わたしだらけ

雨澤 稼穀

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わたしだらけ

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 巷で囁かれている噂が、独り歩きしている。
 噂が噂を呼んで、噂の噂が独り歩きしている。
 口から耳へ、耳から口へと、噂の噂が独り歩きしている。

「ねえねえねえ? わたしだらけって知ってる?」

 口々に、口伝てに、口癖に成る程に口にする。
 聞いて聞いて聞いて、聞いた聞いた聞いた。
 わたしだらけ、わたしだらけ、わたしだらけの噂の噂が、口から耳へ、耳から口へと電波に乗って、遠く離れたあなたの元へと、噂の噂が伝播する。
 この噂を聞いた者は、何人かに話さなければならないと言った様なチェーン縛りも無いとゆうのに……。
 噂を聞いた者は、不思議と「ねえねえねえ? わたしだらけって知ってる」と、噂を口にしているのです。
 誰が言い出しっぺかも知れない噂の噂、わたしだらけの噂を……。

「ねえねえねえ? 聞いた聞いた聞いた! ねえねえねえ? 聞いて聞いて聞いて? ねえねえねえ? わたしだらけって知ってる? なんかね? わたしだらけの事を話すとね! 昨日、何処其処にいたよね? とか、あれ? さっき駅のホームにいたよね? とか、聞いた人の目撃情報がどんどん集まってくるんだってさ! な訳ないよね! アハハハハ……」

 噂の噂が噂を呼んで、わたしだらけは伝播する。
 わたしの知らないわたしが、わたしの知ってる誰かの元へ……。
 わたしを知ってるあなたのまなこへ、わたしの知らないわたしが顔を出す。
 巷にわたしの知らないわたしが溢れ出す。
 わたしだらけが溢れ出す。
 わたしの深層心理の別のところで、わたしの知らないわたしが溢れてる。
 わたしの知らないわたしが溢れてく。
 わたしだらけが溢れてく……。
 わたしだらけの噂を聞いても、決して口にしちゃいけないよ。
 心にそっと留めて置かないと、わたしの知らないわたしが、わたしの噂を広めてゆくよ。
 噂の噂を広めてゆくよ。
 わたしだらけの噂の噂が広めてゆくよ。
 誰が言い出しっぺかは知らないけれど、わたしだらけの噂の真相は未だ闇の中である……。
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