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圭の両親との話し合いは呆気ないほどに終始和やかな雰囲気だった。
圭の父親一成は代々からの資産家で、一成の代で立ち上げた会社は今やホテル業界最大手である。
母親美緒里もまた由緒正しき家系の出で、表向きは専業主婦とのことだが、夫の仕事にちょっかいを出す仕事もしているとお茶目な自己紹介をしてくれた。
両方共にαであり、子供は圭一人とのことだった。
その事に首を捻る私に、一成の母(女)と美緒里の母(男)がΩであることが関係しているかもしれないと話してくれた。
今でもバース性の遺伝関連は解明されていない部分が多々あり、こういったケースも稀だがあるらしい。
圭の両親含め圭の育った環境を知ったのは今日が初めてであったが、圭の両親は私自身はもちろんのこと、私の家族や親族に至るまで調べ尽くしているらしかった。
それもこれも一人息子のためであり、そこに確かな愛情があることが伝わってきた。
「つい最近まで報告を聞いていたものでね」
「そうね。他人って感じがしないのよね」
と、私ですら知らない身の回りの情報を和やかに語られ正直薄ら寒くなった。
プライバシーとはなんだろうかと他人事のように思いつつ、深堀りすることなく相槌をうつに徹した。
これに対して圭はかなり怒っていたが、私としては後ろ暗いことなどないし、生活に支障をきたされたわけでもないし特に構わなかった。
家族や親族についても、まさか自分達が調べられているなど気付きもしていないだろう。
そうしてお互いの事や、圭との出会いから今に至るまでについて話し、ついに将来へと話題は移る。
「まず結論としてだが、私達は君を歓迎するよ」
「偉そうな物言いしてるけど、とっても喜んでるのよ」
「余計なことは言わなくていい」
「ふふふ」
あまり表情の変わらない一成の横で穏やかに微笑む美緒里。
図らずも夫婦仲を見せつけられた息子は私の隣でなかり険しい顔で恥ずかしそうにしている。
「この人らの言うこと、あんま気にすんなよな……」
そう言いつつも、両親から明確なお許しを貰えたことに圭も安堵しているのが伝わってくる。
番だからというのが一番の理由だろうが、理由などこの際どうでも良かった。
大袈裟でも何でもなく、今日という日は私の人生の中で大きな山場だった。
それを最高の形で越えることが出来たせいか、一気に緊張の糸が切れてしまった。
「あ?理々子!?」
「え?あれ?」
初めに気付いたのは圭で、目元を優しく拭われ、やっと自分が泣いていることに気付いた。
圭の両親も私の涙に驚いていたが、やがて優しく微笑んだ。
「本当にいい人に出会えて良かったわね」
「息子共々宜しく頼む」
「何笑ってんだよ!あんたらのせいだろ!多分!」
ガミガミと怒る圭など気にもせず、美緒里がそうだわと喜々として声をあげる。
「もう日も暮れてしまっているしお夕飯、是非食べていって頂戴」
「い、いいんですか?」
「勿論だ。親御さんには私から連絡しておこう」
「あら、そしたら私も挨拶しなくっちゃ」
「おい!」
美緒里の提案にそれは名案だと一成は素早く携帯を取り出し、当たり前のように町宮家に電話をかけている。
その隣で挨拶する気満々といった美緒里。
明らかにはしゃいでいる両親を見て圭が恥ずかしいからやめろと弱り果てた声をあげる。
「ぶふっ」
「……くそっ笑うなよ」
怒涛の展開すぎていつの間にか涙は引っ込み笑いがこみ上げてきた。
圭は私に手を振り払われたことを気にしてか、一定の距離を保ったまま恨めしげに私を睨む。
近付きたい欲を抑えてか、隣でソワソワとしている番に一層、愛おしさが募る。
「圭、さっきはごめんね」
「だから!今そういう顔すんなって!」
咄嗟に顔を背ける圭に手だけ伸ばし、ソファーに置かれたその男らしい指を優しくなぞれば途端に耳が赤く染まる。
圭の両親が電話で盛り上がる中、私達は指先を絡ませ確かな幸せを噛み締めていた。
圭の父親一成は代々からの資産家で、一成の代で立ち上げた会社は今やホテル業界最大手である。
母親美緒里もまた由緒正しき家系の出で、表向きは専業主婦とのことだが、夫の仕事にちょっかいを出す仕事もしているとお茶目な自己紹介をしてくれた。
両方共にαであり、子供は圭一人とのことだった。
その事に首を捻る私に、一成の母(女)と美緒里の母(男)がΩであることが関係しているかもしれないと話してくれた。
今でもバース性の遺伝関連は解明されていない部分が多々あり、こういったケースも稀だがあるらしい。
圭の両親含め圭の育った環境を知ったのは今日が初めてであったが、圭の両親は私自身はもちろんのこと、私の家族や親族に至るまで調べ尽くしているらしかった。
それもこれも一人息子のためであり、そこに確かな愛情があることが伝わってきた。
「つい最近まで報告を聞いていたものでね」
「そうね。他人って感じがしないのよね」
と、私ですら知らない身の回りの情報を和やかに語られ正直薄ら寒くなった。
プライバシーとはなんだろうかと他人事のように思いつつ、深堀りすることなく相槌をうつに徹した。
これに対して圭はかなり怒っていたが、私としては後ろ暗いことなどないし、生活に支障をきたされたわけでもないし特に構わなかった。
家族や親族についても、まさか自分達が調べられているなど気付きもしていないだろう。
そうしてお互いの事や、圭との出会いから今に至るまでについて話し、ついに将来へと話題は移る。
「まず結論としてだが、私達は君を歓迎するよ」
「偉そうな物言いしてるけど、とっても喜んでるのよ」
「余計なことは言わなくていい」
「ふふふ」
あまり表情の変わらない一成の横で穏やかに微笑む美緒里。
図らずも夫婦仲を見せつけられた息子は私の隣でなかり険しい顔で恥ずかしそうにしている。
「この人らの言うこと、あんま気にすんなよな……」
そう言いつつも、両親から明確なお許しを貰えたことに圭も安堵しているのが伝わってくる。
番だからというのが一番の理由だろうが、理由などこの際どうでも良かった。
大袈裟でも何でもなく、今日という日は私の人生の中で大きな山場だった。
それを最高の形で越えることが出来たせいか、一気に緊張の糸が切れてしまった。
「あ?理々子!?」
「え?あれ?」
初めに気付いたのは圭で、目元を優しく拭われ、やっと自分が泣いていることに気付いた。
圭の両親も私の涙に驚いていたが、やがて優しく微笑んだ。
「本当にいい人に出会えて良かったわね」
「息子共々宜しく頼む」
「何笑ってんだよ!あんたらのせいだろ!多分!」
ガミガミと怒る圭など気にもせず、美緒里がそうだわと喜々として声をあげる。
「もう日も暮れてしまっているしお夕飯、是非食べていって頂戴」
「い、いいんですか?」
「勿論だ。親御さんには私から連絡しておこう」
「あら、そしたら私も挨拶しなくっちゃ」
「おい!」
美緒里の提案にそれは名案だと一成は素早く携帯を取り出し、当たり前のように町宮家に電話をかけている。
その隣で挨拶する気満々といった美緒里。
明らかにはしゃいでいる両親を見て圭が恥ずかしいからやめろと弱り果てた声をあげる。
「ぶふっ」
「……くそっ笑うなよ」
怒涛の展開すぎていつの間にか涙は引っ込み笑いがこみ上げてきた。
圭は私に手を振り払われたことを気にしてか、一定の距離を保ったまま恨めしげに私を睨む。
近付きたい欲を抑えてか、隣でソワソワとしている番に一層、愛おしさが募る。
「圭、さっきはごめんね」
「だから!今そういう顔すんなって!」
咄嗟に顔を背ける圭に手だけ伸ばし、ソファーに置かれたその男らしい指を優しくなぞれば途端に耳が赤く染まる。
圭の両親が電話で盛り上がる中、私達は指先を絡ませ確かな幸せを噛み締めていた。
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