オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第3章《新たな怪異》

第27話《止まった世界》

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 俺たちは、七不思議の一つ「映してはいけない鏡」の怪異を乗り越えた。

 悠真を助け、ようやく"現実"に戻った——はずだった。

 だが、目の前に広がる光景は、異常そのものだった。


「……なんか、おかしくない?」

 彩華が辺りを見回しながら、低く呟いた。

 俺たちは確かに学校にいる。

 天井も、壁も、床も、俺たちが知っているものと変わらない。

 でも——"何かが決定的に違う"。

「これ……いつの時間?」

 悠真が、壁にかかった時計を見て呟く。

 俺も視線を向けた。

 時計の針は、ピクリとも動いていなかった。

「時間が……止まってる?」

「それとも、そもそも"動いていない"のか」

 悠真が眉をひそめる。

「どっちにしても、普通じゃないよね」

 彩華の声には、微かに警戒の色が滲んでいた。



「拓海、あれ……」

 彩華が指差した先。

 俺は思わず息を呑んだ。

 窓の向こうが、真っ黒に染まっている。

 街の明かりも、星も、月もない。

 外の景色が、完全に消えていた。




「……窓、何かに覆われてる?」

 悠真がゆっくりと近づき、指で窓をなぞる。

「いや……違う」

 俺も確認する。

 ガラスの手触りはそのまま。

 でも、そこに"向こう側"は存在しなかった。

 まるで、学校の外そのものが消えてしまったかのような感覚。



「これって……七不思議の一つ、じゃないよね?」

 彩華が、慎重に確認するように言う。

「……いや、七不思議にはこんなのはなかった」

 俺は、これまでに聞いた七不思議を思い出しながら否定する。

「でも、"何か"は起こってる」

 悠真が、窓から目を離さずに言った。



「……考えられるのは二つ」

 彩華が、静かに指を折る。

「一つは、"鏡の世界の影響がまだ残っている"」

「もう一つは?」

「"七不思議を終わらせるまで、現実に戻れない"っていう可能性」

 俺は、無意識に喉を鳴らした。

「つまり……"まだ終わっていない"?」

「そう」

 彩華が真剣な顔で頷く。



「悠真……お前はどう思う?」

 俺は、慎重に問いかけた。

 悠真は、窓を見つめたまま、何かを考えているようだった。

「……この窓……俺、見たことある気がする」

「え?」

 俺と彩華は顔を見合わせる。


「鏡の世界で?」

「いや……そうじゃなくて……もっと昔、どこかで……」

 悠真の声には、微かな迷いがあった。

「でも、"見たことある"って思うのに、はっきりしないんだ……」

「記憶が曖昧になってる?」

「かも……」

 悠真が、軽く頭を振る。

「でも、"嫌な感じがする"のは間違いない」

「悠真、"まだ終わらない"って言葉、誰の声だった?」

「……分からない。男だったような……女だったような……」

「はっきりしないのか?」

「夢の中みたいで、曖昧なんだ……」

 悠真は、こめかみを押さえながら眉を寄せる。

「ただ……"学校のどこかにいる"気がする」

「……"誰か"が?」

「うん」


「……七不思議のどれかが、"まだ起こっていない"?」

 俺は、これまでに解決した七不思議を振り返った。

1. 映してはいけない鏡(解決済み)
2. 保健室の夢(解決済み)
3. 旧校舎の階段(数えるたびに段数が変わる)(解決済み)

「……他にも、まだ四つ残ってるんだよな」

 彩華が、小さく息を吐く。



「じゃあ、次に起こるのは……」

 俺がそう言いかけた、その瞬間——。

ポロロン……

 遠くから、ピアノの音が聞こえてきた。


「……っ!」

 俺たちは、一瞬息を呑んだ。

「今の……聞いたよね?」

「……うん」

 それは、一定の間隔で響く、不気味なピアノの旋律。

 でも、"誰かが弾いている"ような音ではなかった。

「……七不思議の一つ、"夜の音楽室"」

 彩華が、ピアノの音に耳を澄ませながら言う。

「"夜の音楽室でピアノの音が聞こえたら、それは'誰かが弾いてる'んじゃない"」」

「つまり……」

「"何か"が鳴らしてる」

 ピアノの音は、俺たちを誘うように鳴り続けている。

「どうする?」

 悠真が、不安そうに俺を見る。

「……行くしかない」

 俺は、決意を込めて答えた。

 この異常な世界から抜け出すには、七不思議をすべて解決するしかない。

「……夜の音楽室、行ってみよう」

 俺たちは、ゆっくりと音のする方へ向かって歩き出した。

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