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第六章 発動! 最後の作戦
第六章 発動! 最後の作戦 1
しおりを挟む第六章 発動! 最後の作戦
* 1 *
寝付くことができなくて、もぞもぞと身体を動かすと寝袋から抜け出すことができた。
ファスナーを開けてテントの外に出る。
灯りひとつない真っ暗な湖畔のキャンプ場の空気は、澄み切っていて冷たかった。
身体を一度震わせながらも、僕は靴を履いて出しっぱなしにしてあるテーブルセットの椅子に座る。
――あぁ、これはあのときの夢だ。
そのことに気づいた僕は、本当は見えていたはずのない幼い僕の身体を見下ろしていた。
幼い僕とともに、僕は目の前に広がる情景に目を向ける。
春先の、薄明が始まる少し前の時間だったんだと思う。
南に広がる湖の向こう側から、白いものが立ち上っているのが見えた。
星は無数と言えるほど多くて、父さんに星座の結び方を習っていたのに、それができないほどだった。
そして波ひとつない湖には、もうひとつの星空が広がっていた。
綺麗で、とても綺麗で、僕はそのとき言葉にすることすらできず、ただぽかんと口を開けていた。
でもなんでだろう。
幼い僕の頬には、涙がこぼれていた。
そのとき僕がどんなことを感じていたかを、僕はもう憶えていない。
幼すぎた僕が生まれて始めてみるほど綺麗なものを見て感動しながら、でも何故か、悲しいと感じていたことだけは憶えてる。
何を悲しんでいたのか、見下ろす幼い僕からは、知ることができない。
「綺麗だな」
そう言って僕に上着をかけてくれたのは、父さん。
椅子を引っ張ってきて幼い僕の隣に座った父さんは、僕と一緒に星空を眺める。
「とっても綺麗で、――遠い。遠すぎて、悲しくなるくらいだ」
「うん」
指で涙をぬぐってくれた父さんは、僕に微笑みかける。
「でも遼平。お前が大人になる頃には、あの星にいまよりもう少し近づくことができるんだ」
たぶんその頃にはステラートブリッジ計画に関わっていただろう父さんの笑みは、夜空の星より輝いて見えた。
「父さんは、あそこに行きたいの?」
「あぁ。行きたい。いや、絶対に行く。あそこに行くためのものを、父さんはこれからつくっていくつもりだ」
そのときの僕は父さんの言葉をよく理解できなかった。
でも星よりも輝いて見える父さんのことを、僕はずっと見ていたことを憶えてる。
「僕はずっと見ていたい」
「お前なら大丈夫さ。父さんよりももっと遠くまで見に行ける」
「僕は、僕が見たいのは――」
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