転生受付嬢はもう恋なんてしない――なのに最強剣士からの溺愛が止まりません!

人妻あず。

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「重力増加(グラビティ)」

床が軋み、重力が突然二倍にも三倍にも跳ね上がった。

「かはっ」
私は耐えきれずまた血を吐いた。
ソーマが膝をつき、アレクが奥歯を噛みしめながら踏ん張る。

「っ……重っ……!」

レンは剣を地面に突き立て、強引に立ち姿勢を維持する。

「さすが。
 でも――わたしが本気を出したら、あなたたち剣士だけじゃどうにもならない」

マリアの足元で魔法陣が展開される。

「……関係ない!」

重力の壁を踏み砕くように、レンが前へ跳んだ。
体勢は歪んでいるのに、剣は一直線。
気合だけで魔法陣の縁まで踏み込む。

だが、

指先ひとつ。

その動きで、空間がたわみ、透明な衝撃がレンの腹に突き刺さる。

「ぐっ……!」

レンは壁に叩きつけられ、床に転がった。

「隊長!!」
カイルが叫ぶ


アレクがぼそりという

「……ソーマ、レンを援護しろ。
 マリアの詠唱を一秒でも止めれば勝機はある」

「了解っ!!」

ソーマがレンの元へ走ると同時に、アレクの足元に青い魔力が浮かび上がった。

「防御結界」

マリアの重力魔法を相殺する薄い膜が、アレクと私を包む。

「お願いだからリーナを渡してよ」

「マリア、もう止めて⋯⋯」

マリアの眉がピクリと動いた
カイルがレンを引き起こす。

「隊長、立てます? 立てますよね!?
 リーナさんがああなってんですよ!?
 立ちますよね!!」

「……うるせぇ……立つ……!」

レンの目が、完全に戦士のそれに戻った。

「雷撃」

マリアの背後に三つの幻影が生まれ、同時に雷撃を放つ。

アレクが剣で受け、ソーマが横へ飛んで回避、
レンが真正面から突っ込む。

雷が肌を焦がしても、止まらない。

「マリア!!」

レンの叫びは悲鳴に近く、祈りにも似ていた。

「まだ間に合う!
 リーナを渡せなんて……そんなこと言うなよ!!」

その一言だけで、マリアの瞳が揺れた。

ほんの、コンマ一秒。

その隙に――
アレクが足元で魔法陣を展開し、叫ぶ。

「レン!! 今だ!!」

レンが剣を振り上げた。
渾身の一撃が、マリアの防御結界を大きく凹ませる。

バリンッ!!


剣先が、マリアの喉元でぴたりと止まる。
レンの声はただまっすぐだった。

「マリア──自首しろ。まだ戻れる」

その瞬間。

「突風」

空気が弾けるような轟きと共に、強烈な風が横殴りに吹き荒れ、レンとマリアの身体が同時に宙へ跳ね飛ばされた。

「きゃっ──!」
「……っぐ!」

背中が壁へ叩きつけられ、石が鈍く軋む。

「マリア、詰めが甘いですよ」

足音を忍ばせて現れたのは──補佐官ヴェルナー。
その眼差しは、氷を細く割ったように冷たい。

「やっぱり……私には……人殺しなんて、無理……」
マリアが顔を覆い、涙をこぼす。

ヴェルナーは嘆息した。

「そんな弱気だから、ゾルフのような男に付け込まれるんです。私が先に手を打たなければ──あなたはあの場で、犯されていましたよ」

「ゾルフのことは……感謝してる!でも、ロイズまで殺す必要なんて……なかった!」
涙声で訴えるマリア。

「我々の正体に気づいた者を生かしておく方が、よほど愚かです。処理は妥当でした」

私は呆然と呟いた。

「……犯されそうって……」

マリアは涙で濡れた頬を持ち上げ、かすかに笑った。

「アイツは……最低だったのよ。それだけ」

「あいつが……ゾルフとロイズを殺した犯人ってことか……」
レンがヴェルナーを見据える
「そのようだな」
アレクが頷く
「アレク、リーナを頼む」
レンが剣を構える

「ギルド最強剣士と事を構える気はありませんよ。
……ただ、見逃してはくれないでしょうね?」

挑発混じりの笑みを浮かべるヴェルナー。

「当たり前だ」
レンが剣先をわずかに下げ、狙いを定める。

「防壁」

ヴェルナーの足元に魔法陣が広がり、
厚い光の膜が彼を包み込んだ。

「これで物理攻撃は一切通りません」
勝ち誇ったように肩をすくめる。

「マリア、こちらへおいで。
お前にはまだ――利用価値がある。
教団が、今まで通り守ってやる」

マリアは唇を噛んだ。

その言葉に、レンの瞳がギラリと光る。

「……『利用価値』ねぇ」

声は低く、怒りを噛み殺していた。

レンが一歩踏み込み、
瞬間移動のような速さで一直線に斬りかかる。

だが――

ガンッ!!

障壁が青白い閃光を散らし、
刃を弾き返した。

「ヴェルナー……やるな」
レンは息を吐きながら言う。

「ふふ。誉め言葉として受け取っておきましょう、
最強剣士」

ヴェルナーは心底楽しそうに笑む。

その時

「……マリア?」
アレクが気づく。
マリアの指先が、震えながらも、ある一点に向けられている。

――ヴェルナーの防壁の“魔力構造の継ぎ目”。

「あたしは……」
マリアの呟きは、誰に向けたものでもなかった。

次の瞬間。

マリアの指先が、ヴェルナーの背後へ突き出された。

「中和!!」

淡い光がほとばしり、
ヴェルナーの背後から、防壁の魔力が一気に崩れ始めた。

「――なっ!? マリア!!」
ヴェルナーが振り返る。
「――今だ!!」

アレクの叫びと同時に、
レンが床をえぐる勢いで前へ飛び込んだ。

崩れた魔法陣――そこへ狙いを定め、剣を横薙ぎに振る。

「くっ……! 障壁!!」

ヴェルナーは反射的に新しい魔法陣を展開し、
重厚な光の壁がレンの一撃を受け止めた。

火花と共に衝撃波が走る。

レンは口角を吊り上げた。

「危なかったです」
ヴェルナーが息を整えながら言う。

「甘いなおっさん」

レンの声は低く、確信に満ちていた。

その瞬間――
ヴェルナーの背後で、かすかな金属音が響いた。

カチャリ。

「……え?」

ヴェルナーが振り向くより早く、誰かの腕が彼の左手首をひねり上げていた。

「捕縛!」

「なっ――!!?」

ヴェルナーが目を見開く。

そこにいたのは、ソーマだった。

いつ入ったのか分からない。
防壁の内側、魔力の死角を突き、
いつの間にかヴェルナーの背中にぴたりと張り付いていたのだ。

「お前……どうやって――!」

叫ぶ暇もなく、
ソーマは迷いのない動きでヴェルナーの胴に足を絡め、
そのまま地面へ押し倒す。

「どりゃあああっ!!」

床に叩きつけられるヴェルナー。

「あ……がっ……!」

苦鳴を上げる彼の右手首にも、
ソーマは鮮やかな手つきで手錠をはめた。

カチィン!

魔力封印の符が光り、
ヴェルナーの魔力が一気にかき消える。

ソーマは息を弾ませながら言った。

「物理“攻撃”はだめなんだろ?
 ……切ってねぇし殴ってもねぇよ。
 これくらいの修羅場、何度もくぐってきてんだよ、俺らは!」

レンがゆっくりと剣を下げ、肩で息をつきながら近づく。

「……ナイスだ、ソーマ」

魔力の消えたヴェルナーは、
その場にがっくりと膝をついた。
抵抗の意思が、完全に折れていた。

「……バカな……こんな……子供に……」

レンはその横に立ち、静かに告げる。

「女を利用価値で測るような奴に、俺たちは負けない」

ヴェルナーの顔が歪む。

深く息を吐いた。

「――これで終わりだ」


「魔導警察だ!全員動くな!」
白いローブを着た魔導士たちがぞろぞろ入ってくる

「おっせーよ」

ソーマが舌打ちをする。
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