雨澤 稼穀

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   学

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 まなぶは産まれた時から、まなぶたりえていた。
 この名が学びの道へと誘っているかのように、学知を貪り喰らうそんな性格だった。
 祖母のもんに溺愛されもしている。
 欲しいと言えば大抵のものは、祖母の良識と目に叶う形で与えてもくれた。
 俗物にまみえたい欲求はことごとく打ち砕かれてゆく。
 まなぶと名付けたのも祖母だったようだ。
 名付けの瞬間など、わたしに知れるよしもないからだ。
 母は娘が欲しかったようだった。
 それはわたしが、端から見ていても感じれる程だった。
 それから壱年いちねん経たずして肆月しがつ、弟の宇学が産まれた。
 やはり名付けたのは、祖母のもんだった。
 母は心太と名付けたかった様だが、祖母や父、叔父叔母に押しきられた形で決着し弟は宇学となった。
 母はどうしても娘が欲しいようだった。
 翌年の参月さんがつ次の弟の参学が産まれた。
 この時は母もかなり練り通して、心太を推していた。
 母は娘が産まれた時の命名権を得てほくほくで心太を諦め引き下がり、次の弟は心太と名付けられず、やはり祖母に参学と名付けられた。
 漆度ななたびの時は経ちご懐妊、翌年母の執念が実り無事玉の様な妹が産まれた。
 祖母は昨年他界し、産まれながらに妹は祖母の産まれ変わりかのような、頑固そうな出で立ちと眼光を発していた。
 後にこの家を牛耳る事となるのだが……それは後の講釈で語るとしよう。
 母、ふみは、母と同じ干支の娘に純と名付けた。
 父、ぶんが『命名  純』と、庭にて陸尺ろくしゃくの筆を奮って書き記していた。
 むさ苦しく続いた拾男の末に、紅壱点こういってんの光明であったのかもしれない。
 余程に嬉しかったのであろう。
 今、思うと父も苦しんでいたのかもと……押し入れから出てきた、継ぎ接ぎだらけの黄ばみし和紙折り束を広げして。

 命名 純

 大事にとってたんだなと、しみじみ眺めして。
 押し入れの傍らに、くしゃくしゃにて半紙拾枚じゅうまいありて。
 手に取りし壱枚いちるの半紙、セロハンテープで接ぎはりして、母の思い父の思い重なり巡りけり……。
 
 命名 学
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