男とか女とか

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 クラスが変わることもなく一時は安心したが、今後を考えるとやはり面倒くさいものがある。
東はもちろんのこと、四組と五組にいるΩともなるべく接触しないよう気を付けねばならない。
四組に一人、五組に二人Ωがいるらしい。
元々四組と五組には知り合いもおらず関わりは普段からないのだが、念のためと芦田さんから名前も教えてもらった。
顔を見ればわかるかもしれないが、やはり名前を聞いただけではわからなかった。

「私達もできるだけフォローするから、困ったことがあれば遠慮せず頼りなさいね」
「はい、ありがとうございます」
「俺と芦田さん以外、恐らく三年の各担任の先生にも連絡がいくだろうからな」

 やけに一人で抱え込むなと念を押す二人だが、素直に従っておいたほうがいいだろう。
全てにはいはいと頷き早々に話を終わらせ教室へと戻ったところで昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。

「理々子!どうだった?」
「移動なし」
「良かった……!」

 小さくガッツポーズをする志帆にハンズアップで返した。
ここまで喜んでもらえると普通に嬉しいものだ。
すっかり安心したらしい志帆は授業に入る頃にはすっかりいつも通りに戻っていた。
そんな志帆とは逆に、私は未だにいつものペースを取り戻せずにいた。

 今まで通りの生活を続けたいのなら最低限の“対策”は必須だ。
Ωとの接触を避けようにもその対象が誰であるかを正確に把握しておかなければ避けようもない。
これは志帆を巻き込んで早速放課後から取り掛かろうと決めた。

(いっそ全部無視できたらいいのに)

 午前中よりはまだマシだったが、今度は睡魔に苛まれていた。
結局、五六限の授業もあまり集中できず放課後を迎えた。

「わぁ……ドンピシャだ」

 放課後、誰もいない屋上にて教えてもらったΩの名前を志帆に伝えるとそう返ってきた。

「え、噂とか出回ってんの?」
「うん。見事に全員合ってる。噂があったから今助かってるけど、広めた人ってΩの人のこと全然考えてないよね」
「面白半分というか、話題のネタとしてさして考えもしてないんじゃない」

 可哀想ではあるが、そこに深く突っ込んでは余計な首でしかない。
二人で暫し沈黙した後、話を進める。
Ωの人達は明日それぞれ志帆に教えてもらうことになった。

「やっぱり薬だけじゃ駄目なんだね」
「……飲んですぐ効果が現れるわけじゃないからね。ある程度抑制されるだけでフェロモンが遮断されるわけでもないし」
「一日一粒だっけ?んで、副作用で眠くなるとか……学校でその副作用って最悪じゃんね」

 志帆の言う通りだ。実際、五六限の授業は睡魔との戦いだった。
今も若干ぼんやりとしているが、冷たい外気のお陰で目が冷めてきた。

「そうそう気になってたんだけどさ、東君何で今日に限って朝早くに学校来たんだろう?」
「いつも遅いの?」
「朝礼始まる寸前くらいによく見かけるよ」
「志帆もいつもそのくらいに来るんだったね」

 そうなると東がいつも通りに登校していればこんな心労もなく過ごせていたかもしれない。
過ぎたことはどうしようもないが、そう思わずにいられない。

「とにかく東君は要注意ってことかな。他のΩの人は元々静かっていうか大人しい人達だし、こっちから関わらない限りは心配ないでしょ」
「そうなんだ。じゃあこれから教室行く時は五組側からがいいかな」
「うんうん、遠回りになるけどいい運動になると思えばいいよ」

 そんな風に志帆と一緒に対策を考え、少し気分を持ち直し帰路につくことができた。
だか翌日、思い知ることになる。
私達はやはり相容れないのだと。
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