の民が住むこの王都を、よろしくお願いします」

ベレアに王都の防衛を頼まれた二階堂達は、すぐさま王宮を後にした。
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