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第3章《新たな怪異》
第30話《沈黙する図書室》
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音楽室の扉を背にして、拓海は息をついた。
「……本当に終わったのか?」
悠真が不安げに呟く。音は消えた。影のような存在も、もう見えない。だが、妙な感覚だけが残っていた。
「終わったかどうかはともかく、少なくとも、次に進めるわね」
彩華は腕を組みながら、廊下の先を見やる。
「次……って?」
「次の七不思議よ」
拓海は思い出す。
「図書室のある本を借りると、'翌日、そのページが違うものに書き換わっている'」
七不思議のひとつ、図書室の怪異だ。
「……図書室か」
「なあ、さっきみたいなのがまた出てきたりしないよな?」
悠真が警戒心を露わにする。
「わからない。でも、行くしかない」
彩華が足を踏み出し、拓海と悠真も後を追う。
夜の学校は静まり返っている。いや、まるで音そのものが消えてしまったかのような静寂だ。
「……黒い窓、さっきより濃くなってないか?」
悠真の視線の先——廊下の窓は、外が見えないほどに黒ずんでいた。
「気のせいじゃない。でも、今は気にしても仕方ないでしょ」
彩華が淡々と歩を進める。
「そんな適当な……」
「やれることをやるだけ。ほら、ついたわよ」
目の前に、図書室の扉が立ち塞がる。
「鍵……かかってないのか」
拓海がそっと扉に手をかけると、重々しくもあっさりと開いた。
静寂の中に、無数の本棚がそびえ立つ。
「……さて、どうする?」
「'ある本を借りると、翌日ページが変わっている'だったわよね。じゃあ、まずその本を見つけなきゃ」
彩華が棚を眺めながら言う。
「でも、'ある本'ってどれだよ……?」
「それを探すのよ」
「地道だな……」
拓海たちは手分けして本棚を見て回る。
奥の棚に足を踏み入れると、空気が一層冷たく感じられた。図書室独特の紙の匂いが漂っている。普段なら落ち着くはずのその香りが、今はどこか重苦しく感じられた。
「……変だな」
拓海はふと呟いた。
「何が?」
「普通、図書室って夜はもっと埃っぽいと思うんだけど……妙に綺麗すぎないか?」
「……確かに」
彩華も違和感を覚えたように周囲を見渡す。
誰もいないはずの空間。だが、本棚には綺麗に本が整えられている。まるで、誰かがついさっきまでここにいて、整理していたかのような気配がある。
「……おい、見ろよ」
悠真が、ある本を取り出していた。
『七不思議伝承録』
背表紙にそう記された一冊。
「これって……」
拓海が表紙をめくる。
「'七不思議の全貌'?」
見開きに、そう書かれていた。
「……これは」
彩華の目が鋭くなる。
——この本が、次の七不思議の鍵になるのか?
拓海は、そっとページをめくった——。
——その瞬間。
背後から、何かが"音もなく"立ち上がる気配がした。
「——!」
拓海は、ゾクリと背筋を凍らせた。
誰かいる。
いや、何かが"こちらを見ている"——。
反射的に振り向く。しかし、そこには何もない。
「……なんだよ、ビビらせんな」
拓海は軽く息をつく。
だが、その瞬間——
——パラリ……
持っていた『七不思議伝承録』のページが、勝手にめくれた。
「……!?」
悠真が後ずさる。
目の前の本が、まるで意思を持っているかのようにページをめくっていく。
「……何これ?」
拓海は表紙を押さえ、ページが進むのを止めようとする。しかし——
——バサッ
強風が吹いたかのように、本が勝手に閉じられた。
「……っ!」
再びページをめくる。
すると——
「……え?」
さっきまで"七不思議の全貌"と書かれていたページが、まったく別のものに変わっていた。
「……昨日と違うページが書き換わってる、ってやつか?」
「そうみたいね……」
彩華が慎重に本を覗き込む。
そこには——
『最初にこれを読んだ者は、振り向いてはならない』
そんな一文が刻まれていた。
「……振り向くな?」
拓海の背筋に冷たい汗が流れる。
先ほどの"何か"を感じた時、拓海は確かに振り向いた。
「……ちょっと、これヤバいんじゃない?」
「……とにかく、落ち着こう」
拓海は、慎重に本を閉じた。
「もう一度確認しよう。俺たちは、"何をすべき"なんだ?」
「"本を借りると、翌日ページが違うものに変わる"」
彩華が低く呟く。
「でも、もう変わってる……ってことは」
「……俺たち、すでに"借りた"ことになってるんじゃないか?」
「……!」
沈黙が広がる。
それはつまり——この怪異は、すでに始まっている。
「……本当に終わったのか?」
悠真が不安げに呟く。音は消えた。影のような存在も、もう見えない。だが、妙な感覚だけが残っていた。
「終わったかどうかはともかく、少なくとも、次に進めるわね」
彩華は腕を組みながら、廊下の先を見やる。
「次……って?」
「次の七不思議よ」
拓海は思い出す。
「図書室のある本を借りると、'翌日、そのページが違うものに書き換わっている'」
七不思議のひとつ、図書室の怪異だ。
「……図書室か」
「なあ、さっきみたいなのがまた出てきたりしないよな?」
悠真が警戒心を露わにする。
「わからない。でも、行くしかない」
彩華が足を踏み出し、拓海と悠真も後を追う。
夜の学校は静まり返っている。いや、まるで音そのものが消えてしまったかのような静寂だ。
「……黒い窓、さっきより濃くなってないか?」
悠真の視線の先——廊下の窓は、外が見えないほどに黒ずんでいた。
「気のせいじゃない。でも、今は気にしても仕方ないでしょ」
彩華が淡々と歩を進める。
「そんな適当な……」
「やれることをやるだけ。ほら、ついたわよ」
目の前に、図書室の扉が立ち塞がる。
「鍵……かかってないのか」
拓海がそっと扉に手をかけると、重々しくもあっさりと開いた。
静寂の中に、無数の本棚がそびえ立つ。
「……さて、どうする?」
「'ある本を借りると、翌日ページが変わっている'だったわよね。じゃあ、まずその本を見つけなきゃ」
彩華が棚を眺めながら言う。
「でも、'ある本'ってどれだよ……?」
「それを探すのよ」
「地道だな……」
拓海たちは手分けして本棚を見て回る。
奥の棚に足を踏み入れると、空気が一層冷たく感じられた。図書室独特の紙の匂いが漂っている。普段なら落ち着くはずのその香りが、今はどこか重苦しく感じられた。
「……変だな」
拓海はふと呟いた。
「何が?」
「普通、図書室って夜はもっと埃っぽいと思うんだけど……妙に綺麗すぎないか?」
「……確かに」
彩華も違和感を覚えたように周囲を見渡す。
誰もいないはずの空間。だが、本棚には綺麗に本が整えられている。まるで、誰かがついさっきまでここにいて、整理していたかのような気配がある。
「……おい、見ろよ」
悠真が、ある本を取り出していた。
『七不思議伝承録』
背表紙にそう記された一冊。
「これって……」
拓海が表紙をめくる。
「'七不思議の全貌'?」
見開きに、そう書かれていた。
「……これは」
彩華の目が鋭くなる。
——この本が、次の七不思議の鍵になるのか?
拓海は、そっとページをめくった——。
——その瞬間。
背後から、何かが"音もなく"立ち上がる気配がした。
「——!」
拓海は、ゾクリと背筋を凍らせた。
誰かいる。
いや、何かが"こちらを見ている"——。
反射的に振り向く。しかし、そこには何もない。
「……なんだよ、ビビらせんな」
拓海は軽く息をつく。
だが、その瞬間——
——パラリ……
持っていた『七不思議伝承録』のページが、勝手にめくれた。
「……!?」
悠真が後ずさる。
目の前の本が、まるで意思を持っているかのようにページをめくっていく。
「……何これ?」
拓海は表紙を押さえ、ページが進むのを止めようとする。しかし——
——バサッ
強風が吹いたかのように、本が勝手に閉じられた。
「……っ!」
再びページをめくる。
すると——
「……え?」
さっきまで"七不思議の全貌"と書かれていたページが、まったく別のものに変わっていた。
「……昨日と違うページが書き換わってる、ってやつか?」
「そうみたいね……」
彩華が慎重に本を覗き込む。
そこには——
『最初にこれを読んだ者は、振り向いてはならない』
そんな一文が刻まれていた。
「……振り向くな?」
拓海の背筋に冷たい汗が流れる。
先ほどの"何か"を感じた時、拓海は確かに振り向いた。
「……ちょっと、これヤバいんじゃない?」
「……とにかく、落ち着こう」
拓海は、慎重に本を閉じた。
「もう一度確認しよう。俺たちは、"何をすべき"なんだ?」
「"本を借りると、翌日ページが違うものに変わる"」
彩華が低く呟く。
「でも、もう変わってる……ってことは」
「……俺たち、すでに"借りた"ことになってるんじゃないか?」
「……!」
沈黙が広がる。
それはつまり——この怪異は、すでに始まっている。
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