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人は恋に踊らされる
国の情勢
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「おかえりなさい、ハヨン。休暇は充実していましたか?」
ハヨンは久しぶりに訪れたリョンヤンの執務室で、彼にそう声をかけられる。
「はい。王のお陰で楽しい時間を過ごすことが出来ました。」
ハヨンが思わず笑顔で答えると、リョンヤンもつられて微笑んだ。その時彼の手元を見ると、何やら執務に関する書を読んでいたようだ。その上、紙も折れた跡などがついていないので、つい最近手渡されたもののように見える。
「何か新しいお仕事ですか?」
「あ、あぁ。はい、そうなんです。せっかくお休みを終えたばかりなのに、ハヨンにも関わる仕事のようです。それでも構いませんか?」
「はい。私はいつもリョンヤン様の望むことならばなんでもいたしますよ。」
リョンヤンが手招きをしたので、卓に近づく。そして見せられた書には隣の国滓の第二王子の接待について書かれていた。
滓はこの燐の国と昔から交流があり、お互い国交を絶たれては国を存続できないほど影響のある国だ。主には商業での繋がりが厚く、国の利益の五分の一は滓との商売での利益だ。
滓は武器の生産にも長けており、どうやら燐の国としては同盟を結んで、武器の調達を確かにしたいらしい。
(そう言えばこの国は獣の力に頼ることが多いから、武器も近距離の物ばかり発達している。ただ、今の王はあんまり獣を使うことに抵抗があるから、長距離の武器を手に入れたいのか。)
滓は燐の東に位置する国だ。しかしその反対の西側の国、睦と燐は関係が悪くいつ戦が起きてもおかしくない状態だ。
この第二王子の接待の結果によってはこの国の運命が大きく変わるということがハヨンでも理解できた。
「今回の第二王子の訪問はあくまでも親交を深めるのが目的ですが、後にはこの国の運命に大きく関わるかもしれません。ですから絶対に失敗する訳にはいかないのです。だからこそ、あなたの腕を見込んで、この王子の訪問の際の護衛を頼みたい。」
「はい、謹んでお受けいたします。」
ハヨンはこんな外交の時にまで警護をさせてもらえるようになったとは、ずいぶんと信用を置かれたんだな、と他人事のように考える。本当はもっと長い間リョンヤンの私的な警護を任されるだろうと検討をつけていたのだ。
「今回も私は一貴族、もしくは女官の一人として紛れ込めばいいのですか?」
「いいえ。今回は私の専属護衛の一人として付いていてください。」
ハヨンはそのリョンヤンの答えに酷く驚いた。
(私はまだまだ未熟者だ。自分の腕に自信があるからこそこの職に就こうと試験に挑んだ訳だけど、まだ内々での貴族同士での会合での会議とか、この国での公のことにさえあまり任されたことが無い。それなのに他国の王子がいる慣れない空気の中で正しく物事を見極められるだろうか…)
ハヨンは早すぎる昇進故に自分の経験の浅さに不安があるのだ。嬉しい反面、この任務の重さに、緊張してくる。
そんな彼女の表情を見てとったのか、リョンヤンは笑顔で話を続ける。
「そんな顔しないでください。ハヨンは優秀な兵士ですし、礼儀正しい。ですからあなたが不安に思うことはありませんよ」
さすがハヨンを見込んで雇った主だからだろうか。ハヨンの考えていることもお見通しだ。
「でも、ハヨンの貴族や女官としての礼装姿が見れないのは少し残念ですね。この前の際に格好、すごく似合っていたのに。」
ハヨンはなんだか恥ずかしくて、どこかへ隠れてしまいたいような気分になった。
(なんでいつものように褒められるより恥ずかしいんだろう)
ハヨンは不思議でしょうがなかった。
ハヨンは久しぶりに訪れたリョンヤンの執務室で、彼にそう声をかけられる。
「はい。王のお陰で楽しい時間を過ごすことが出来ました。」
ハヨンが思わず笑顔で答えると、リョンヤンもつられて微笑んだ。その時彼の手元を見ると、何やら執務に関する書を読んでいたようだ。その上、紙も折れた跡などがついていないので、つい最近手渡されたもののように見える。
「何か新しいお仕事ですか?」
「あ、あぁ。はい、そうなんです。せっかくお休みを終えたばかりなのに、ハヨンにも関わる仕事のようです。それでも構いませんか?」
「はい。私はいつもリョンヤン様の望むことならばなんでもいたしますよ。」
リョンヤンが手招きをしたので、卓に近づく。そして見せられた書には隣の国滓の第二王子の接待について書かれていた。
滓はこの燐の国と昔から交流があり、お互い国交を絶たれては国を存続できないほど影響のある国だ。主には商業での繋がりが厚く、国の利益の五分の一は滓との商売での利益だ。
滓は武器の生産にも長けており、どうやら燐の国としては同盟を結んで、武器の調達を確かにしたいらしい。
(そう言えばこの国は獣の力に頼ることが多いから、武器も近距離の物ばかり発達している。ただ、今の王はあんまり獣を使うことに抵抗があるから、長距離の武器を手に入れたいのか。)
滓は燐の東に位置する国だ。しかしその反対の西側の国、睦と燐は関係が悪くいつ戦が起きてもおかしくない状態だ。
この第二王子の接待の結果によってはこの国の運命が大きく変わるということがハヨンでも理解できた。
「今回の第二王子の訪問はあくまでも親交を深めるのが目的ですが、後にはこの国の運命に大きく関わるかもしれません。ですから絶対に失敗する訳にはいかないのです。だからこそ、あなたの腕を見込んで、この王子の訪問の際の護衛を頼みたい。」
「はい、謹んでお受けいたします。」
ハヨンはこんな外交の時にまで警護をさせてもらえるようになったとは、ずいぶんと信用を置かれたんだな、と他人事のように考える。本当はもっと長い間リョンヤンの私的な警護を任されるだろうと検討をつけていたのだ。
「今回も私は一貴族、もしくは女官の一人として紛れ込めばいいのですか?」
「いいえ。今回は私の専属護衛の一人として付いていてください。」
ハヨンはそのリョンヤンの答えに酷く驚いた。
(私はまだまだ未熟者だ。自分の腕に自信があるからこそこの職に就こうと試験に挑んだ訳だけど、まだ内々での貴族同士での会合での会議とか、この国での公のことにさえあまり任されたことが無い。それなのに他国の王子がいる慣れない空気の中で正しく物事を見極められるだろうか…)
ハヨンは早すぎる昇進故に自分の経験の浅さに不安があるのだ。嬉しい反面、この任務の重さに、緊張してくる。
そんな彼女の表情を見てとったのか、リョンヤンは笑顔で話を続ける。
「そんな顔しないでください。ハヨンは優秀な兵士ですし、礼儀正しい。ですからあなたが不安に思うことはありませんよ」
さすがハヨンを見込んで雇った主だからだろうか。ハヨンの考えていることもお見通しだ。
「でも、ハヨンの貴族や女官としての礼装姿が見れないのは少し残念ですね。この前の際に格好、すごく似合っていたのに。」
ハヨンはなんだか恥ずかしくて、どこかへ隠れてしまいたいような気分になった。
(なんでいつものように褒められるより恥ずかしいんだろう)
ハヨンは不思議でしょうがなかった。
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